2026年(令和8年)から京都市で全国で初となる空き家・別荘などに新たに税金をかける「非居住住宅利活用促進税」がスタートする予定になっています。
いわゆる「空き家税」と言われるもので、総務省の認可を得て、京都市が条例に基づく「法定外税」として独自に創設するものです。
創設理由は、京都市が協議した内容を要約すると、
「2024年5月現在の京都市の人口は144万人程度だが令和22年までには約13万人減少すると推計されており、特に、就職期の20歳代が東京都・大阪府に、結婚・子育て期の30歳代が近郊都市に転出超過となっている。
都市に活力を生み出し、社会を支える中核となる「若年・子育て層」が市外に流出しており、これをくい止めることが、持続可能な都市を構築していくうえで、喫緊の課題となっており、次代のまちの担い手となる人に選ばれる未来の「千年都市」の実現は、都市の成長戦略としても大変重要なものである。
別荘やセカンドハウスの増加、何より、少子高齢化の進展による空き家の増加は、京都市に居住を希望する方への住宅の供給を妨げるとともに、防災、防犯、地域コミュニティの活力低下等、様々な社会課題の原因の一つとなっている。
非居住住宅利活用促進税は、このような状況の下、空き家や別荘、セカンドハウスなど居住者のいない住宅(非居住住宅)を所有している方に受益や社会的費用、担税力に見合った負担を求めることで、非居住住宅の流通や利活用を促すとともに、空き家の発生の抑制や、防災面などの社会的費用を低減し、もって持続可能なまちづくりを実現しようとするものである。」
としています。
空き家問題は、日本における最も重要な課題の1つとなっています。
それだけに、同様の動きが全国に波及することを期待する声も挙がっています。
一方で世界有数の観光地である京都市内には、ホテルや旅館が数多く建ち、市内の好立地の多くが宿泊施設の建設地となっており、インバウンド需要により土地の価格が高騰し、例え、マンションが建設されたとしても、一般の人々が購入出来る値段とはかけ離れているのが実情となっています。
さらに京都市では、景観を守るため、全国的にも厳しい高さ制限を設けているためマンションの開発が進まず、また、オーバーツーリズムによる慢性的な交通渋滞やバスに乗れないなど生活環境が悪化しており、若い世代やファミリー層の「京都市離れ」が起きており、これらを空家の活性化により、呼び戻したいとうことが大きな理由となっています。
また平成初期に行った線路と道路の立体交差化事業や梅小路公園整備事業、京都コンサートホール整備、東北部クリーンセンター整備、地下鉄への財政支援などにより、財政状況はひっ迫しており、少しでも穴埋めをしたいという思惑もあると思われます。
課税対象者や税額はどうなる?
課税対象者は京都市の市街化区域内に所在する非居住住宅(その所在地に住所を有する者がいない住宅)の所有者になります。
非居住住宅であるかどうかについての判断は、当該住宅を生活の本拠として利用している人がいるのか?いないのか?の有無によって判断します。
複数の住宅を所有している人の場合は、生活の実態により当該住宅が本拠として利用されているのか?いないのか?についてで判断するようです。
実際に生活の本拠として利用されている人がいる場合は、住民票がなくても課税対象とはなりません。
逆に、住民票が置かれていても生活の本拠として利用していない場合は課税対象となります。
なお、次の免税点及び課税免除に該当する非居住住宅は課税の対象外です。
免税点 家屋価値割の課税標準額(家屋の固定資産評価額)が20万円(導入当初5年間は100万円)未満のもの。
課税免除の要件は下記の通りとなります。
ア 事業の用に供しているもの又は1年以内に事業の用に供することを予定しているもので、所有者から申告があったも
の。
イ 賃貸又は売却を予定しているもので、所有者から申告があったもの。但し、1年を経過しても契約に至らなかったもの
は除きます。
ウ 固定資産税において非課税又は課税免除とされているもの。
エ 景観重要建造物その他歴史的な価値を有する建築物として規則に定めるもの。
減免対象になる非居住住宅については、所有者からの申請により下記の通り非居住住宅利活用促進税を減免します。
ア 震災、風水害、火災その他これらに類する災害又は盗難により損失を受けたもの。
イ 生活保護法の規定による生活扶助を受ける者が納税者であるもの。
