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解体工事費用の高騰が空家を増やす!

渋谷区を中心に中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は、解体工事費用の高騰により空き家が増え続ける日本の実態についてご説明します。

解体工事費用が高騰しています! 

何度か既にブログに記載させて頂いていますが、解体工事費用が高止まりの状態が続いています。

 

2022年4月以降は一定規模以上の建築物や特定の工作物の解体や改修工事は、アスベスト含有の有無に関して事前調査を行う必要があります。

 

しかし、既に今の段階でアスベストの含有が疑われるピータイルやロックウール、特殊な石膏ボード等について受け入れ先の産廃処理業者から、アスベストが含有されていないことを証明しないと搬入は受け入れられないと言われているようで、産廃処理はゼネコンにとってもやっかいな問題になっていると先輩から聞いています。

 

ただでさえ、環境意識の高まりと資材の高騰、産廃に対する規制強化(分別収集の徹底化)、人件費の上昇が重なり、解体費用は数年前と比較してもかなりの上昇になっている状態で、更にアスベストの事前調査費用が加わることになります。

 

また最終処分場も受け入れが、後数年で満杯になると言われおり、これも解体費用の価格上昇の一因になっています。

 

物事を始めるより、撤退する時の方が何倍もの労力を使うといわれていますが、今は、建物を建てる際には、いずれは寿命がくる建物の解体というリスクまで考える必要があるのかも知れません。

土地の売却価格を上回る解体工事費用 

都心部や各地方都市で利便性の高い立地を相続した場合には、その土地代はかなり高額となるために、解体費用が土地代を上回ることはレベル1のアスベストがふんだんに使用されている場合や長い杭等を抜く必要がある、土壌汚染がある等を除き、ほぼ無いと考えますが、問題は過疎化が進む地方の物件です。

 

地方は、広い敷地に大きな家が建っているケースが比較的多いですが、この建物を壊すのに多額の費用がかかる可能性があります。

 

実は、地方でも都心でも基本的な項目では解体費用や建設費用に大きな差は出ません。

 

建築費用はSDGsの意識の高まりや資材価格や人件費の上昇により、おそらく下がる事は考えにくく、高止まりの状況が続くものと考えられます。

 

更にアスベスト規制が厳しくなっており、80㎡以上の建物の場合は実質、アスベスト含有検査を行わないといけない状況になりつつあります。

 

となると需要の限られる地方の土地は二束三文でしか売却できないものと想定されます。

 

実際、千葉県木更津市と長野県上伊那郡で土地の仲介をここ2ヶ月の間で3件程行わせて頂きましたが、土地自体の値段は坪3万円~5万円程度の取引となっています。

 

60坪の土地であれば坪5万円だと土地代は300万円です。容積率が150%の場所で80坪の建物が建っていた場合、解体費用が坪5万円とすると解体費用は400万円となり、仮にレベル1のアスベスト除去費用があれば追加で200~300万円の解体費用がかかることになります。

 

仲介手数料等の諸経費を考慮しなくても、アスベストが出なくて100万円の赤字、アスベストが出た場合は実に300~400万円の赤字となってしまいます。

 

実際に地元の不動産会社にヒアリングしたところ、解体工事費用が土地代を上回り、計画が破断した案件が多数あると言っていました。

 

このままだと相続した物件に借入が残っている場合、抵当権を外せないため建物の解体も出来ず、建物がどんどん老朽化して危険な状態になり、更に二次相続が発生し、にっちもさっちも行かなくなるケースが、どんどん増えるのではないか?と感じています。

空室法の更なる改正が必要!? 

国土交通省が行った令和元年空家所有者実態調査(令和2年12月16日発表)によると、建物を空家にしておく理由の第一位は回答の60.3%で物置として利用する。第二位が46.9%で解体費用をかけたくないとなっています。

 

私も数年前に母に先立たれた父親も亡くなり、相続が発生し、今は姉の所有になっている実家がありますが、結婚する前までの自分の荷物を運び出すのが大変で、全部運びだすのに、2年近くかかってしまいました。

 

これは確かに最も大きな理由ですが、解体したくても解体出来ないという人が多いのが実態と思います。この「解体費用をかけたくない」の多くは、実は「解体費用を出せない」というのも根底にあると思います。

 

平成26年11月27日に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空室法)」により、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしている場合には、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令が可能で、場合により行政代執行の方法により強制執行が可能とされていますが、その解体費用は所有者が最終的に負担しなければなりません。

 

まだ再利用の可能性のある建物や、再開発で価値が飛躍的に向上する立地にある建物などは、良いですが、そうでない空家は結局、野ざらしになる可能性が高いと言えます。

 

税制上の優遇策としてある「空き家の譲渡所得の3,000万円控除の特例措置」も解体工事費が土地代を上回る場合には、何の役にも立ちません。

 

国土交通省は空家等の発生の抑制や利活用、除却等の取組を強力に推進するとして令和3年6月30日に「空室法基本指針及び特定空家等ガイドラインを改訂」を発表しましたが、その内容は実行力にかけていると感じます。

 

コロナ禍で地方移住が進んでいるとはいえ、まだごく少数に留まります。一度都心部周辺に生活拠点を移した多くの方は実家には戻らず、実家は不要となるケースが大半です。利用しない実家のメンテナンスまで出来る時間や金銭的な余裕を持っている人はそんなに多くはありません。

 

相続等により、空き家を放置した結果、特定空家になってしまった建物を所有している人々に対し、土地も含め行政が収用する代わりに、解体費用を所有者に請求しない等の大胆な対策を国が講じないと、ますます空き家は増加し続けると思われます。