渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
住宅を購入するときに多くの人が利用するのが住宅ローンです。
住宅ローンはその約定で、借入を行う方がご自身で住むための家を購入するための借入で他の用途に使用してはならないと定められています。
一時期フラット35を悪用して、収益不動産を購入した人たちの契約違反が表沙汰になり、一部の不動産業者が裏で暗躍していたとして世間を騒がせましたが、実は、意識しないで、この契約違反をしてしまう方達が相当数いるのです。
よくある事例が、30代前半で1LDK等のマンションを購入した女性が、数年後に結婚し、当初は一緒にそのマンションに住んでいたものの、手狭になりご主人が新しくマンションを購入してそちらに住むことになり、「女性は当初に購入したマンションはそのまま空室のままにしてあります」であれば良いのですが、せっかく購入した大切な資産を売却するのはもったいないとの事で、賃貸に回しました。
これが住宅ローン条項の契約違反となり、見つかった場合には、ローンの残債を全額一括で返却するように、金融機関から訴えられてしまう可能性が高いケースとなります。
住宅ローンの借入の際には、この条項の説明は必ず受けているはずなのですが、数年経過してしまうと、頭の中からその契約内容はしっかり抜けてしまい、知らないうちに、金融機関との契約を破ってしまうことになってしまうのです。
最も金融機関が注意している事項は、「購入したマンションに必ずご自身がお住まいになるかどうか」ということになります。
そのため、20代や30代の単身女性や単身男性(特に不動産会社の社員)などは非常に疑いの目で見られ、住宅ローンの融資が通らない場合があるというのが実態です。
最近は、生涯独身の方が30%を超える時代なので、差別的な見方をする金融機関は減りましたが、数年前に私が仲介させて頂いたお客様はフラット35の融資を受けたのですが、婚約している状況で融資は下りたのですが、リフォーム工事の費用の分まで融資を受けたため、最後の融資までに3ヶ月程度の期間を要してしまったのですが、なんとリフォーム代金の融資の実効をする手前で、担当者から結婚していないと駄目と言われてしまいました。
コロナ禍で結婚式に人を呼べない状況下で、結婚式と籍を入れるのを同じ日にしたいというご希望があり、その話をしても受け入れてもらえず、怒り心頭でしたが、最終的には住民票で同居の形をとることでなんとかこの状況を回避することが出来ました。
この経験から裏を返せば、「単身の方は本当に自分自身で住むための家を購入するためなのに、フラット35では融資を受けることが出来ない。」という事を決定づけたような形で、このジェンダー社会において、先述したフラット35の悪用事例があったから余計厳しくなったとは言え、なんとも理不尽な制度だと感じてしまいました。
さて、お話を本題に戻しますが、住宅ローンの契約内容は将来の家計に大きく影響します。
住宅ローンを組む際には必ず金融機関の事前審査を受ける事となり、住宅ローンの事前審査の結果により金利やお借入額などの条件が大方わかってきます。
今回は、住宅ローン審査で重視される項目やより条件を有利にするための方法をお伝えしたいと思います。
住宅ローンの事前審査は早めに行いましょう。
住宅ローンの手続きは可能であれば、気になる物件があればその物件でとりあえず審査をされた方が良いです。
現在はネットで事前審査が可能ですので、物件の概要がわかれば事前審査は可能です。
内覧をして、その物件を気に入れば、その物件で事前審査を受けるというのが大方のストーリーですが、誰もが欲しがるような良い物件の場合、内覧した後での事前審査では他の購入希望者に負けてしまう事が多く、そのような事態を避けるためにも、スピーディーな対応が求められます。
基本的に購入申込書を出す場合は、事前審査を通過している書面を求められる場合が多く、他の物件で事前審査をしていた場合でも契約前までに、購入したい物件で差し替え再審査をするというのが原則であり、とにかく事前審査をしておくということが非常に重要です。
この事前審査をしておくか、しておかないか、によって買いたかった不動産を買い逃すことにもつながり、実際にそのような事例は枚挙にいとまがありません。
住宅ローンの審査の手順は、まず最初に金融機関を決める事から始まります。
1つの金融機関の場合もありますし、複数の金融機関で同時に審査をしてもらう場合もあります。
自己資金の有無やその多寡から借入額、借入年数、変動金利か固定金利か、元利均等支払か元金均等支払かを選択し、身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード、パスポート)、健康保険証、最新の源泉徴収票、購入したい物件の販売図面を添えて事前審査の申し込みをします。
マイナンバーで保険証登録を行ってる人は健康保険証は不要です。
事前審査では身分証明書まで求めない金融機関もありますが、その分、机上審査となるので事前審査を通過できても、本審査で謝絶(お断り)されるケースが散見されるので注意が必要です。
特にネット系の金融機関がその確率が高いです。
事前審査の期間は早ければ営業日3日程度から、審査を受ける人の属性や繁忙期によっては2週間近くかかるケースもあり、また各金融機関によっても期間に長短の違いがあります。
事前審査を無事通過したら購入したい物件の売買契約を結んだ上で本審査に進みます。
本審査では、売買契約書、重要事項説明書、手付金の領収書、登記事項証明書、住民票などが追加で求められ、本審査の結果が出るまで1週間から2週間程度かかることになります。
本審査を無事通過すれば、住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)を行い、その後、物件の決済(引き渡し)の際に実際に融資が実行されます。
無理のない返済計画であれば審査で落ちる事はほとんどありませんが、住宅ローンの審査を踏まえて適用される金利が変わったり、借入額の引き下げや追加の自己資金を求めらる場合もありますので注意が必要です。
また、住宅ローンの審査時に適用される審査金利はフラット35以外は通常の住宅ローンの金利よりもかなり高めに設定されているため、自分で計算した借りられる金額よりも、融資可能が下がる場合もある事もしっかり把握しておくことが大切です。
住宅ローンの審査時で金融機関が重視する項目
金融機関が審査で最も重要視する点は
1.申込者が返済できるか?
