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土地の売買で気を付けたいこと(その2)

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

2021年12月下旬にようやく長野県某所で取引を行った土地の決済が終了しました。

 

解体工事に絡む費用追加も最終的に想定したよりもかからなかったため、なんとか、わずかながら土地売却代金を数十万円プラスでおさめることができました。 

 

この案件に着手したのが2021年4月でしたので約8ヶ月間かかり、現地へ足を運んだのは通算で十数回を数えました。

 

物件を購入してもらえるデベや路面店探しから、解体業者の選定、電気会社や水道会社との打ち合わせや敷地の境界確定のための作業等、盛りだくさんで、一つの取引で、これ程多くの問題が出たのはさすがに初めてでした。

 

この取引のおさらいをして、土地の売買で気を付けたい事を再度列挙していきたいと思います。

決済までに浮上した諸問題

では実際に契約から決済までの流れと浮上した諸問題を列挙します。

・建物は解体してもらわないと購入出来ない。→RC3階建ての病院を解体し、更地で引き渡す内容で売買契約。

 

・売却する土地と残す土地との境界があやふや。

 →登記上の面積で契約。登記簿上の面積が減少することを想定し、売主の受け取る金額が極力減らないように特約を追

  記。解体後に確定境界図を売主負担で作成。売主が本宅の駐車場に車を入れるのに十分な幅員を希望していることを買

  主に伝える。

 

・解体工事の見積もり時点でアスベスト調査。

 →売主負担で調査。アスベストレベル1から2まであることが判明。懸念事項としては竣工図面が一部しか残っておら

  ず、基礎伏せ図や特記仕様書が無く、オイルタンクの正確な位置も不明のため解体工事費があがる可能性大。

 

・アスベストが判明し当初想定した解体工事費用の2倍から3倍の見積もり金額。

 →一番高い業者は3,000万円を超える見積もり。一番安い業者に選定するも当初想定の2倍の工事費。

 

・医療器具の処理の問題。→医療器具の処理には更に多くの費用がかかるため、医療関係者に引き取ってもらう。

 

・解体工事中に諸問題発生(地中から、医療器具やその他産業廃棄物が出てくる)。→追加工事費用が発生。

 

・地上部分の解体が終わった時点で売主の希望する境界と公図上にかなりのズレがあることが発覚。

 →想定していたが、契約の基本となった公図とかなり位置が違うため、公簿売買ではなく、実測売買に変更。

 

・同時に本宅の石垣の隅切工事を依頼。

 →売主の希望だと面積が200㎡以上減少するため、契約破綻の可能性も出てきたため、妥協点として売主が車を駐車場に 

  入れやすいようにするために本宅の石垣隅切工事を行ったため予算外費用が発生。

 →石屋の提案で、簡易工事でも安全上問題無いとの話になり、鉄筋入りのコンクリートの壁の作成から石の積み替えに工 

  事内容を変更したが、変更後の見積もりが出てこず言い値で請求される。

  

・度重なる地中埋設物の発見により工期が遅延。→覚書で決済日を11月末とする。

 

・地中埋設物や基礎が予想以上に大きく、整地する土が不足し、追加請求を求められる。

 →建物の規模から予想範囲内として、解体業者に理解を求め、追加費用は産業廃棄物処理代だけで回避。

 

・解体業者が誤って、地中電設菅と汚水管を重機で破損。

 →本宅の電気とトイレの使用不可という事態に。更に本宅の家電製品が全損(解体工事会社の保険で対応)。

 

・ 上記により売地に汚水管が通っていることがわかる。

 →電設菅が入っていることは事前に了解を得ていたが、汚水管が売地を通っていることは、わかっておらず、復旧工事で

  売地をなるべく通らないように、最低限度だけ通過することで買主と合意。これにより、解体業者の保険適用外工事が

  発生。予算外費用が更に追加。

 →電気を全面道路から引こうとしたが移設費用だけで300万円かかると言われ断念。

 

・解体工事会社、電気会社、水道会社との連携が悪く、幾度も調整。また、本宅の建物が古いため、敷地内処理をする必要

 がある雨水が売地を横断して水路につながっていることがあらたに判明。

 →現在の行政の規定で雨水は敷地内処理が決まっており、既存の雨水菅をふさぎ、新たに雨水桝を設置を求められたた 

  め、ここでも予算外費用が発生。

 →工事費を抑えるために、道路の舗装工事を取りやめ、基本、売地の開発時にあわせて行うことに変更。

 

・復旧工事のため、再度決済日を12月末日までに変更とする覚書を作成。→同時に境界確定図と汚水管図面を添付。

 

そのほかにも前面道路側(村道)に電気や排水管が通っていないため、既存のルート(他人敷地)を利用し続けるしかない点や、村道が昔はあぜ道であったため売主が善意で土地を道路として利用できるようにしていたものが、確定境界作成時に役場が村道としてそのまま利用できるように私有地を無償譲渡しないと駄目と言い出したり、あまりに電気移設費用が高いため、他に見積もりを依頼するも談合されてしまい不発、私有地の汚水管なのに、同じく役場が新たに布設する汚水管図の提出を求めてくるなど、他にも様々な対応が求められました。

 

救われたのは、次々と想定外の費用が発生したので買主も、最後の土壇場で境界にフェンスをつくる場合には、売地側にフェンスを設置し、費用も負担してくれる内容を認めてくれたことでした。

 

また、電設工事と水道工事別々で行うと追加で200万円くらいかかるところを水道会社で汚水管の埋設する管路を広く掘ってもらい、そこに電設菅も一緒に引くことにより、工事費用をかなり抑えることができました。

南アルプスと中央アルプスに挟まれた緑と水にあふれた地域

売主とは雑談を含めた打合せが必要不可欠 

今回の土地の売却で痛感したのが、そこに住まわれた経緯や、近隣の方とのお付き合いについても雑談を交えながら、話すことの重要性です。

 

売主様はお会いした時から不動産は主人にまかせっきりだったので全く何もわかりません。というお話で、「いろいろ聞かれても全くわかりません」と言われていたのですが、実際に先述したような諸問題が発生すると、いろいろ話が出てきました。

 

例えばですが、今回の売主様は嫁いできて既に50年近く経過していらっしゃいましたが、土地を購入した経緯や境界の決め方、そこに携わった不動産会社や土地家屋調査士、司法書士などの取引方法や背景、病院を建設した際の経緯や、村道があぜ道であったこと、地中から出てきた産業廃棄物に心当たりがあったりと、今回の不動産の売買自体には関係ありませんが、付帯で行った解体工事等の金額や処理方法を左右するような重要な情報がいくつも出てきました。

 

改めて、不動産は売却する方の人生そのものだと感じました。特に昔から代々ご所有されている土地などは、土地の売却だけの話をしていたら、素人なのでわからないと言われて終わってしまいますが、違う切り口で質問等をすると、重説で説明しなければならないような重要な話が出てくる場合があります。

 

「急がば回れ」では無いですが、お客様との、ある意味プライベートまで踏まえたお話まで聞けるような信頼関係の構築の必要性を再認識した取引でした。

 

そして、通常ご所有の土地やマンションの売却など全く考えていないと思いますが、ご所有不動産の履歴(土地購入の経緯や境界の決め方や建物であえれば給湯器の取り換えや外壁塗装工事等)を記録として残しおくことが何より重要です。