住宅ローンを組む場合、金融機関は申し込みされた方の与信審査を必ず行いますが、この審査で重要な指標は下記の事項です。
①申込人の属性
・ご職業
・勤続年数
・年収
・借金の有無
・家族構成
・過去にクレジットカード等での未払いの有無
・自己資金の有無
②物件について
・物件の築年数
・物件の広さ
・管理状況
③借入限度額について
・返済負担率での評価
・審査金利での評価
・金融機関の設定する借入限度額
が主な審査内容となります。
最初の「①申込人の属性」になりますが、公務員の方や上場企業の社員の方であれば、キャッシングや債務不履行などが無ければ、まず問題無く審査は通ります。
勤続年数は以前は最低1年以上という金融機関が多かったですが、今は3ヶ月以上であれば問題無いとする金融機関が増えています。
年収は最低400万円以上というのが一つの基準になっています。
但し、この年収400万円というのは一般的なサラリーマンの方で、自営業の方や給与の大半が歩合の方は、8割程度で評価される場合がありますので注意が必要です。
また、借金、例えば車のローンやリボ払いがある方は、借入残高や毎月のお支払額にもよりますが、希望の金額を借入できない場合があります。
家族構成はやはりファミリー世帯の方が借入しやすいイメージですが、最近は独身の方でも問題無く借入ができる時代になっています。
今の時代、ジェンダー平等が当たり前なのですが、独身女性や単身男性、特に不動産会社に勤務している方は、借入がいまだに困難な金融機関が散見されます。
理由は、独身女性がワンルームタイプやDINKS向けの部屋を購入した後で、結婚された場合、そのお部屋がお子様が生まれる等で手狭になった場合に売却せずに、賃貸に転用してしまうといったケースがあるためです。
不動産会社に勤めている単身者は、住宅ローンを利用して購入した物件を賃貸に回す可能性が高いということで審査事態を断ってくる金融機関まであります。
また、過去1年以内にクレジットカード等の未払いはあった方は確実に審査は落とされます。
メイン口座を就職や転職等で変えたのに、クレジットカードの引き落とし口座の変更をしておらず、放置したために預金残高が無くなってしまい、引き落としが出来なくなったという事例が散見されますので、この点は誰でも起こりうることなので注意しましょう。
また、どんなに年収がある方でも投資用不動産を所有している方の多くが、住宅ローンの審査で落とされます。
私の過去の経験では特に医師の方がこの事例に当てはまります。
分譲賃貸マンションを販売している業者には医師、公務員(自衛隊員を含む)、商社等に勤める方の個人情報が出回っており、言葉巧みに、分譲賃貸マンションの購入を進めてくるので注意が必要です。
特に医師への勧誘方法は「持ち出しは数十万円程度で、万一の際には、団信が使えるので都内の数千万円するマンションを資産として大切なご家族に残せます。ローンの支払は家賃で充当するので、マイホームの購入の際にも問題ありません。」とのキャッチフレーズです。
医師の方は、仕事柄、死が誰にでも、突然訪れる存在であることを身に染みて感じているので、このフレーズに思わず、のってしまうケースがあるのです。
マイホームを購入する前に、安易に投資用分譲賃貸マンション等をご購入するのは危険なので、どうしても投資用不動産を購入したい人はマイホームを購入した後に購入する等、将来を見据えて、今一度、購入の有無を判断しましょう。
どうしても投資用の不動産を購入したい方は現物不動産ではありませんがJ-REITに投資するのも一つの手段です。
J-REITの投資口価格は十万円程度で購入できるものもあり、現金で購入していれば、住宅ローンの審査には、全く影響を及ぼしません。
最後に自己資金の有無ですが、自己資金はあったに越したことはありません。
住宅ローンは、ネット銀行の台頭により金融機関同士での競争が激化したことにより、自己資金が無くても借入可能な金融機関も多くありましたが、ここにきて、潮目が変わってきています。
一番大きな変化は段階金利制への移行です。
今までは、審査に受かれば、自己資金の多寡にかかわらず、貸出金利が変わらなかった金融機関でも、自己資金の有無や物件に対する自己資金の割合により、貸出金利を変更する金融機関が増えてきているのです。
理由は金利上昇が近い将来現実化してきており、そのためのリスクヘッジのようです。
何がリスクヘッジかというと、 自己資金を準備できている方は、年収の多寡にかかわらず、お金の管理がしっかりできている証明でもあり、住宅ローンの支払が始まっても、しっかりローンを支払ってくれる可能性が高く、それが与信に繋がるからです。
金融機関の物件審査の基準