2.万一返済ができない場合に物件の売却などで融資したお金を回収できるか?
の2点です。
返済できるかは否かは
1.申込者の与信
2.融資が回収できる物件であるか
申込者の情報としては、勤務先の規模や与信、年齢や年収、勤続年数などになります。
物件の情報は購入する物件の評価額などとなります。
諸経費まで借入でカーバーしようとした場合は、借入額が物件価格オーバーするオーバーローンになるため、金融機関は物件の評価をより厳しくみます。
特に重視される情報は下記の通りで、これは住宅金融支援機構が金融機関に対して実施した調査内容の複数回答の結果となります。
1位 返済負担率(70%)
2位 職種、勤務先、雇用形態(45%)
3位 借入比率(38%)
4位 借入者の社会属性(32%)
5位 預貯金や資産の保有状況(28%)
6位 担保となる融資物件の時価(12%)
という結果となっています。
返済負担率は収入に占める返済額の比率を示す指標で、借入予定の住宅ローンとその他の借り入れの返済額を足し、税込年収で割って判断されます。
年単位で計算するため年間返済負担率とも呼ばれ、比率が高いと返済が難しくなりやすいと判断され、その状況を考慮して借入額等が減額されたりします。
自己資金が用意出来ない人出、借入額が減額された場合は、実際にはその物件を購入することは出来ないため、減額に見合った物件を選び直すか、一旦は物件の購入を諦めると言うことになります。
一般的に、返済負担率は「35%以下」であれば審査に通りやすく、収入が多いと4割程度まで許容される場合もありますが、あくまでも人によって異なります。
返済負担率を計算する際にはフラット35以外は、住宅ローン返済額を実際の適用金利(金融機関の広告で掲載されている住宅ローンの金利)ではなく「審査金利」を使って算出します。
現在、変動金利では0.3%台の金利もありますが、審査金利は年3~4%程度となります。
これほど多くの差があるのは、金利が上がっても、返済できるかを判断するためです。
その他の借り入れの返済額は申込者の自己申告と、個人の信用情報を扱う専門機関(CICやJICC等)に照会した情報を基に判断されます。
返済負担率の計算には自動車ローンやカードローンやクレジットカードのリボ払いなども含まれます。
特に、住宅を購入したい時期と自動車が必要になる時期は重なることが多く、住宅を購入するまえに車をローンで購入してしまうケースがありますが、車は、マイホームを購入した後に買う方が賢明といえます。
奨学金の返済やスマートフォンなどの割賦販売も基本含まれますが、奨学金の残高が少額の場合やスマートフォンの割賦販売と通話料金は一体で値引きしているケースも多く判別が難しいため、場合によっては、これらを考慮しない金融機関もあります。
住宅ローン審査を有利にするには
返済負担率は借り手側の努力によっては改善できる可能性があります。
頭金を多くして借入額を抑えたり、事前に他の借り入れの返済を進めるなどの場合です。
申込時に他の借り入れがあっても融資実行までに完済予定であれば、申告すれば完済する前提で審査してくれる金融機関もあります。
逆に、他の借り入れの返済履歴も確認されますので、返済が遅れた履歴があると不利になるケースもあります。
「借入比率」は担保となる物件価格に対する住宅ローンの借入額の比率を示し、頭金の増額により比率は低くなり、数値は改善します。
最近は低金利を生かすため、手元に資金を残し頭金を払わない人もいますが、このような方の場合、預貯金や資産の保有状況を全て金融機関に開示することにより、自己資金が少なくても、満額で借入が出来る場合もあります。
ご自身の保有資産の状況が全て借入先の金融機関にわかってしまうのは、心理的に嫌ですが、保有資産の多寡によっては最優遇金利で住宅ローンを借り入れる事も可能な場合があります。
「職種や勤務先」は収入の安定性を判断する手掛かりになり、一般的に公務員や医師などは有利とされています。
但し一点気を付けないと行けないのは、公務員や医師は分譲賃貸マンションの販売業者からの巧みな営業により投資用マンションを買わされている事が多く、その場合は余程自己資金が無い限り、住宅ローンの審査はほぼほぼ謝絶となってしまうので注意が必要です。
以前は転職で勤続年数が短くなるのは不利といわれていましたが、最近は1年以上であれば、問題にならない金融機関もあります。
転職直後でも3ヶ月程度経過していれば、雇用契約書や直近の給与明細の確認で審査を行ってくれる金融機関もありますし、キャリアに継続性があるかを重視して判断する金融機関もあります。
金融機関により審査の基準は異なり、借入をする人が同一人物でも金融機関の違いにより審査の可否や条件が変わることも多々あります。
そのため、メガバンクやネット銀行など複数の金融機関に申し込むことにより、より確実に借入先を確保できる場合があります。
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