渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
今日は第三者が全く関係の無い私道を自由に通行する権利を有するのか?についてお話したいと思います。
私道とは?
所有という観点から道路を大きく分けると公道と私道という2つの道路が存在します。
公道とは国道や県道、市道(いちどう)、村道といった国や地方自治体が所有し維持管理を行っている道路で、私道とは私人が所有者となっている道路です。
私道は、個人又は法人等が所有する道路なので、公道と違い、誰でも通行できる訳ではなく、原則としてその私道の所有者に許可をもらわないと通行はできません。
私道の通行権
私道を通行する権利が認められているのは主に下記の3つのパターンです。
◇囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)
周りを他人敷地や海などで囲われており、直接公道まで通じていない土地(袋地)の所有者が、その袋地を囲んでいる囲繞地を、その囲繞地の所有者の承諾を受けずに公道まで通行できる権利です。
この権利は袋地所有者にとって法律上当然発生する権利なのですが、その通行する方法等は必要最小限であることが必要で、むやみやたらに他人敷地を利用していい訳ではありません。
◇通行地役権
地役権とは、他人の土地(承役地)を自分の土地(要役地)の利便性を高めるために利用することができる権利で、通行の目的のために設定されるのが通行地役権です。
自分の土地が接道する公道を使うよりも、他人の土地を利用した方が駅までの通勤に非常に便利なので他人の土地を利用したいといった場合に用いられる場合が多い権利です。
賃借権だとかなり内容が重くなってしまいますが、通行地役権は要役地の所有者の通行に限定されるため比較的自由度が高いと言えます。
但し、通行地役権は第三者に対抗するには登記が必要となります。また紛争になる場合も散見され、その場合は時効により通行地役権が取得されるケースが多い権利といえます。
私が実際に相談にのったケースでは崖地にあるマンションで1階部分から駅に向かうより、エレベーターでマンションの上層部に出て、そこから他人敷地を利用した方が急坂を登る必要もなく、駅までの時間がかなり短縮されるという内容でした。
◇賃貸借契約等による通行権
この内容は賃貸借契約に基づく通行権で債権契約なので、あまり問題になりません。問題になるとしたら賃料の設定金額の妥当性といったところでしょうか?
位置指定道路の取扱い
第三者の自由な通行に関して問題になる可能性が高いのが、位置指定道路(私道で幅員が4m以上あり、かつ、道路として一定の技術的水準に適合するもので、特定行政庁からその位置の指定を受けた道路)です。
建物は建築基準法上で交通の確保や火災や震災時の消火や救助活動等を円滑に行うために最低限必要な道路幅や接道長さを定めており、道路に建築物を越境させてはならない等の制限が課せられています。
また、登記簿上の地目が「公衆用道路」となっている場合も多く、公衆用道路は固定資産税と都市計画税が非課税扱いとなっています。
これらを総合的にみると、私有地といえども、税金も払っていないし、名称にも「公衆用」と記載されているので、当然誰でも自由に通行できると考えがちです。
しかし、判例では、「建築基準法上の要件を満たす道路になった私道は建築基準法上、道路の基準を満たさなければならない道路所有者に対する公法上の義務の反射的利益(間接的な利益)であり、第三者が通行の自由権という権利を有している訳ではない。」としています。
つまり、位置指定道路等、公道の要件を満たした私道は、公道の要件を満たしているからといって、誰でも通行の自由が認められている訳ではないとしています。
但し、その私道が周囲の人を含め多くの人が生活道路として使用して、長年経過している場合には、通行の自由が認められる場合もあります。
古くから街道と言われるような旧道と新しい道が一定間隔を置いて並行している場合、旧道に商店街が多く残っており、新しい道とのつなぎとして私道が双方の道路を結んでいる場合があります。
これら私道の持ち主は地元の名士の方も多く、細かいことも言わない方が多いですが、稀に代替わりした途端に、通行禁止の立て看板をたてられてしまうといったケースに私も遭遇したことがあります。
私道は私人の持ち物ですので、当然の主張であり、ゴミを捨てられて、掃除が大変等の理由もその通りだとは感じるのですが、ご先祖様はどのようなお気持ちで見ておられるのか?と思うと、なんとも複雑な気持ちになってしまいます。
私道の所有者の方の寛大なお心と同時に私道を利用する人々のマナーが問われる問題だと感じます。
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