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日本の地方都市ランキング

渋谷区で中古マンションの売買仲介を主として行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は、前回に続いて森記念財団都市戦略研究所が公表した日本の都市特性評価2021の概要版のデータから都市として評価の高い東京23区を除く都市のランキングを見てみたいと思います。対象都市は138都市になります。 

 

ながらく京都市が1位でしたが2021年は大阪市が1位の座を奪還しています。上位3位は大阪市、京都市、福岡市となっていますが、横浜市、名古屋市、神戸市の3市も1000を超える高いスコアとなっています。4位と5位を横浜市と名古屋市が争っている状態です。

 

昔から都市が形成されている神戸市、仙台市、金沢市、札幌市等がランキングに入るのは、ある意味自然な流れですが、大手企業の城下町である都市がいくつかランキングしています。

 

大企業のもたらす経済活動や雇用、税金以外に地方自治体等に様々な形での寄付や協力をしていることがいかに都市の利便性や快適性と密接に関係しているのかがわかります。

 

大企業の工場がリストラで無くなると、雇用喪失だけでなく、賃貸住宅の需要も消滅し、人口減少も誘発するため、その街にとっては大問題となります。

 

大手企業の城下町としては豊田市(トヨタ)、浜松市(ホンダ、スズキ、ヤマハ)、広島市(マツダ(安芸郡府中町))がランキングに入っています。

 

また、つくば市は研究都市として大手企業の研究拠点が数多くあり、多くの優秀な人材とその家族がつくば市に集まっているため、街としての評価が高くなっています。

 

このエリアは様々な企業の集合体により街が活性化している非常に良い例です。研究者は一般的なサラリーマンよいもかなり高い給与水準のため、つくば市には立派な戸建ても数多く建っていますし、学校のレベルもかなり高いようです。

 

似たような例としては宇都宮市があります。栃木県の県庁所在であり、多くの製造企業の工場や研究施設があり、給与水準も高くなっています。

 

昨年、弊社のお客様の所有する約1800㎡の土地を大手デベロッパーに購入してもらいましたが、かなり良い条件で取引出来き、更に建売の販売状況も良かったと担当者から聞いています。

 

1区画は50坪程度で駐車場は3台駐車可能、東京都区部外の物件より土地や建物は広いですが、総額としての売値はむしろ高いくらいでした。マーケットデータの重要性がいかに大切かを改めて考えさせられました。

 

ちなみに宇都宮市はランキングでは77位と意外と低い評価でしたが、逆を言えば宇都宮市を上回る地方都市が数多く存在するということがわかり、新たな可能性として魅力を感じました。 

日本の都市別ランキング2021上位16位
日本の都市別ランキング2021上位16位

つくば市の潜在需要 

話は少しそれてしまいますが、日本の都市評価特性評価の上位に位置するつくば市のある例を紹介します。

 

先週、1987年につくば市に吸収された旧谷田部町に懇意にしている不動産会社の社長が所有するアパートに行ったのですが、通常期に募集を開始したにも拘わらず、2ヶ月程で満室になっています。

 

仕事が忙しすぎて自分の物件をほったらかしにしておいたために、数年前に所有していたのですが、つい最近、改修工事が終了し、賃貸募集を周辺相場より1万円以上高い値段に設定したのですが、先述したように、あっと言う間に募集した全6室が満室になりました。

 

当初、周囲の不動産業者を回って相場観を聞いたところ、周辺の家賃相場(約40㎡の2DK)は3万円半ば程度で、それ以上の家賃設定は厳しいとの事でしたが、既存の中古アパートを大規模修繕して、外壁を白を基調としたサイディングに変更し、ネット環境も整備した結果、周辺相場よりも1万円以上高い約5万円の家賃で貸せています。

 

私は、この物件を購入した際の経緯や苦労を知っているだけに、この物件を初めて見たとき、このさびれた立地で果たして需要があるのか?と半信半疑でしたが、需要はあるのに、その需要に見合ったグレードの物件を今まで誰も提供していなかっただけで、新たな需要を掘り起こしたのです。

 

周辺には、修繕工事を行っていないアパートと旧谷田部町庁舎がある場所で、一見すると、すたれた感じがするのですが、周囲には新しい戸建て開発エリアや繁盛している蕎麦屋さん等もあり、今後すたれるのか、開発が進んでいくのかの判断が非常に難しい場所でした。

 

都心立地とか駅に近いとかは誰でもわかることで、このように誰でもが欲しがるような物件は、当然リスクが低いので不動産の価格は高く、多くの収益をあげることは厳しいのですが、この物件のように、それなりの家賃を払う需要があるのに、その需要を見過ごしているエリアが実際にあり、それを実際に証明してみせたことが、凄いとあらためて感じてしまいました。

長い争いは長野市ではなく松本市に軍配!東海地方にも注目! 

日本の都市特性評価2021で私が注目したのは、長野県と静岡県です。

 

長野市と松本市にお住まいになる方の間で、どちらが優れた都市であるかという論争が日々繰り広げられているとお聞きしたことがありますが、このランキングを見る限りでは、松本市に軍配があがっています。

 

松本市は環境分野が2位、生活・居住性が3位とかなりの高得点であったため、長野市を引き離しています。研究開発は長野市が61位で松本市が74位とこの分野だけ長野市が松本市を上回っています。

 

また、注目すべきは東海エリアです。今回のランキングで名古屋市5位、浜松市12位、静岡市14位、豊田市15位と東海エリアの都市が4つも16位以内にランキングしていることからも、これらの地域のポテンシャルが高いことがわかります。

 

この結果を象徴するように、2021年6月21日に静岡を核とする産業地域(静岡県、愛知県及び三重県)に投資する東海リートが上場しました。この東海地域メインのJ-REITの上場は本地域のポテンシャルの高さを示した良い例だと思います。

 

東海リートのスポンサー企業は、地方銀行では元気の良い静岡銀行やヨシコン(不動産開発)、木内建設、中部電力、鈴与(物流)等です。

 

いずれの企業も資本金等はそれほど大きくはないですが、安定した営業力とネットワークを築いています。

 

最後になりますが、今回、「自転車の利用のしやすさ」というアンケートに基づく指標が追加されましたが、1位の大阪市も2位京都市もこの指標が高く、自転車の利用のしやすい都市は総合評価でもランキングが高くなっているようです。