新空港線(以下「蒲蒲線」と言います。)は、東急多摩川線矢口渡駅の近くから多摩川線を地下化し、JR・東急蒲田駅の地下、京急蒲田駅の地下を通って、大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れる計画で、2030年代の開業を目指しています。
現在、JR並びに東急蒲田駅から京急蒲田駅までの約 800mに鉄道は走っておらず、この区間は徒歩、バス、又は、タクシーを利用しているのが現状です。 約800m、徒歩で約10分という距離は、歩けない距離ではありませんが、非常に不便な状況となっています。
私もこの区間を何度か歩いたことがありますが、直線距離で800mと言われていますが、実際にはもっと、ずっと距離があるように感じます。
直線距離は約800mですが、東急多摩川線矢口渡駅と京急空港線の大鳥居駅間を地下で通すために、鉄道区間の総距離は約3.1kmになります。
この区間を鉄道で結ぶことで、大田区内の東西の移動が便利になるだけでなく、沿線のまちづくりも一緒に進めることで地域活性化につな繋がると期待されています。
東急東横線や東京メトロ副都心線などへ相互直通させることで、今までの鉄道路線では、羽田モノレール又は京急線を利用するために、東京の東側の浜松町駅又は品川駅を経由しないとアクセスできなかった羽田空港が渋谷駅・新宿駅・池袋駅などの山手線西側の主要駅や和光市・所沢市・川越市等の埼玉県方面へも繋がり、広域的な鉄道ネットワークが生まれ、羽田空港に向かう人の流れの分散が可能となり、東京の国際競争力の強化が期待できます。
実際に、目黒区の自由が丘の重要性が高まる旨の記載が「自由が丘未来ビジョン」に掲載されていたり、遠く離れた川越市などからも期待が寄せられています。
現在は、国の交通政策審議会答申198号に基づき、東急多摩川線矢口渡駅から京急蒲田駅までの区間について、事業化に向けた準備をしており、2022年(令和4年)10月に設立した羽田エアポートライン株式会社(線路や駅を作る会社)と連携して取り組んでいます。
JR並びに東急蒲田駅と京急蒲田駅が鉄道で結ばれると、大田区内の東西方向の移動が便利になるとともに、天気にも左右されず、高齢の方、障がいのある方、ベビーカーなどを利用される方も、安全で快適に移動できるようになります。
大田区では、蒲蒲線によって新たな人の流れが生まれると、沿線のまちづくりを行うきっかけとなり、まちがにぎわい、地域の活性化につながるとともに、大きな経済波及効果を生み出すと試算しており、令和4年12月に「鉄道と魅力的なまちづくり宣言」を行い、まちづくりを行っていく意思表示をするとともに、将来像を共有しその目標に向かって、区民や事業者と連携して取り組んでいくための「大田区鉄道沿線まちづくり構想」の策定に取り組んでいます。
さらに、自動車から鉄道への転換が促され、CO2が削減されることで、大田区が目指すゼロカーボンシティの実現にも貢献し、災害があった時などの帰宅困難者に対する、代替ルートとしての選択肢も広がります。
蒲蒲線で広がる鉄道路線の広域ネットワーク
事業の問題点
東急線と京急線では線路の幅が異なっているために、今のままでは相互乗り入れができません。
車輪の位置を動かすことができる「フリーゲージトレイン」や3本目のレールを新たに敷設する「3線軌条」といった対応策が考えられますが、技術面やコスト面で見通しがたっていない状況となっています。
そのため、今回は整備区間を分け、第1期整備区間のみ取り組むこととしています。
また、東急多摩川線は現在3両編成で運行されており、東急東横線は最低8両編成のためホームの長さが足りません。
実際に東急東横線が乗り入れする場合に、3両編成分しか停まれない(鵜の木駅を除き4両編成は可能ですが現在は立入禁止区域として閉鎖されています。)ので東急多摩川線の各駅のホームを拡張するしかありませんが、それには東急多摩川線の各駅の近くで線路を横断する道路を陸橋化する等の手段が必要となり膨大な費用がかかるものと想定されます。
東急多摩川に入線する際に、車両を一部切り離すという事も出来なくは無いと思いますが、切り離した車両の保管場所の確保が難しいものと思われ、かと言って3両又は4両編成で東横線を走らせるというの現実的ではなく、様々な課題が残されています。
また、東急蒲田線が完全地下化になると、JR京浜東北線との乗り換え時間は増えることが予想されます。
まずは、第1期工事により、東急蒲田駅と京急蒲田駅が接続され、東急多摩川駅と京急蒲田駅間の折り返し運転が現実的だと思われます。
事業の整備手法と需要予測
蒲蒲線整備のうち、東急多摩川線矢口渡駅から京急蒲田駅までの区間については、都市鉄道利便増進事業という国の制度を活用する予定となっています。
この制度では、「電車を走らせる会社」と「線路や駅をつくる会社」とに分けて事業を進めます。
電車を走らせる会社は東急電鉄株式会社、線路や駅をつくる会社は先述させて頂いた2022年(令和4年)10月14日に設立された羽田エアポートライン株式会社がそれぞれ担います。
事業にかかる費用は、国が3分の1を、地方自治体(東京都と大田区)が3分の1を補助金として「線路や駅をつくる会社」に交付しますが、区からの補助金には、東京都からの財源などを使えるように調整しています。
なお、「線路や駅を作る会社」が負担する費用は、銀行などから借りる予定ですが、開業後に「電車を走らせる会社」から支払われる線路や駅の使用料から返済していく予定です。
最新の需要予測によれば、蒲蒲線の利用者数は1日5.7万人を見込んでいます。内訳は、航空旅客が1.5万人、都市内旅客が4.2万人となっています。
羽田空港のキャパにも限界があるかと思いますが、コロナ過の2020年3月29日から新たに運用されている新飛行経路により、増便キャパも確保されており、今の勢いで、訪日外国人数が増加していけば、これを大幅に上回る可能性もあります。
蒲蒲線事業の整備手法
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