東京都渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
今日9月1日は関東大震災が発生した1923年(大正12年)9月1日から100年目の節目にあたります。
そこで今回は、都心では当たり前の光景になった高層ビルやタワーマンション(以下、「タワマン」と言います。)で働く方や住む方に大きな危険をもたらす可能性がある長周期地震動についてお話しさせて頂きます。
大きな地震で生じる、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い大きな揺れのことを長周期地震動といいます。
今後高い確率で発生が予想される南海トラフ地震のような巨大地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。
長周期地震動により、高層ビルやタワマンなどは大きく長時間にわたり揺れ続けることがあります。
また、長周期地震動は遠くまで伝わりやすい性質があり、 地震が発生した場所から数百km離れたところでも大きく長く揺れることがあります。
そのため、長周期地震動による大きな揺れにより、家具類が倒れたり・落ちたりする危険に加え、家具や大型電化製品等が大きく移動したりする危険が指摘されています。
実際、2011年に発生した東日本大震災では震源から約700km離れた、大阪府咲洲庁舎がある「さきしまコスモタワー(大阪市住之江区、高さ256m、地上55階、地下3階建ての超高層ビル)」の最上階で、その地域の地震の揺れが最大震度3だったにもかかわらず、最大で幅2.7mの横揺れが約10分間続き、エレベーターの閉じ込め事故や内装材や防火扉が破損するなどの被害が発生しています。
建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があり、地震波の周期と建物の固有周期が一致すると共振して、建物が大きく揺れます。
高層ビルやタワマンの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と「共振」しやすく、共振すると長時間にわたり大きく揺れます。
また、高層階の方がより大きく揺れる傾向があります。
長周期地震動により高層ビルやタワマンが大きく長く揺れることで、先述したように室内の家具や什器が転倒・移動したり、エレベーターが故障すると言った事例が発生する可能性が高くなります。
高層ビルやタワマンは、短い周期の揺れは、「柳に風」のように、揺れを逃がすよう柔らかくできているのですが、長い周期の揺れがあると共振してしまい、大きく・長く揺れることになってしまうのです。
また、建物の揺れやすい周期(固有周期)は、高さによって異なり、一般的に高いビルや高いタワマンほど長い固有周期をもちます。
同じ地面の揺れでも、建物の高さによって揺れ方は異なり、地面の揺れの周期と建物の固有周期が一致すると、その建物は大きく揺れまることになります。
長周期地震動に関する情報提供について
気象庁は、地震発生後、直ちに震度情報を発表していますが、震度は地表面付近の比較的短い揺れを対象とした指標のため、高層ビルやタワマンの高層階の揺れの程度を表現するのに十分ではありません。
そのため、高層ビルやタワマン内での的確な防災対応が出来るよう、おおよそ14階や15階建以上の高層ビルやタワマンを対象として、長周期地震動に関する情報を提供するようになっています。
気象庁は、高層階における揺れの大きさは、震度ではわからないため、地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度を基に、新たに長周期地震動による揺れの大きさを下記表に記載されている4つの階級に区分した長周期地震動階級 という指標を導入しています。
具体的には、長周期地震動に関する観測情報の試行的な提供を2013年(平成25年)3月28日から気象庁ホームページ上で開始しており、2019年(平成31年)3月19日には本運用へ移行しています。
また、2023年(令和5年)2月からは、新たに長周期地震動に関する観測情報のオンライン配信を開始しています。
長周期地震動に関する観測情報は、施設管理者や低層階の防災センター等が高層階における被害の発生可能性等を認識し、
防災対応を行うための判断支援に利用していただくことと、高層階の住民の方々が、震度とは異なる揺れであったことを認識していただくことを想定しています。
長周期地震動に関する観測情報は、長周期地震動階級1以上を観測した場合に観測点で観測した長周期地震動階級などを発表する情報で、地震発生から10分程度でオンライン配信するとともに気象庁ホームページに掲載しています。
また、気象庁の震度観測点で震度3以上を観測する地震が発生した場合、長周期地震動階級や観測された波形等の情報を、長周期地震動の観測結果として、地震発生から20~30分程度で、気象庁ホームページに掲載するとしています。
地震情報の発表規準と緊急地震速報について
気象庁では地震情報が入るにしたがって下記の表の情報を発信しています。
また、携帯電話等に届く緊急地震速報は今までの発表規準は震度5弱以上を予想した場合で、対象地域は震度4以上を予想した地域でしたが、令和5年2月以降からは、発表規準に長周期地震動3以上を予想した場合で、対象地域も長周期地震動3以上を予想した地域も加わっています。
緊急地震速報に長周期地震動を追加した理由は過去の長周期地震動による被害を踏まえた結果下記3項目が重要視されました。
・長周期地震動により人命に係る重大な災害が起こるおそれがある。
・近年の高層ビルの増加により長周期地震動の影響を受ける人口が増加している。
・長周期地震動階級を予測する技術が進展し実用の域に達した。
予測情報の発表の仕方としては、複数の異なる警報を出すことは受け手側の対応が困難になることやとるべき行動に大きな違いがないことから、緊急地震速報の基準に加えることが妥当とされました。
確かに、緊急時にはシンプルであることが最もわかりやすく、また受け手側が常に建物の高層階にいる訳でもなく、また、長周期地震動を理解している国民がどれほどいるかという点でも、区別しなかった点は最良の選択だったと言えると思います。
都心部でのタワマン人気は不動のものとなりつつあり、多くのデベロッパーもタワマンの開発に主軸を置いています。
東京カンテイの調査によると2022年12月末時点で20階以上のタワマンは全国で1,464棟、1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で776棟にも及びます。タワマンの棟数等は本ブログ内「分譲マンションの相続税評価額が2024年から上がる!!」にも記載しています。
確かに高層階からの眺めは最高ですし、共用部の施設の充実度や高級ホテルのような豪華なエントランスが多くの人を魅了しています。
その一方で、大規模修繕費用や管理費の高さ、相続税評価額の見直しによる相続税評価額の大幅アップ、長周期地震動による大きな揺れやエレベーターが停止した際の階段の上り下りを考えると、良い事ばかりで無いという事も理解しておく必要があるかと思います。
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