· 

マンションの価格は今後も上昇する

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行なっている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

マンションの建築費が上昇していると日経新聞でつい最近とりあげられていましたが、2024年6月24日の日経新聞の一面に今度はマンションの工期が3割長くなっているとの記事が掲載されていました。

 

主な理由はコロナ禍で多くの高齢の職人が一足先に引退したこと等による人手不足が大きい要因ですが、今後は更に工期が延びる可能性があります。

 

その大きな理由は2024年4月から始まった時間外労働の上限規制(残業規制改定)です。

 

この残業規制改定では36協定を締結していても、原則として月45時間、年360時間、特別条項でも月80時間、年720時間以下に時間外労働を抑えないといけません。

 

いわゆる「働き方改革」です。

 

マンションは「土地代(取得費含む)+建築費+金利」の三大要素に販売経費をのせ、更に開発業者の利益を加えることにより販売価格が決まります。

 

建築費には原材料費、人件費、搬送費、保険料などが入りますが、工期が延びれば、その分金利もかかります。

 

いままでは長くゼロ金利が続いていたため、金利が非常に低く抑えられており、工期が長い大型マンションであっても金利負担は低かったのですが、今後は金利ある時代が遅かれ早かれ必ずやってきます。

 

私が建設会社で働いていた20年程前まではマンションの工期は「階数+3ヶ月」で計算していましたが、今は安全を見て「階数+10ヶ月」としているようです。

 

人出不足に拍車がかかる残業規制に加え、金利有る時代に突入しつつあり、今までは金利を低くみていましたが、大型案件では、建築の工期が延びている分も含めて、今後は金利の上昇をリスクを考慮せざるを得ない状況と言えます。

 

私が建設会社で建築営業をしていた20年以上前は大手デベロッパーとの請負工事の金額は道路付けもよく、比較的工事が行いやすい標準的な物件で延床面積当たり坪75万円~90万円程度でした。

 

2年から3年くらい前でも坪120万円でも厳しいということを聞いていましたが、最近確認すると、どんどん建築費が上昇しており、「どれくらいか?」と聞かれても「怖くて言えなえい。」との事。

 

更に、以前は見積書を出してから見積書の有効期限は3ヶ月程度だったのに、今は、直ぐに請負契約を決めてもらわないとどんどん建築費があがっていくので、決済が長引くと工事を逆にお断りするというのが現状だと建設会社の営業マンはいっていました。

 

以前は建設会社への請負代金の支払は契約時10%、着工時10%、竣工時80%と発注者側に有利でしたが、今は契約時30%、着工時30%、竣工時40%が当たり前になっているようなので、更にデベロッパー側の金利負担は増えています。

 

建設会社の営業マンは、まさに「言い値」で数年先まで営業しなくても仕事が入ってくるので「無理して仕事を取る必要は無い」とまで言われているようです。

マンションは好立地のみ新築が供給される 

建築費の高騰、工期の長期化、金利の上昇という三重苦に加え、都心部や主要ターミナル駅の好立地には空き地が既にほとんど無い状態で、新しく建物を建設するには、既存の古くなった建物を解体する必要がありますが、建物の解体もアスベスト規制があるため、解体費用が高くなっています。

 

また土地をまとめるには、多額の費用と労力がかかるため、土地代も上昇傾向にあります。

 

私が建設会社に勤めていた頃から分譲マンションは工事の発注件数が多い分、デベロッパーの発注価格が厳しく、また、竣工後の保守メンテナンスやアフターサービスは、賃貸マンションのようにクレーム等の対応は基本オーナー(地主)のみで済むものでありません。

 

分譲マンションの場合はクレームのあった住民一人一人に対応する必要があり、これらを含めると薄利又は赤字となる場合も多く、工事部門からはあまり好まれる仕事ではなかったというのが実情です。

 

しかし、今後は、急速に進む人口減少により、新築物件も減少していく可能性があり、数の勝負ではなくなる公算が高く、そうなると建設会社もマンションの工事でもしっかり利益を出す必要があり、その分、建築費が上昇する可能性があります。

 

これらを考慮すると、2024年4月18日に公表された不動産経済研究所の首都圏2023年の新築分譲マンションの動向によると、首都圏の平均価格が7,566万円(65.73㎡)、東京23区では1億464万円(64.95㎡)となっており、ファミリータイプのマンションでも7,000万円以上の売出価格が設定できないエリアは、土地代がほとんどタダに近いような場所で無い限り、今後は新築マンションが建つ可能性はほとんどなくなるのではないでしょうか?

