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マンションの寿命はどれくらいなのか?

 主として渋谷区で中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

そもそもマンションの寿命は何年程度なのか、皆さんはご存知でしょうか?

 

日本で最初の鉄筋コンクリート造の集合住宅としては、財団法同潤会が大正末期から昭和初期に建設した同潤会アパートが有名です。

 

同潤会アパートは同潤会上野下アパートが2013年に取り壊され、一部外観が再現された例などはありますが現存している同潤会アパートは既にありません。

 

同潤会上野下アパートは1929年竣工なので築84年で取り壊されています。

 

私が内覧した経験がある物件で最古の物件は1965年6月築の文京区春日2丁目にある川口アパートメントです。

 

今年で築59年の本物件はヴィンテージマンションとしても有名で、管理もしっかり行われているものの、やはり漏水などは頻繁に起きているようで、3年ほど前に内覧した際には建て替えか?存続か?管理組合で話し合いが続けられている様でした。 

 

この川口アパートメントの維持費用は非常に高く、部屋により金額は異なりますが、管理費の㎡単価は約650円~750円、修繕積立金は480円~550円程度とかなり高くなっています。

 

70㎡程度のお部屋で毎月10万円近い管理費と修繕積立金がかかるので、お金に余裕がある人でないと購入できません。

 

また、別の渋谷区にある築45年のマンションでは上水の本管から漏水して1階の店舗が水浸しになってしまったケースも見ていますが、建物本体に損傷は無いとのことで建て替え計画は無く、そのまま維持していくようです。


また実際に建て替えになったマンションの築年数は築50年前後から築60年程度が多くなっています。

 

中には築40年に満たない状態で取り壊された事例も複数ありますが、大規模再開発で他の建物と一緒に解体される場合や、都心の一等地で、容積率が余っており、建て替え後に十分な差益が見込める物件となっているため、物理的劣化や機能的劣化での取り壊しではなく、マンション所有者と開発業者との利害関係が一致して、利益先行での取り壊した事例が目立っているようです。

 

これらを考慮すると、管理体制の良し悪しにもよりますが、築60年程度は物理的劣化に耐えられるのではないでしょうか?

 

建築技術の進化やマンション管理に対する考え方が取り込まれている2008年前後以降で、実際に管理体制が良好な物件であれば築70年から100年程度まで持つかもしれません。

 

昨今では「マンションは管理を買え!」と言われるくらいに、管理が重要であり、適正な長期修繕計画の作成と着実な修繕工事の実行がマンションには欠かせないと言われています。

 

ただし、たとえしっかりと修繕していたとしても、やはり人がつくった物である以上、寿命があり、その寿命の考え方は大きく分けて「物理的劣化」と「機能的劣化」そして「社会的劣化」という考え方に大別され、マンションはいつか必ず取り壊されます。 

物理的劣化とは 

物理的劣化とは、建物や設備が経年に伴い劣化や損傷が生じることを言います。

 

具他的には、コンクリートの中性化に伴い、鉄筋が錆びて生じる爆裂やひび割れ、外壁タイルの浮きによる剥落、非常階段や手すり、避難用ハッチ等の鉄部の錆や腐食などが挙げられます。

 

また屋根の防水機能の劣化も重大な物理的劣化と言えます。

 

物理的劣化による耐久性能の劣化は建物自体の安全性が損なわれるため、適切な修繕計画と実際に修繕を行うことが非常に重要です。

機能的劣化 

機能的劣化とは主に設備系の劣化が代表的です。

 

排水設備の劣化やシャワー等の継ぎ目部分やホースの劣化による漏水トラブル、窓やサッシの防音性能や断熱性能の低さ、インターネット回線の容量不足などの劣化が挙げられます。

 

またこれは社会的劣化にも該当しますが、バリアフリー性能の低さや防犯性能の低さ、宅配ボックスの設置が無いなども、機能的劣化のひとつとして挙げられます。

 

こんご都内で建設される大規模マンションの場合は、宅配便のための荷捌き場の設置も義務付けされるようです。

社会的劣化

建物等には大きな経年劣化などが見られなくても、社会環境の変化により経済的な価値が低下する現象を社会的劣化と呼びます。

 

立地環境の変化や人々が求めるニーズの変化により建物が時代遅れになるといった現象です。

 

例えば人口減少による過疎化で鉄道路線が廃線になったエリア、近年の自然災害による浸水リスクが高まったエリア、更にクマが出没するようになって危険になってしまったエリアも挙げられるかもしれません。

 

機能的劣化でもお話しさせて頂きましたが、昨今は不在時の宅配便の再配達の手間が問題になっており、宅配ボックスは付ていて当たり前になっていたり、マンションでは防犯上の観点から監視カメラの設置や共連れ侵入を防ぐために、オートロックの二重化や、鍵が無いとエレベータが稼働しないなどのトリプルセキュリティシステムを導入している物件も増加しています。

 

これらの設備は都心部の高級マンションでは今後は一般化する可能性があり、これら機能を有していないマンションは時代から取り残される可能性があります。

 

更に大きな社会的リスクとしては耐震性の問題が挙げられます。

 

日本は地震大国であり、日本に住む以上地震のリスクは必ず考えなければならない事項でです。

 

2011年に発生した東日本大震災以降も、2016年に熊本地震、2018年北海道胆振(いぶり)東部地震、2024年能登半島地震と死者が出る地震が各地で発生しています。

 

国の対策としては、1981年6月以降に建築確認を取得した新耐震基準が地震に対して強いと言われています。

 

理由は、1981年以前のマンションでは、コンクリートの性能から鉄筋の量、施工法などが異なっているため、大きな地震に対する耐力が現行基準の建物に比べると低くなっています。

 

 

また木造住宅に関しては2000年6月に「基礎と柱の接合部分に金具の取り付け」「耐力壁のバンランスと配置」を定めた改正建築基準法が施行(現行耐震)され、その有効性が熊本地震で実証されています。

 

そのため、木造住宅は2001年以降に竣工した物件が地震に対してより安全性が高いとされているため、木造住宅選びは現行耐震以降の物件となる可能性があり、それより以前の物件は、中古住宅として売りに出しても、売れなくなる可能性があります。

 

耐震性が不足している物件(地震リスク)、エレベータが付いていない物件(高齢化リスク)なども社会的劣化の予備軍かもしれません。