· 

不動産重要指標 2023年(2022年度)山手線の各駅乗降者数について

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

 

人が集まらないと街は発展しません。その重要な指標のひとつとなるのが、電車の駅の※乗降者数です。人気のある駅と不動産の価格は連動します。人気のある駅程、店舗の家賃は高く、人気のあるエリアの分譲マンションも値段が高くなります。

 

※JR東日本では乗降者数の表示はなく、乗車人員の公表をしているので、私鉄各線とあわせるために「乗車人員×2」を乗降者数として表示させて頂いています。

 

JR山手線の各駅は鶯谷駅や目白駅など1日の乗降者数が少ない駅もありますが、どの駅も基本ポテンシャルが高くなっています。

 

しかし、その分、「人の出入りが多い=行動制限を受ける」という結果となり、特に、ターミナル駅やビジネス街に隣接する付加価値が高い駅がコロナ禍の影響を最も多く受け、今もその影響は続いています。

 

2023年5月8日から5類感染症に新型コロナが移行し、外国人観光客も急増、国内の旅行需要もコロナ禍前まで戻ったとの報道が一部ございましたが、それでは実際に、都心の大動脈である山手線の利用者数が実際にどのように推移しているのか見ていきたいと思います。

 

上記は山手線全駅の乗降者数(乗車人員×2で試算)の年次推移です。

 

コロナの影響を全く受けていないのは2018年度(2018年4月~2019年3月)なので、2019年は僅かに減少、2020年度の落ち込みは対2018年度比で約37.3%の減少率となり、その後は、徐々に回復し、2022年度は対2018年度比で約24.6%の減少率となっており、未だにコロナ禍前と比較して約25%の減少率のままとなっています。

 

本格的な回復が数字となってはっきり表れるのは、2023年度(2023年4月~24年3月)の数字が公表される1年後にならないとわかりませんが、明らかに市場はコロナ過前と比較して変化しています。

 

その大きな要因は2つ考えられます。

 

一つ目ははテレワークの浸透です。Zoom等による会議が当たり前になり、またこれを機に一気に働き方改革が進み、毎日会社に出勤する必要が無くなったことが、乗降者数の減少の大きな要因のひとつになっています。

 

二つ目は、団塊の世代の高齢化です。段階の世代は第二世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1950年(昭和25年)までに生まれた世代を主に指しますが、団塊の世代が75歳を超える年齢に既に突入し始めています。

 

団塊世代の方の年齢は現時点で73歳~76歳となっています。

 

一方、厚生労働省が公表した2019年(令和元年)の健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳となっており、定年後の人生を謳歌していた団塊の世代がコロナ禍の3年で健康寿命を超える年齢に達し、またコロナ禍で外出を控える習慣が定着してしまい、外出の機会を失い、そのまま、出無精になってしまったことも大きな要因のひとつと思われます。

 

下記は2023年6月現在の日本の総人口の人口ピラミッドです。

 

これを見る通り、70歳以上の方が総人口の約32%を占めており、これらの高齢者の方の外出の機会が減っていることが、乗降者数の減少に繋がり、最終的には経済活動にも影響を与えていることになります。

乗降者数の減少率が高い駅はオフィス街隣接駅

下記の表は山手線各駅のコロナ禍前(2018年度)と2023年7月にJR東日本から公表された2022年度の乗降者数(乗車人員×2で試算)との比較表になります。

 

これを見ると、減少率が30%を超えているのは、品川駅、大崎駅、有楽町駅、新橋駅、浜松町駅となっており、いずれの駅も大きなビジネス街が形成されている駅となっています。

 

浜松町駅は駅前の世界貿易センタービルの取り壊しによるオフィススペースの喪失という一時的な要因と羽田空港を利用する旅行者の回復が2022年度全体ではまだ道半ばという事を表していますが、ワールドトレードセンターの竣工と旅行需要の完全復活が伴えば、今後は急速に回復するものと思われます。

 

大手企業やIT企業が多く集まるエリアはいずれも未だ20%を超える減少率となっています。

 

これはあきらかにテレワークの普及による減少で、今後はよりテレワークと通勤のハイブリット型の出勤形態が増えると思われ、出勤回数はコロナ禍よりは確実に増えると思いますが、コロナ禍前には戻らないと推測されます。

 

中国人旅行客の戻りがまだ本格的に始まっていないので、これが急速に回復した場合には、かなりの回復が見込まれる可能性がありますが、現状では外国人を受け入れるパイに限度があるので、やはりテレワークと団塊の世代の高齢化による減少を食い止めるまでには行かないものと思われます。

 

そのためか、JR東日本や東急電鉄の株価は最近は勢いがなく、京王線や小田急線は数カ月前までの上昇の勢いが無くなっています。

今後の鉄道各社の戦略は?

今後の鉄道各社の生き残りとしては、

・沿線の再開発や活性化

・埋もれていた資産の有効活用

・駅ビルや駅中をこれまで以上にテナントへの貸しスペースとして活用する

・回数券の廃止

・運賃の値上げ

・有料電車の増便や新たな運行

・始発や終電又は昼間の時間帯の列車の本数の削減

・バスを含む赤字路線の廃止

・他業態への変換

などが考えられます。

いずれにしろ、民間企業は利用者の利便性を第一に考えるべきですが、背に腹は代えられない、上場企業である以上、利益をあげる必要があるので致し方無いことではありますが、現状では、利用者にとっては負担が大きくなる事項が増えてきそうな気がします。