穴場的なマンションはあるのか? 

このような状況下ではやはり中古マンションに注目が集まります。

 

2000年前後までは、マンションは新築で購入して一旦入居したら2割下がると言われていましたが、今は下がるどころか、ぐんぐん上昇しています。

 

特に、2008年以降から2013年頃までに建設されたマンションの価格は2倍近くまで上昇しています。

 

2007年のサブプライムローン、2008年のリーマンショック前夜は、多くの新興デベリッパーが倒産し、マンションの売れ行きもその頃は悪く、好立地でグレードの高いマンションが今考えれば破格の価格帯で販売されていました。

 

特にタワマンは2008年以降から急激に内廊下タイプが増加し、高級感を出す仕様になっています。

 

これらのマンションは既に価格が2倍近くまで上昇していますが、暫くは価格は上がっても下がることはないと考えます。

 

逆に気を付けないといけないのは2000年前後に建設されたタワマンです。

 

これらのタワマンもご多分に漏れず、価格は上昇していますが、マンションの形状が外廊下式でマンションの内側が吹き抜けになっており、高級感に欠ける物件も多く、価格の上昇には限度があると思います。

 

人口が急激に減少していく中でも利便性の高い駅から徒歩7分以内のマンションは資産価値が高く、維持される物件だと考えます。

 

また、江戸時代の藩邸や大名の下屋敷があった場所や、現在、大使館があるエリア、大きな公園に近いエリアも価格は維持される可能性が極めて高いものと思われます。

 

マンションは究極立地が全てなので、表参道や麻布、青山、代官山、神宮前、恵比寿などの極めて資産価値が高いエリアの旧耐震マンションも狙い目ですが、これらの物件は、キャッシュで購入して賃貸に出せるような余裕のある富裕層向けとなります。

 

マンションは最終的には物理的そして機能的劣化により取り壊されるので、いつになるかわからない建替えまで、保有し、更に建替え費用までキャッシュで出せる方でないと、難しいかと思います。

 

あと、これはギャンブルに近いかもしれませんが、神奈川県内の最寄り駅がターミナル駅の丘陵地帯のマンションです。

 

あくまでも一例ですが、東急東横線の日吉駅からバス便になりますが、川崎市高津区の蟹ヶ谷(かにがや)エリアがそれに当たります。

 

このエリアは元住吉駅と日吉駅の中間にある丘陵地帯で中原区井田とも隣接しているエリアです。

 

横浜市港北区と川崎市高津区の区境が尾根のトップとなっており、ここから見た武蔵小杉のタワマン群は圧巻です。

 

隣接の港北区下田町は整備された戸建て群が形成されているため、日吉駅までのバス便は小型車両ですが比較的本数が多く出ているため、通勤はそれ程苦にはならないと思います。

 

バスで10分から15分程度の距離です。

 

なお、車で通勤する方であれば全く通期に支障は無いです。

 

アップダウンがかなり激しいエリアですが、マンションが複数棟あり、スーパーも1キロ圏内にあり、溝の口にも出れるバス便もあります。

 

このエリアがなぜ穴場かと言うと、1990年代に建設された60㎡前後のファミリータイプのリノベ済中古マンションが2,500万円前後で購入できるからです。

 

先述したように、このエリアはアップダウンが激しいエリアのため、造成工事に多額の費用がかかります。

 

恐らく私がゼネコン時代の建築費で換算しても坪120万円を超えるような地形のため、今新築物件を建設したら、工事費だけで60㎡の部屋でも3,600万円はくだらないはずであり、新築の販売価格は6,000万円をかるく超える価格帯になると思われます。

 

日吉駅から徒歩10分以内で同様のマンション4,000万円~5,200万円程度で現在販売されているので約半分の価格で物件が購入できることになります。

 

実家が近くにある、通勤エリアが近い、車利用なので駅までの距離は関係ない、など、特定の要素がいつくかある人で、購入資金をあまり出せない人であれば検討の余地があるかもしれません。

 

但し、これが、人口減少が著しいエリアであれば、検討の余地はありません。

 

あくまでも最寄駅が慶応大学のキャンパスもある東急東横線の日吉駅だからこその一例でした。