渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
今日は建物の鉄部の塗装の塗り替え時期についてお話したいと思います。
建物の修繕工事の考え方として主に、予防保全、予知保全、事後保全の3種類が考えられます。
どれもそれなりに、メリットとデメリットがありますが、鉄部の塗装については、予防保全もしくは予知保全で対応した方が良いと思います。
鉄部の塗装を放置しておくと後で多額の費用がかかる場合があり、もし収益物件の場合には、売主の場合は希望の売却価格よりも、かなりの値引きが要求されてしまい、買主の場合は、かなりの額の修繕費用を予め計上しておく必要があります。
下記の写真は新築から30年鉄部の塗装を1回も行わなかった鉄骨造のワンルームマンションの鉄部です。鉄骨の肉厚が半分以下になっており、手で触ると表面の塗装分と一緒に腐食した鉄がそのままボッロと落ちてしまう状態です。
柱部分ではありませんが、2階の床を支える鉄部のため、ここまでくると全取り換えになるため、多額の修繕費がかかることになります。
鉄部の塗装は何年周期が適切??
仕事柄、分譲マンションの長期修繕計画書を見る機会が多いのですが、管理会社によって長期修繕計画書の鉄部塗装の修繕周期は様々です。8年周期、10年周期が比較的多いですが、中には大手でも6年周期の長期修繕計画書もあります。
私がゼネコンで働いていた頃は5年周期というのが一般的だったように思うのですが、今は修繕周期をもっと長く設定しているようです。
実際に、お客様と中古の分譲マンションの内覧に行った際には共用部の鉄部の錆の発生具合と長期修繕計画書や修繕履歴の鉄部の塗装時期を見比べて錆の状況を判断しますが、10年経過してもまだ、状態の良いマンションもあります。
そうかと思えば最終塗装の履歴から10年経過していなくても、塗装の状態が悪いマンションもあります。
鉄部の錆具合は場所によっても異なります。先ほどの写真のように雨水が溜まりやすい場所では鉄部の腐食の度合いが激しく、同じマンションでも日光や雨風があまり当たらない場所では鉄部の腐食があまり侵攻していないという状況は良くあることです。
後は、錆止めを塗った後に、更に錆に強い耐性塗料を使用した場合や、錆が発生した部分の錆を綺麗に落とす下地処理が適切に行われていたか?によっても大きく、差が付きます。
鉄部の塗装周期はしっかりとした下地処理と高性能の塗料を使用した場合には10年でも問題無いと思います。
また先述したよういに部位によって鉄部の腐食速度が異なるため、劣悪な環境の部位で無い場合には、使う塗料の品質を最高級のものにする必要は無いと思います。
施工業者にとっては部位により、塗料を変えるのは面倒かも知れませんが、部位によって鉄が腐食する速度が違うのであれば、鉄部の塗装を一度に済ますために、このような選択肢をチョイスするのが最もバランスの取れた鉄部塗装の仕方ではないか?と考えます。
賃貸マンションの鉄製の階段は特に錆の発生状況に注意しましょう!
近年、「分譲マンションは管理を買え」という考えが一般化しつつあり、それに伴い長期修繕計画書や修繕履歴の記録が重要視されるようになってきました。
そのため、よほど総戸数の少ないマンションや自主管理のマンションを除けば、あまり修繕について心配する必要は無いと思います。
心配なのは、むしろ賃貸マンションやアパートです。特に注意したいのが階段です。木造アパートでも階段には鉄骨が使われることが多く、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションでも鉄骨製の階段が多く使われています。これら鉄骨階段の適切な塗装を行わないケースが散見されます。
分譲マンションの修繕積立金のように、管理規約により支払義務が生じ、自身に修繕積立金が現金で戻ってこない場合、費用は損金として計上できますが、賃貸マンションの場合の修繕費は全てが損金になる訳ではなく、減価償却計上しなければならないものも多く、建物のオーナーの中には、家賃収入のいくらかを積立金てとして貯めておくことなく、使ってしまう方も少なくありません。
そのため、目に見えて錆が目立つようになっても、見て見ぬふりをしてしまいます。そのような計画性のない、賃貸運営をしていると、入居率も下がり、賃料も下がり、最悪売却という事態になります。
また、相続等により、いざ売却をしようとしても、鉄部の塗装を放置した結果、鉄骨階段の取替えで、クレーン車等を使う大掛かりな工事が必要となり、実に数千万円も値引かれたケースも私は実際に売買仲介で携わらせて頂いています。
こういうケースにならないためにも、家賃収入の一部は使わずに定期的に貯蓄するか国債等の比較的安全とされる金融商品で運用し、来るときに備えて置く必要があります。
コメントをお書きください