ウ 国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合及び財産区による買収若しくは収納により、又は都市計画法に基づ
く事業の執行により、使用収益することができなくなったもの。
エ 次の事由により一時的に居住の用に供していないもの
・転勤、海外赴任(5年間に限る)
・入院又は介護施設若しくは障害者支援施設への入所等
・DV被害等による避難
・親族の介護
・増築、改築その他の改修工事
徴収猶予については、次のいずれかに該当する場合、納税義務者の申告があれば、その事実が発生した日から3年間に限り、非居住住宅利活用促進税の徴収を猶予します。
なお、猶予期間中に当該住宅が活用された場合は、猶予された税額の支払いが免除されます。
ア 非居住住宅の所有者が死亡したこと。
イ 居住者が死亡し非居住住宅となったこと。
空き家税の課税について
空き家税の賦課期日は毎年1月1日としており、徴収方法は普通徴収(納税通知書による徴収)とし、納付期限は、6月、8月、10月及び1月のそれぞれ末日の年4回となります。
では実際にどれくらいの税額になるかについては、家屋の構造や築年数、立地条件などによって変動するとしていますが、おおよそ、固定資産税額(土地+家屋)の半額程度になる場合が多いとしています。
この空き家税により京都市は年間約9億5,000万円の税収を見込んでいるようです。
建物に対する税(家屋価値割) は固定資産評価額の0.7%
土地に対する税(立地床面積割)は住宅の敷地の1㎡当たりの固定資産評価額×家屋の延床面積×税率で計算します。
土地に対する税率は課税標準額が700万円未満は0.15%、700万円以上900万円未満が0.3%、900万円以上が0.6%となります。
なお、家屋の固定資産評価額が100万円未満の建物は、制度導入後5年間は課税対象外となる予定です。
京都市では下記のエクセルシートをダウンロードできるようにしており、このシートの黄色部分にご自身が所有する空き家や別荘の該当数値を入力すれば税額を試算できるようになっています。
【京都市非居住住宅利活用促進税の税額シミュレーション】
上記のエクセルシートに入っている数値は下京区にある1997年築の小規模分譲マンションの1室をモデルケースで試算しています。
専有面積は70㎡でマンションの場合は共有部分の床面積も含めるので家屋床面積は80㎡として入力しています。
本モデルケースの物件は地下鉄烏丸線の五条駅から徒歩5分程度の立地で相場価格は約5,000万円の物件です。
このような類似物件クラスのマンションの場合、2028年以降、固都税の他に別荘として保有していた場合、新たに年間9万円程度の税を負担することが予想されます。
但し、京都の中心部に物件を保有している方の多くは富裕層とみられるため、空き家の非居住住宅が賃貸に出される可能性はありますが、別荘として利用されている非居住住宅の売買が活発化するかはわからないと思います。
この空き家税は今後各地方自治体で導入される可能性があり、相続なので主とした実家等をそのまま空き家として放置する事は税負担に繋がる可能性が今後は高くなっていくと思われます。
先述したように増え続ける空き家は社会的にも大変大きな問題となっており、空き家を放置したままにしておくと、「特定空き家」や「管理不能空き家」に指定されれば、住宅用地の税制特例が適応されなくなり、固都税の負担額が一気に増え、更には、「空き家税」の負担も追加で増える可能性があります。
また、建物の解体費用は価格が上昇しており、10年前であれば坪3万円程度で解体できた木造家屋の解体費用が今は坪5万円以上かかっている状況となっています。
さらに80㎡を超える解体工事を行う場合には、2022年4月より、事前にアスベストの有無を調査することが法律で定められており、空き家所有者に対する、包囲網が確実に整いつつあります。
今回の京都市の空き家税は別荘所有者にも税負担が生じるようになるとのことですが、別荘として物件を所有している人は基本富裕層なので、税負担があっても物件を売却する事は少ないと思います。
但し、仮にに軽井沢などでもこの空き家税が導入された場合、広大な敷地を要する別荘を保有している方にとっては、それなりにインパクトのある税負担となる可能性があります。
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