渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
2022年4月19日に、路線価を基に算定した相続したマンションの評価額が、実勢価格より著しく低すぎるとして、再評価して追徴課税をした国税局の処分が妥当であると最高裁で判決が下され、相続人側の敗訴が確定しました。
今回の争点になったのはタワマンではありませんが、路線価に基づく評価と実勢価格が乖離し、高騰し続けるタワマンの値段は落ち着く又は終息していくのでしょうか?
伝家の宝刀にお墨付き!?
国税庁では相続財産の評価は「時価」で評価すると相続税法で規定する一方で、土地などの不動産の場合は、「その年の路線価」が評価基準になるとして内部通達を公表しています。
但し、財産評価基本通達の総則6項(この通達の定めにより難い場合の評価)では、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価格は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という、例外規定あります。
今回のケースでは、90歳代の父親による2棟のマンションの購入が、相続人が「近い将来の相続で相続税の負担を極端に減らすものだという事を知っていた」という点が、「租税負担の公平に反する見過ごすことが出来ない行為とされ、例外規定の適用を認める。」という判決に至りました。
この判決を、「最高裁が伝家の宝刀にお墨付きを与えた」と捉える方が多かったようです。
一方で、合理的理由がない限り違法として、路線価に基づく評価と実勢価格に大きな差があるだけでは、相続税法に反しているとはいえない。
ともしており、例外規定の明確な適用基準が示された訳ではなく、曖昧さが残ったとも指摘されています。
しかしながら、国税庁は2015年(平成27年)10月29日の記者会見において、「租税負担の公平性から看過しがたい場合は、例外規定の運用を行いたい。」とするコメントを公表しています。
また、2017年度(平成29年度)の税制改正では、高さ60m以上のマンション(居住用超高層建築物)の固定資産税額を1階を100として、階が1層あがるごとに、10/39(約0.2564)を加算した数値(階層別専有床面積補正率)を使用して固定資産税額を決めるようになっています。
この改正は平成29年1月2日以降に新築された居住用超高層建築物の平成30年度分以降の固定資産税に適用された税額計算の見直しで、タワマンの家屋部分の固定資産税評価に対する改正ではないですが、今回の判決や2015年の国税庁の発表を鑑みると、都心部のタワマンではこの「例外規定」という伝家の宝刀が使われる可能性は決して完全に否定できるものではないと思います。
固定資産税が上がれば評価額もあがる
コロナはワクチン接種の普及等により、ようやく終息しつつありますが、今度はロシアによるウクライナへの侵攻やSDGsの高まり等による資材単価や物流コストの上昇で建築費はあがっており、これにより固定資産税評価額は自ずと上昇していきます。
また、政府はコロナ禍による巨額の財政支出、悪い円安と、お金がいくらあっても足りない状況になっています。
そのような中で、2020年に亡くなった約137万人のうち、相続税の課税対象者は約8.8%の約12万人にのぼり、東京国税局局管内では約13.8%となっており、国にとって大きな税収機会となっています。
また、都心部のファミリータイプのタワマンは1億円超えが当たり前になりつつあり、貧富の差が激しくなっています。
これらを総合的に考えた場合、節税対策でタワマンを購入する根強い需要が一定層あるのは事実で、その中でも1億円以上の節税効果がある層から少しでも多く税金を取ろうとする発想が芽生えても決しておかしくはないと思います。
持ち家は過去の歴史を見ても需要と供給のバランスで決まります。
寿命が延び人生100年時代と言われてますが、ここ数年私の周りでも本当に相続が増えています。
お亡くなりになる方が増加し、人口減少が進む中、都心部のマンションでも特にタワマンは価格が上昇し続けています。
しかし、この判決を契機に今後タワマンによる節税対策にメスが入った場合、都心一等地(千代田区、港区(山手)、品川区(山手)、目黒区、渋谷区、文京区、一部の世田谷区)のタワマンを除いてタワマンブームが終焉を迎えるきっかけとなるかも知れません。
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