渋谷区で主として中古の分譲マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
中古住宅を検討する際にマンションや戸建て住宅にかかわらず、欠かせないのがリフォームです。
クロスの貼り換えなどの最低限のリフォームから間取りの変更を含む大掛かりなリフォームまでご自身のイメージやご予算にあわせてリフォームする内容をいろいろと検討できるのが中古住宅購入のメリットの一つでもありまた悩ましい事項と言えます。
悩ましいというのは住宅ローンを利用する際に、住宅本体は住宅ローンの対象となりますが、リフォーム費用まで住宅ローンの対象としてくれる金融機関はまだまだ多い訳ではなく、多くの人がリフォーム費用については自己資金を用意するか別途金利が高いリフォームローンの借入をしなければならない点です。
住宅ローンはその使い道がマイホームの取得とそれに付随する諸費用に限定されます。
そのため、物件の契約と同時にリフォームの見積書と請負契約を締結が必要となります。
これらを同時に行うのは非常に煩雑な作業となるため、先述したようにリフォーム部分は自己資金を使ってやる方が多くなります。
せっかくマイホームを手に入れたのであれば綺麗なお部屋の状態で入居したいというのが、多くの方が思う感情です。
これに対応して急成長しているのが、不動産会社が中古物件を買い取ったうえでリノベーションを行い、エンドユーザーのために販売するという手法です。
リノベ済物件を販売している不動産会社を買取再販業者と言い、この手法で販売される物件をリノベ済物件と言います。
現在、都区部で売り出されている物件の2割近くがこのリノベ済物件となっています。
リノベ済物件の多くは築20年以上経過した中古物件が主流となっています。
以前からある買取再販業者では上場しているイーグランドやインテリックスなどが有名で、他に急成長しているのはグローバルベイスやエフステージなどで、三菱地所レジデンスもこの分野で急成長を遂げています。
多くは都内の物件が中心ですが、最大手の一角を占めるレジデンシャル不動産は、埼玉県や千葉県の商業都市及びそお近郊の物件で買取再販事業を展開しており、他の再販業者とは違った路線で事業を展開しています。
また東急リバブルやオークラヤ住宅など大手仲介会社もリノベ済物件の売り出しに力を入れています。
さて、本題からだいぶそれてしまいましたが、リフォームした物件は将来売りに出した際には、価格が高くなるのでしょうか?
自分で行ったリフォームは売却価格は変わらない
中古住宅を購入して自分自信が住むために行ったリフォームは、基本的に将来の売却価格に影響を及ぼすことは基本ありません。
例えば、最新かつ最上級モデルのシステムキッチンを入れたとしても、10年以上経過してしまうと、当時としては最上級モデルだったかもしれませんが、売却時点では使い古した、ただの中古のキッチンという評価しかされず、大半の方が交換されてしまいます。
ユニットバスの交換は高額なので、ためらう方も多いですが、次に多いのがトイレの交換です。
トイレや油が染み込んキッチンや劣化した洗面台の鏡、クロスの張替えがリフォームの中心となりますが、前所有者の生活感が残る部分を交換することが多いので、これらは自分が売却する時も同様であり、売却価格に変化はおきません。
家そのものの耐用年数は技術の向上とともに長くなっていますが、住宅設備や部分的なリフォームについては想定される耐用年数は思ったよりも短いため、将来高く売るために高級モデルを選択するというのは正しい判断とは言えません。
もちろんご自身が快適に暮らすために選択するのであれば問題ありません。
住宅は一生に一度か二度しか無い大きな買い物と言われていますが、クロスや住宅設備はあくまでも消耗品にすぎません。
但し、外壁・屋根の修繕や塗装工事などは、適切に行われていない物件よりも、しっかりと耐用年数を考慮して行われている物件の方が評価は高くなります。
中古マンションが中古の戸建てよりも高く評価される理由は、長期修繕計画を基に適切な工事とその修繕履歴が残っているのも大きな要因のひとつとなります。
マンションは管理会社に委託をしているため、プロが適格に修繕計画及び実行を行うことが出来ますが、戸建てでは、なかなかそうはいきません。
室内のリフォームはあくまでもご自身が快適に暮らすためのものであり、室内の設備等はあくまでも消耗品であり、将来の売却を見越して行うものではないのです。
但し、例外として、リフォーム専門会社で本格的に行ったリノベーションの物件の中には、リノベ費用も上回る価格で売却できる場合も稀にですがあります。
不動産は確率論の世界で万人が好む物件が最も売却しやすい物件ですが、同時に、世界に一つしか無いので、その物件を気にってくれて購入してくれる人が一人いれば良いのです。
私のお客様で1千万円以上かけて、リノベした物件は、都心の人気エリアの物件で中古マンションの価格がじわじわ上がり始めていた時期でもあり、5年程度で売却し、お住み替えになりましたが、物件を購入した費用とリノベーションした費用と売買にかかる仲介手数料も含めた諸経費の総額をカバーして更に上回る価格で売却することが出来ました。
物件購入時からリノベーションまで当初から私がかかわり、とてもお洒落に仕上がった物件でしたので、私は確信をもってかなり強気の価格設定をしたのも功を奏した結果がでて、とてもラッキーな事例でしたが、横引き配管まで全て一新してフルリノベーションした事、居住期間が5年と比較的短く室内が綺麗だった事、中古マンション市場が右肩上がりだったことなど複数のプラス要因があったからこその結果だったと言えるので、このような例は稀な事例となります。
基本は将来の売却を見越したリフォームはナンセンスです。
売却時のリフォームは正しい選択か!?
