渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
今日は米国発ではじまったウッドショックの影響により、日本でも住宅価格が上昇しているのか、また、今後国内における林業の復活はあるのか?等について農林水産統計等を見ながら検証してみたいと思います。
木材需要は米国と中国で旺盛
今日(2021年6月17日)の日経新聞の朝刊によると日本の木材の、米中への輸出が急増しているとの掲載がありました。
米国では、コロナ禍により、テレワークが普及したことや相次ぐロックダウンで飲食店やミューカル等を楽しむことが出来ないNew York等の大都市で高い家賃を支払い続けることが意味が無いとして、緑豊かな郊外の戸建てを望む人が増えたと言われています。
結果、郊外での戸建需要が高まり、経済回復傾向にある現在も、引き続き戸建需要が堅調のため、木材の需要が旺盛で、品不足や廉価製品を海外から補おうとして、価格の高騰と品薄が続いています。
また、中国では、経済回復に伴い、部品や製品の梱包材用の資材需要が高く木材需要が高いとのことです。
もともとこれら梱包用の低品質の丸太は、オーストラリアやロシアからの輸入に頼っていましたが、オーストラリアとの関係悪化やロシアの国内産業育成のための加工度の低い丸太の輸出の抑制などにより、品薄状態となり、他の国から代替調達しており、日本からの輸出も増えています。
もともとコロナによるロックダウンで工場等が稼働しなくなり、物流も止まり、雇用調整等が行われたため、木材加工製品等も品薄状態となっている状態での急速な経済回復等により需要と供給のミスマッチが生じています。
2021年4月にはシカゴ木材先物価格が記録的な上昇となりウッドショックという名称が使われ始めました。
日本は元来、価格が安く物量が多い、海外の木材の輸入に頼っていましたが、外国産木材の高騰と輸入量の減少により、木材価格が確かに上昇しています。
木材価格は3月頃から急上昇
農林水産統計の木材流通統計調書の木材価格を見ると、木材の㎡当たりの単価が2021年3月過ぎから急上昇していることがわかります。
今回は素材価格の中から主要な「すぎ正角」と「米つが」でグラフを作成してみました。
米つがは、調査製品の規格の変更があったので、変更があった2020年1月からのデータを掲載しています。
すぎ正角は厚さ10.5cm、幅10.5cm、長さは3mのもので、米つがも厚さと幅は共に10.5cmで長さは4mの製品が調査対象となっています。
1年前に比べ、仕入れ価格が倍近くなってのではないか?という話を、建設関係の社長から聞きましたが、消費税の10%への移行や運搬費の上昇等も含めると確かに、それくらいの上昇はあるかもしれません。
建設関係の企業は、経費を乗せる際には原価に対して間接経費を7%~10%程のせますが、原価が上昇すれば同じ経費率をかければその分価格はあがります。
建設工事には多くの取引企業が関与し、重層取引となるため、上昇した資材関連の原価に各企業が間接経費率をそれぞれ掛ければ、原価上昇分に比例して最終的な工事請負金額もその分更に上昇します。
国内林業は復活するのか??
今回のウッドショックにより、国内の林業回帰はあるのでしょうか?
ブログにも以前掲載しましたが、現在、弊社で茨城県大子町の約62万㎡の山林の売却案件を預かっており、1年ほど前に大手建設会社を通じて主要な製紙会社に打診をしましたが、国内の木材は人件費が高く、割が合わないので難しい旨の回答を頂いていましたが、ここ1ヶ月程度の間に林業関係者からの問い合わせが増えてきています。
理由は木材価格の上昇により、場合によっては採算が採れるかもしれないとの事でした。
広葉樹林は枝が邪魔をして、伐採や運搬に手間がかかりますが、杉の場合は、その手間が無いので、どれくらい木材の原料として今すぐ使える杉が生えているかがポイントになるとの事でした。
車が入れる道路が無いので、厳しい旨を伝えていますが、検討の余地はあるとのことで、現在現地確認も含めた調整を行っています。
また、ここ数年はもともとの職人不足やSDGsによる環境への配慮などで建設費は上昇していましたが、お付き合いのあるリノベーション会社や建設会社に話を聞いても、この数カ月の木材製品の価格上昇は異常といっています。
山高ければ谷深しで、昨年、中国で新型コロナウイルスが猛威を振るった際には、中国で生産しているトイレ等が入らず現場はパニックになっていました。今はトイレ等は安定供給されているので、この現象は、やはり一時的なもので収まるのでしょうか?
日本国内の人口減少に加え、国内の空家数を見れば、国内需要は先細りが確実ですが、海外の木材が高騰を続ければ、デフレが続く日本で木材を加工し、海外へ販売するという構想は、ありかも知れません。
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