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ペロブスカイト型太陽電池て何ですか?

(出典)経済産業省 令和5年8月 次世代型太陽電池の早期社会実現に向けた追加的取組について 資料より
(出典)経済産業省 令和5年8月 次世代型太陽電池の早期社会実現に向けた追加的取組について 資料より

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

一般に太陽電池というと、戸建て住宅の屋根に設置されているものや、黒い大型のパネルがずらりと並べてある光景を思い浮かべると思いますが、これらの多くは「シリコン系太陽電池」と呼ばれるもので、発電層がシリコンでできており、現在、もっとも普及している太陽電池で、市場のシェア率はおよそ95%となっています。

 

シリコン系の太陽電池は、耐久性に優れ、変換効率(照射された太陽光のエネルギーを電力に変換できる割合)も高いという特徴がある一方で、太陽電池自体の重さや屋外で耐久性を持たせるためのガラスの重みによる重量があるため、設置場所が限られるという制約があります。

 

日本は平地が少ないために、新たに太陽電池を設置できる適地が少なく、平地面積当たりの太陽光発電の導入量が主要国の中で既に1位となっている状況です。

 

私はいつくかのメーカーの太陽電池設置技術者の資格を有していますが、戸建ての屋根にのせる場合には、台風や突風などの際に、太陽電池が飛ばされないように、屋根の端から一定の距離を取らないと行けないなどの設置基準や既存住宅の屋根に太陽光パネルを設置する場合にはブチルゴムという耐久性が高いゴムを使用し、屋根の浸水や腐食を防ぐようにするのですが、屋根の保証期間は太陽光パネルを設置した時点で、切れてしまうという難点があり普及の妨げにもなっています。

 

更に、近年急増して大きな問題になっているのが、太陽電池発電所に欠かせない銅線の窃盗です。

 

人里離れた山間部などに設置した太陽電池発電所で発電した電気を供給するための銅線窃盗の被害が後を絶ちません。

 

このような状況下で、今後どのように設置場所を確保するかが課題となっています。

 

ペロブスカイト型太陽電池とはペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池で、「シリコン系太陽電池」や「化合物系太陽電池」にも引けを取らない高い変換効率を達成できる可能性がある技術です。

 

現在は「フィルム型」と「ガラス型」が主流でシーンに分けて使い分けが可能となっています。

 

ペロブスカイト膜は、塗布(スピンコート)技術で容易に作製できるので、既存の太陽電池よりも低価格で製造できます。

 

さらに、薄くて軽量なため、折り曲げたりすることも可能で、シリコン系太陽電池では困難なだったビルの壁や窓にも設置することができます。

 

このような特徴を有する太陽電池で、シリコン系太陽電池と同程度の変換効率が見込める製品はありませんでしたが、ペロブスカイト型太陽電池の登場によって、理想的な太陽電池が実現可能になったと言えます。

 

このことから、ペロブスカイト型太陽電池は、世界で最も注目されており、太陽電池に関する世界中の論文の大半がペロブスカイト太陽電池に関するものになっていますが、中国やポーランドで既に商品化している企業もあるようですが、日本国内では現時点では商品化には至っていません。

ペロブスカイト型太陽電池の特徴 

ペロブスカイト型太陽電池の主な特徴は下記の通りです。

 

① 低コスト化

ペロブスカイト型太陽電池は、材料をフィルムなどに塗布・印刷して作ることができるため、製造工程が少なく、大量生産による低コスト化が見込めます。

 

② 軽くて柔軟

シリコン系太陽電池が重くて厚みもあるのに対し、ペロブスカイト型太陽電池は小さな結晶の集合体が膜になっているため、折り曲げやゆがみに強く、軽量化な製品です。

 

③ 主要材料の調達が容易

ペロブスカイト型太陽電池の主な原料であるヨウ素は、日本の生産量が世界シェアの約3割を占めており、世界第2位となっています。ちなみに第1位はチリで世界シェアの約6割を占めています。

 

現在主流のシリコンの主な供給源は中国となっています。

 

そのため、サプライチェーンを他国に頼らずに安定して確保でき、事ある後にレアメタルなどの輸出制限を行う中国(チャイナリスク)に頼る必要が無く、経済安全保障の面で非常にメリットがあります。

 

一方で、課題となるマイナス面としては、寿命が短く耐久性が低いこと、大面積化が難しいことです。

 

また、シリコン系と同等の高い返還効率が可能と言われていますが、更なる商品化に向けての変換効率の向上も今後の課題となっています。

ペロブスカイト型太陽電池の今後の動向 

2024年5月21日の記者会見で斎藤経済産業相は、ペロブスカイト型太陽電池の導入拡大に向けて5月下旬に官民で協議会を設立すると発表しました。

 

協議会には、パナソニックホールディングス、積水化学工業と言った国内メーカーやJR7社や不動産の業界団体、経済産業省や国土交通大臣、東京都をはじめ100を地方自治体が参加する予定になっています。

 

ペロブスカイト型太陽電池は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した日本発の技術ですが、開発面では巨額の投資を受けた海外勢が先行している状況です。

 

協議会の立ち上げは、従来型の太陽光発電技術のように日本勢が世界シェアの過半を占めていても、最終的に中国との価格競争に敗れたという過去の教訓からも、官民一体で、実用化に向け、技術力とコスト面で、またしても中国に負けないようにとの日本政府や日本企業の強い危機感の表れと言えるかもしれません。

 

日本国内での商品化の動きとしては2025年に積水化学工業が商品化を目指しています。

 

また政府としては2021年度のエネルギー基本計画の再生可能エネルギーの具体的な内訳としてペロブスカイト型太陽電池の導入を想定していませんでしたが、2024年度中に作成する次期エネルギー基本計画には2040年度の再生エネルギーの一つの項目として、ペロブスカイト型太陽電池の項目を加えることにしています。