渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
令和4年度税制改正の大綱で、「昭和57年1月1日以降の日付で登記されている物件は新耐震基準に適合しているものとみなす。」との記載があり、住宅ローン控除の対象が広がった旨のお話をさせて頂いていますが、新耐震基準の住宅でも1981年6月から2000年5月までに建築確認申請を取得した木造住宅は、現行の耐震基準を満たしていないため、厳密に言うと既存不適格建物となります。
なぜなら、建築基準法は1981年6月と2000年6月に大きな改正があり、2000年6月の改正は木造住宅に関する内容が主だったからです。
そのため木造住宅は
1981年5月以前の建物を「旧耐震」
1981年6月~2000年5月までの建物を「81-00(ハチイチ-ゼロゼロ)新耐震」
2000年6月以降の建物を「現行耐震」
と呼んでいます。81-00は1981年の81と2000年の00をとって名付けられたものです。
住宅ローン控除の対象となる新耐震基準の木造住宅と現行耐震基準を満たしている物件とは、一旦別物で考えた方が無難です。
新耐震でも木造住宅は倒壊の恐れ??
2016年4月に発生した「平成28年(2016年)熊本地震」により甚大な被害が生じた益城町(まきしまち)での被害状況の調査を行った日本建築学会の調査を国土交通省が分析した結果、木造建築物の倒壊率は28.2%(214棟)、81-00の木造建築物の倒壊率は8.7%(76棟)、現行耐震の木造建築物の倒壊率が2.2%(7棟)という調査結果となり、旧耐震物件がやはり最も倒壊率が高かったのですが、81-00物件の被害も大きかったことがわかりました。
現行耐震でも倒壊した建物があるのはある意味驚きですが、私の全く主観的な考えですが、恐らく、運悪く地割れや敷地に段差が生じた箇所等の真上の建物であったのでは?と考えます。
いくら現行耐震であろうが、新耐震基準のRCの建物であろうが、地面そのもに地割れや段差が生じたら、その上に建つ他建物は、ひとたまりもないのではないでしょうか?
更に、木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)による 平成30年1月17日のプレスリリースによると「81-00住宅」は調査した13,253戸のうち8340戸(62.93%)が倒壊する可能性が高く、2,961戸(22.34%)が倒壊する可能性があるとしています。
また、一般社団法人日本耐震協会(JSDA)でもでは木造の耐震方法や値段についての記載があります。詳しくはこちら
2000年6月の建築基準法の改正内容とは?
大きなポイントとしては下記の3つの点です。
1.地盤調査の義務化と地耐力に応じた基礎構造の設計を行うこと
2.耐震壁の配置バランスを考慮すること
3.筋かい金物の使用や柱頭柱脚接合金物の使用の規定
などが盛り込まれました。
平易に言えば、地盤調査により、豆腐のようなやわらかい地面であれば、地面に対して地盤改良等を行い、固くして、しっかりとした土台をつくり、釘だと揺れて抜けてしまう可能性があるので、柱等の結合部分にはしっかりと結合させる固定金具で補強し、壁も揺れても大丈夫な構造にするということです。
2000年6月の法改正は、1995年の阪神・淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことを背景に耐震基準をより強化したもので、熊本地震によりその耐震性が実証された結果となりました。
住宅ローン控除を受けるのが主目的であれば、81-00住宅を購入するという選択肢もありますが、地震による倒壊は避けたいと思うのであれば、現行耐震物件か81-00住宅を購入して、耐震補強を行ったほうが良いと思います。
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