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築年数が経過したマンションは購入しても大丈夫なのか?

1979年築の「第25宮廷マンション」 渋谷区千駄ヶ谷3-13-22 北参道駅徒歩2分
1979年築の「第25宮廷マンション」 渋谷区千駄ヶ谷3-13-22 北参道駅徒歩2分

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

中古マンションを購入する際に多くの方が気にする条件のひとつが築年数です。

 

特に山手線沿線又はその内側に位置するヴィンテージと言われるマンションは築40年を超える物件が非常に多いのも事実です。

 

マンションの最初のブームは1962年に「建物の区分所有等に関する法律」が制定されてからです。

 

その後1964年に東京オリンピックが景気の刺激剤となり、住宅都市整備公団(現在の住宅都市開発機構)が団地型マンションを多く供給した一方で、民間デベロッパーは都内で利便性の高い立地で高級マンションを供給するようになりました。

 

1967年~1969年にかけては、オイルショックによる不況からようやく脱しつつあった時期に、職住近接をうたったマンションの利便性が市場で評価され、民間デベロッパーの大型開発が増加し、神奈川県、埼玉県、千葉県を含む都心近郊の利便性が良い立地にマンションの供給が一気に進みました。 

 

このような状況下で、現在、築40年を超える多くのマンションが供給されていったのです。

 

下記の国土交通省の資料によりますと、旧耐震物件は約103万戸あることになっています。

 

都心部の高級マンションだけでなく、駅近の少し古めのマンションは、上記理由によりこの年代の物件がかなり多く、実際に、今でも売買取引が盛んに行われています。

 

最も多いのは、このような築年数が経過したマンションは、そのままの状態では一般の個人はなかなか購入しないので、再販買取業者と言われる不動産会社が部屋を買取り、新規でリノベーションして売り出す物件です。

 

但し、実際に取引が行われているかと言って「この年代の物件を購入して良いの?」という質問については、よく考える必要があります。

 

まず、昭和56年6月1日より前に建築確認を取得した物件は、いわゆる旧耐震と呼ばれる物件です。

 

1978年に発生した宮城県沖地震の教訓から、建物をより強固にするために、建築基準法が改正され、1981年6月以降に建築確認申請を取得した物件が新たな耐震基準を満たした「新耐震基準物件」と言われています。

 

新耐震規準物件は阪神淡路大震災の際にも、地震に対する強度が実証できた一方で、旧耐震物件は大きな被害を出しています。

 

また、近年はみずほ銀行を除くメガバンクやその他多くの金融機関で、新耐震規準以降の物件でないと住宅ローンの取扱いをしないと決めたために、旧耐震物件を購入するための住宅ローンの借入の門戸は狭まっています。

 

住宅ローンを組める金融機関が限られているということは、自分が購入出来ても、数年後又は十数年後に売却しようとしても、その売却相手が利用したい金融機関でローンが組めないという事が考えられるため、売却できる人が限られてしまう可能性があります。

 

 

逆に、2022年に住宅ローンの控除対象となる築年数要件は、築25年以内から「昭和57年(1982年)1月1日以降に建築された住宅」へ改正されたので、この点は少し条件が緩和されています。

 

1981年までに建設された物件(旧耐震物件)は耐震基準適合証明書が発行できない物件は住宅ローンの控除対象外となります。

 

旧耐震物件は、大型の地震が来た際にはあなたや家族にとっても危険です。

 

最近は耐震改修を行い、新耐震規準以降の物件と同等の安全性を持ったマンションも増えていますが、耐震補強をしていない旧耐震マンションは大地震により、倒壊する可能性もありますので、注意が必要です。

 

特に今後30年以内に70%から80%の確率で発生すると予測されている南海トラフ地震が起きた場合には、何も対策をしていない旧耐震物件に住むことは非常に大きなリスクを背負っていると言えます。 

分譲マンションのストック数の推移

分譲マンションのストック数の推移 国土交通省のホームページより
分譲マンションのストック数の推移 国土交通省のホームページより

築古でも購入して良い物件とは?

とは言っても、まだまだ人気のある旧耐震物件は確かに存在します。

 

その条件は下記のとおりです。

・都心の超一等地(番町、表参道、恵比寿、赤坂、麻布十番、広尾、高輪、代官山などの山手エリア)のマンション

・人気のある駅から徒歩7分以内の好立地(出来れば徒歩3分以内)であるマンション

・管理の状況が良い50戸以上のマンション

・耐震改修工事や耐震診断を行い新耐震基準をクリアしているマンション

・建替えが検討されており、今よりも、各段に規模が大きくなり価値が上がると予想されるマンション

 

但し、最後にあげた「建替えが検討されており、今よりも、各段に規模が大きくなり価値が上がると予想されるマンション」は、一時的な住み替えに伴う最低でも1年以上の家賃負担と、建替えに伴う一時負担金が発生しても、建替えした新しいマンションの資産価値が、それらの負担を考慮しても、格段に高くなるマンションであることが必要です。

 

このような物件を探すのはプロでも至難の技です。

 

なぜなら建替えが決議が可決された際には、現在の区分所有者が第三者に区分所有権を譲渡することを禁止する等の取り決めが行われる場合が多いので、建て替えが既に決まっているマンションではなく、水面下でかなり話が進んでいるがまだ建替えの決議には至っていないというある意味管理組合内の内部情報を取得しなければならないからです。

 

逆に築古物件で避けた方が良いマンションとは?

