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住宅ローンの重要指標 適用金利と審査金利

渋谷区で主として分譲マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

住宅ローンを組む場合、皆様が一番気にする点の多くは、ずばり「何%の金利で借りる事が出来るか?」ではないでしょうか?

 

金利は大きく分けて、固定金利と変動金利がありますが、固定金利(フラット35)と変動金利では、現在最大で1%以上の開きがあり、民間の金融機関で借入をする方の多くの方が変動金利を選択しているのが実情です。

 

金利は月初に、各金融機関から発表されますが、2024年5月1日発表時点では最優遇金利はやはりネット銀行系が強く、0.3%前後となっています。

 

短期プライムレート(銀行がトヨタなどの最優良企業に貸し出しをする1年未満の貸出期間の金利で、1989年以降は各金融機関が資金調達コストや市場の金利動向をもとに決めており、現在は新短期プライムレートと呼ばれています。)の変動により金利は変わりますが、今のところ、変動金利については目立った動きはありません。

 

住宅ローンを借りる場合は「事前審査」➡「本審査」➡「金消契約」➡「融資実行」というプロセスになりますが、適用金利とは、実際に融資が実行されるときの金利となります。

 

例えば、事前審査の際に0.35%だった金利が、融資実行の際に0.375%になっていたら、実際は、想定よりも0.025%と高い金利を基に計算された額を返済することになります。

 

ここで、ひとつ重要な「基準金利」についてお話しさせて頂きます。

 

基準金利とは先述した新短期プライムレートに1%程度上乗せした金利で、簡単に言えば、金融機関が「本来貸し出ししたい金利」でいわゆる「定価」となります。

 

現在金融機関で実際に提供している金利は「優遇金利」と言われ、「基準金利」から「優遇金利」を引いた金額が「適用金利」となります。

 

優遇金利とは簡単に言えば「値引き率」となります。

 

優遇金利は一定の幅で決まっており、基準金利が上昇した場合でも最初に決めた優遇金利の率に変更はありません。

 

但し、毎月の住宅ローンの返済が、金融機関に何の事前相談もなく、2回以上滞った場合などは、優遇金利の適用が解除され、基準金利での支払いへ移行してしまうため注意が必要です。

実例でみる適用金利と審査金利の違い

審査金利とは銀行が融資を行ううえで、返済の途中で金利が上昇しても債務者(ローンを借りた人)が返済が滞らないようにするための金融機関サイドのリスクヘッジの手段です。

 

きちきちで借りた人は金利が上昇した場合ローンの支払ができなくなる可能性があるので、金利が例え、金融機関の定める定価以上に上昇した場合でも、支払能力に余裕がある人にお金を貸すための審査基準となります。

 

では、仮に年収600万円の方が諸経費は自己資金5,000万円の物件を全額融資してもらう前提で、住信SBIネット銀行で事前審査をした場合どのような結果になるでしょうか?

 

まずは、2024年5月1日時点での最優遇金利(支払期間35年、元利均等支払、変動金利0.32%で借りた場合、毎月のローン支払額は125,855円となり1年で約151万円の支払額、年収返済負担率は約25%となります。

 

ちなみに住信SBIネット銀行の基準金利は2.875%です。

 

先述しましたように基準金利は商品でいう定価なので、審査金利はそれよりも高くなります。

 

現時点での住信SBIネット銀行の審査金利は3.25%です。

 

この審査金利で同様の計算をすると毎月のローン支払額は199,470円となり1年で約239万円の支払額、年収返済負担率39.8%となり、住信SBIネット銀行の返済負担率の上限である35%を超えてしまうため、謝絶になる恐れがあります。

 

但し、実際には自己資金率が高い人や金融資産が多い人などの場合は借入負担率が40%近くても融資が承認される場合もあるようです。

フラット35の方が審査が通りやすいのは審査金利と適用金利が同じため 

国の外郭団体である住宅金融支援機構が提供するフラット35は、日本国憲法第22条1項に記載する「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」に抵触させないいために、アルバイトや非正規社員でも融資を受ける事が可能です。

 

一方で、建物に対する審査が厳しかったり、借入上限額が8,000万円以内、また、そもそも固定金利のため金利が高く、毎月のローン支払額が増えるため実際には使い勝手が悪いと考えている人が案外多いかと思います。

 

然しながら、一般の民間金融機関が提供するローンの審査で、借入が厳しい方にとっては、利用価値があります。

 

その理由は2つあります。

 

まずは、先述した「職業選択の自由」という事項です。

 

通常の金融機関は、働いている人の属性、特に給与の出どころである勤務先に重点を置くため、収入が不安定な中小企業の経営者や立ち位置が不安定な非正規社員やアルバイトの人には制限を設けるため、融資を謝絶されたり、希望の融資額を受けるには大量の自己資金を求められるなど、多くの制約があるのが実情となります。

 

その点、フラット35は国の外郭団体のため、憲法で保証する職業選択の自由に抵触しないよう、年齢制限や最低借入期間等の制限はありますが、基本、働いている方であればどなたでも申込みは可能です。

 

そして、もうひとつの理由が、審査金利と適用金利が同じ利率である事です。

 

先述したように住信SBIネット銀行の最優遇金利は0.32%なのに、審査金利になると一気に跳ね上がって3.25%となり、実に金利差は2.93%にもなります。

 

ですが、フラット35の場合、2024年5月1日現在で、借入期間35年で最も提供が多い金利は1.94%となっており、これがそのまま審査金利となります。

 

実行金利(適用金利)では住信SBIネット銀行との金利差は1.62%もありますが、審査金利では逆に住信SBIネット銀行の方が1.31%も高い審査金利で審査を行うことになります。

 

年収400万円の方の場合は年収負担率の上限は35%なので年間支払額は140万円、月々の支払額は116,667円になります。

 

フラット35の場合、審査金利は適用金利と一緒なので金利を1.94%とした場合、35年の支払期間で逆算すると約3,554万円までの借入が可能となります。

 

一方で、住信SBIネット銀行の場合は審査金利が3.25%なので、借入限度額は約2,924万円となり、フラット35との借入額は約630万円もの差が出る結果となります。

 

この年収400万円の方が、諸経費を自己負担とし、3,500万円の物件を全額借入しようとした場合、フラット35では審査は承認されますが、住信SBIネット銀行では承認は却下され、承認条件として、新たに諸経費の他に自己資金576万円を入れないと謝絶されてしまう事になります。

 

長らく低金利時代が続いており、変動金利で0.3%台があるのにわざわざ1.94%もするフラット35では馬鹿らしくて借入出来ないと考える方が多数いらっしゃる一方で、収入が安定しない方にとっては救いの手となるのがフラット35の審査基準と言えます。

 

但し、いずれの場合にしても、借入出来る額と実際に返済できる金額には乖離があるので、そこを念頭に置いて住宅ローンの借入をする必要があります。