金融機関により物件の審査の仕方が大きく変わります。
ここでは分かりやすいマンションを例にとってお話させて頂きます。
まず、事前審査の場合は、物件自体の詳細を評価せずに、社内規定の築年数と専有面積だけを確認する金融機関と、それに加え、物件所在地、駅までの距離、総戸数、長期修繕計画の有無まで調べる金融機関もあります。
事前審査で物件の詳細まで調べるのは、レアなケースですが構造が鉄骨造の物件は融資自体が受けられないか、融資金額が伸びない可能性が高いです。
理由は耐用年数が鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造と比較して短いからです。
但し、鉄骨造の物件は圧倒的に旧耐震の物件が多いので、その時点で融資を受ける事が難しいと判断できます。
物件の詳細を評価しない金融機関の事前審査の場合は、事前審査で通過しても本審査で謝絶(金融機関がローンの申し入れに対してお断りをすること)になるケースがあります。
特にネット系銀行ではネット上での事前審査は審査が機械的であるがために、結果的に審査が甘くなり、本審査で謝絶になるケースが散見されるため、注意が必要です。
そのため、弊社では住信SBIネット銀行を利用する場合には、ネット経由ではなく、住信SBIネット銀行専属のローンプラザの担当者と直接書類のやりとりをさせて頂いています。
本審査の場合は、各金融機関の社内規定に基づいて、事前審査内容に加え、路線価や築年数30年以内とか、リノベ済物件であるか等の情報を加えて審査します。
多くの金融機関が新耐震規準以降の物件、又は、築40年未満の物件を融資対象としており、また、面積は単身向けは登記簿面積で30㎡以上、単身、ファミリー世帯にかかわらず50㎡未満は不可という設定をしている金融機関も多数あります。
金融機関の借入限度額について
住宅ローンの審査では、わかりやすい指標の一つに借入限度額という目安があります。
年収に対して、いくらまで借入可能か?という指標で、年収が高い方ほど、借入限度が高くなりますが、まず、大きな項目として、単純に金融機関が融資を行うことが出来る限度額が存在します。
以前までメガバンクは1億円以下でしたが、昨今の都心部のマンションの高騰等に対応するため、最近は2億円や3億円まで融資可能としている金融機関もあります。
フラット35の融資限度額は8,000万円です。
次に、年収返済負担率(返済比率)という考えた方ですが、フラット35の場合は
年収400万円未満 30%以下
年収400万円以上 35%以下
ですが
民間の金融機関の場合は
年収450万円未満 30%以内 又は 年収400万円以上は35%以内
年収600万円未満 35%以内
年収600万円以上 40%以内
が基準となっている場合が多いです。
ここでいう年収とは、サラリーマンであれば税込み年収を指します。
さらに、住宅ローン以外に車のローン、クレジットカードのリボ払い、スマホの購入代金を分割払いしている費用も返済額に算入する必要があります。
年収500万円の人の返済比率の限度額は35%なので500万円×35%=175万円
175万円を12ヶ月で割ると毎月約145,800円までの支払額の範囲であれば借入が可能となります。
仮に、他のローン等が無い人であれば、借入期間35年、変動金利0.65%で借りた場合は約5,445万円までの物件の購入が可能となります。
ローン審査のもう一つの判断基準として年収の何倍までの借入が可能か?いわゆる「年収倍率」という指標があります。
20年以上前であれば年収の6倍程度と言われていましたが、現在は7倍から8倍程度までが借入可能額となっています。
但し、年収や自己資金の有無により、この年収倍率は変わってきます。
フラットの場合は年収400万円以上であれば、マックスで年収の9.14倍までの借入が可能です。
借りれる金額と返せる金額は違う!
金融機関が住宅ローンの申込者に対して、どのような審査手順を踏むのかについて、概要をお話してきました。
この内容を見て、結構多額の資金を融資してくれると思われた方が多いのではないでしょうか?
但し、借りれるお金と実際に返せるお金は違うことを、しっかり認識しておく必要があります。
人それぞれのライフスタイルにより、日常生活にかかる費用やレジャーや旅行などに費やす費用は、それぞれ異なるため一概には言えませんが、借入金利で計算して、年収の25%から30%程度が無理なく住宅ローンを返済できる金額かも知れません。
次回は適用金利と審査金利について詳しくご説明したいと思います。
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