・耐震改修工事が行われていない旧耐震時代のマンション

・駅から徒歩10分超のマンション

・管理状態の悪いマンション(例えば、借入をして修繕しているマンションなど)

・総戸数20戸未満の小規模マンション

・浸水ハザードエリアにあるマンション

・敷地の一部が都市計画区域内にあり、将来敷地が買収される可能性があるマンション

 

上記の築古で避けた方が良いマンションは、資産価値が維持できる可能性が低く、維持管理コストもかかると想定されるため購入は避けた方が良いでしょう。

 

逆に、資産価値が維持又は上昇の可能性がある築古マンションのある場所を知りたい場合には以下の内容が参考になると思います。

 

都心の中心部は実は平たんではなく、結構起伏が激しい場所が多くあり、その中で資産価値が高いエリアは、高台に位置する江戸時代の藩邸や明治時代の侯爵等の邸宅があった場所です。

 

六本木の毛利邸、品川の御殿山は徳川家の別荘、五反田の島津山は旧薩摩藩主島津家の邸宅、池田山は岡山池田藩の下屋敷、渋谷の松濤は紀州徳川家の下屋敷といった具合です。

 

これらの土地の多くは高台にあり地盤がしっかりしています。

 

大名の藩邸の跡地や明治時代の伯爵なんか知らないという方には、もう一つ簡単な方法があります。

 

それは外国大使館があるエリアと大きな公園があるエリアです。

 

「百聞は一見に如かず」都心部で外国大使館と大きな公園がある場所は、都心立地にありながら閑静な高級住宅地となっており、低層の高級マンションや豪邸が混在したエリアとなっています。 

築古のリノベーション済の物件は購入して良いのか!?

では、築古のマンションでリノベーション済みのマンションは、買って大丈夫なのでしょうか?

 

たまにこのような質問を受けますが、できれば避けた方が良いと思います。

 

特に駅から遠い物件や郊外のリノベ済物件は避けた方が賢明です。

 

理由は、今後の人口減で家の需要が減ると言われる時代に、駅から遠いだけで流動性がかなり落ちるからです。

 

その上、リノベーション物件の場合は、業者が買い取ってリフォームをして、会社の利益をのせたうえで販売しているため、将来的な売却時には、購入時よりも相当低い金額でしか売却出来ない、場合によっては二束三文にしかならない程、経済的な損失が大きくなる可能性があるからです。

 

確かに一度スケルトンにして横引配管まで新調したリノベーション物件は魅力ですが、マンションの共有部分の配管や設備の更新工事をしておらす、修繕積立金が不足している場合は、応急措置として一時負担金も徴収される可能性があるからです。

 

数年前に文京区の春日にある1964年築のヴィンテージマンションでリノベされた物件を実際に見に行った際に、偶然、マンションの住民の方のお話を伺ったことがあります。

 

マンションの外観はそれなりに古さを感じましたが、当時としてはかなり斬新な建物であったことがうかがい知れるまさにザ・ヴィテージの王道という感じのマンソンです。

 

マンションの共用部はゴミ置き場も含めて、とても綺麗で築60年近いマンションとは思えないくらい管理状態が良いという印象でした。

 

区分所有者も生活にゆとりがある有識者が多い印象でした。55㎡程度の広さのお部屋で管理費と修繕積立金の合計額が月額85,000円程度とかなり高いマンションなので、経済的に裕福で、こだわりのある人でないと確かに住めないと感じました。

 

しかしながら、管理組合では建て替えの話がかなり前から上がっていたようで、特に、漏水が頻繁に起こっているとの事でした。

 

漏水ばかりはなかなか対策が難しいようで、大規模修繕と建替えをするかで大きく意見が分かれているようでした。

 

仮に、建替えが承認された場合、新規リノベした内装費用は全てパーになってしまいます。

 

もともと閑静な住宅街なので容積率が、外廊下等の容積緩和不算入措置を考慮したとしても大幅に増える訳でなく、住宅街の中なので、緊急輸送道路に接道している訳では無く、耐震関連に伴う助成金等も見込めないようなので、耐震改修工事を行うにしろ、建替え工事を行うにしろ、それらに伴う持ち出しの工事費は相当な金額になると思います。

 

ただ、有名な物件だけに、新規リノベした部屋を購入された方は相当数いるので建替え決議はかなり厳しいのではと感じました。

 

建替えが行われなくても、毎月の維持費の高さと突発的な漏水による修繕工事で維持する費用も相当になるのでどちらに転んでもいばらの道が待ち受けているように感じました。 

 

以上のように、築古のマンションは立地と管理の状況、そして建物の劣化状況とその修繕が極めて重要な判断材料となります。

 

自分で判断が難しいようであれば、あなたの味方になってくれる不動産エージェントに必ず確認の上、購入を検討してください。