中古住宅を売却する際に、ご自身でリフォームを行う方がいらっしゃいますがこのような場合は、相場よりも高い値段で売却することが出来るのでしょうか?
この判断は非常に難しいところですが、原則としてリフォームは売却価格にはあまり影響しないと考えるのが妥当だと感じます。
例えば、相場から判断して4,000万円の物件に400万円のリフォームを実施したとします。
この物件が物件価格4,000万円とリフォーム代を合計した4,400万円より高くは売れないと思います。
売る側の立場ではなく、逆に購入者側の立場で考えるとわかりやすいかもしれません。
4,000万円の物件でリフォームに約1割の400万円もかけるのであれば、自分好みのリフォームをした方が良いと考えるはずです。
但し、売却時のリフォームには例外があります。
一つはリフォームしないと誰も関心を寄せてくれないほど汚い状態の場合です。
例えば、ペットを飼育している家やタバコのヤニで汚れている家などは、綺麗にしないとそもそも買い手が見つからないため、リフォームせざるを得ません。
この場合は相場が4,000万円でも室内の状況が悪い分、相場価格よりも価格は低くなるので、400万円かけてリフォームして売り出すというのは一つの売却手法となります。
他の方法としては、リフォームをせずに、売主が値引きで対応というケースが最も多いように思います。
続いての例外は事業者による買取再販です。
買取再販業者は物件を市場価格よりも安く仕入れて、リフォームを実施し、利益を乗せて販売します。
従って表向きにはリフォームする分高く売れるように見えますが、買取再販業者が仕入れする物件は、何かしらの売却理由がある売主が多く、それらの物件を水面下で市場の相場よりもかなり安い価格で仕入れを行います。
昨今は、買取価格も同業他社との競合により、買取価格は上昇しており、厳しくなっているようですが、部材を大量に仕入れることや発注量を増やすことによりコストを抑えて、販売しています。
更に、再販買取業者の手掛けた物件が市場の相場よりも高くても販売できるのは、独自のアフターサービス基準を設けたり、保証期間を設定しているためで、一般の方がまねをしようとしても、マネが出来るものではありません。
三菱地所レジデンスでは、三菱地所レジデンスでリノベーションした物件を購入された方は、以前は新築マンションを購入した人しか入れなかったレジデンスクラブへの入会を可能にするなど、リノベ事業に力を入れています。
フルリノベで気を付けること
「新築マンションや新築注文住宅は高くて手が出せないけれど家づくりを楽しみたい。」「これから住む空間を快適にしたい。」「自分のライフスタイルにあった家づくりをしたい。」などと言った要望を叶える手段の一つとして、中古住宅購入時のリフォームは価格には現れない満足度・快適性をもたらすというプラスイスレスな側面があります。
弊社では資産価値が下がりにくい住宅購入をお勧めしていますが、多くの方が資産価値だけに注目して家を買うわけではありません。
弊社では自由設計による中古マンションの購入とリフォームのお手伝いをいくつもお手伝いさせて頂き、リフォームによる自己実現は思った以上に奥が深いと考えており、完成したリノベ物件に満足される多くの方を見てきました。
しかしながら、その一方で多くの方が、夢が膨らむあまり、予算を超えてしまう現状もまた見てきました。
予算を気にせずリフォームできる方であれば問題無いですが、多くの方には限度額があります。
夢が広がり、盛り上がる気持ちをグッと抑える意味でも、リフォーム費用は、「資産価値が上がる訳ではなく、消耗品に過ぎない」ということを忘れずに、冷静に検討することをお勧めします。
ご自身でリノベすることには先述したようにプライスレスの価値がありますが、費用も時間もかかるので、妥協点としてはリノベ済物件の購入もお勧め致します。
最近では、少し自由度があるリノベ済物件を販売している買取再販業者もあります。
また、リノベ済物件は圧倒的に中古マンションが多くなっています。
中古の戸建て物件は耐震性や外壁等の修理なども考慮する場合もあり、リノベ費用が膨大になる可能性が高いためです。
ご自身や家族のライフスタイル等も考慮して、ご自身によるリノベーションを考えたり、リノベ済物件を購入して理想の暮らしを実現してください。
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