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2024年日本の都市特性ランキング

渋谷区で中古マンションの売買仲介を中心に行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

前回は森記念財団から公表された日本の都市特性評価の2024年版の中から東京23区のランキングを2018年からの時系列でみましたので、今回は日本の地方都市のランキングにフォーカスしたいと思います。

 

日本の都市特性評価は、前回も同じ内容を記述させて頂いていますが、「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野に分け、その中で28指標グループを設定し、更にその28指標グループを構成する計87指標に細分化して分析し、都市特性を客観的に評価し、都市の強みや魅力を視覚化、更に定量データを使い都市戦略立案・検証に活用しやすいデータを公表しています。

 

ちなみに6分野の大項目に変更はありませんが、その他の細部の指標は時代に応じて変化しています。

 

この日本の都市特性評価は様々な角度から多角的に検証しているので、私たちのような不動産にかかわる仕事をしている人だけでなく、他分野の方やこれから不動産を購入したいと思っている多くの方々に見てもらいたいデータブックです。

 

今後日本は人口減少が本格化するなか、地方都市の多くが加速度的にシュリンクしていくものと思われます。

 

そのような中でも経済成長が可能、もしくは、現状を維持できるポテンシャルを持つ地方都市とはどのような場所で、どのような特徴があるのか、この日本の都市特性評価を読めば垣間見ることができるかもしれません。

 

詳細版は有料ですが、無料公開されているデータだけでも多くの情報を得ることができます。

 

森記念財団日本の都市特性評価2024はこちら

大阪は関西圏の雄、名古屋が急上昇、札幌市は年々ランクを下げる結果に!

大阪市は2021年から4年連続1位を獲得しています。

 

東京への一極集中が進む中でもやはり大阪市は西日本エリアの雄と言えます。

 

2025年4月からは大阪・関西万博が開催されるのに伴い、 観光客誘致活動やイベント開催が活発化しています。

 

2022年までは5位だった名古屋市ですが、2023年に3位に浮上、2024年には遂に2位まで上昇してきました。

 

名古屋市の強みは「研究・開発」と「交通・アクセス」で、「研究・開発」を構成する5指標のうち4指標が1位または2位となっています。

 

交通・アクセスでは、「都市外アクセス」のインターチェンジ数と、「移動の容易性」の自転車の利用のしやすさで2位であり、自動車交通の要衝という優位性に加え、都市内の自転車交通でも強みを発揮しました。

 

また、「生活・居住」が昨年の18位から1位に順位を上げ、「市民生活・福祉」の外国人住民の受入体制や、「育児・教育」の子どもの医療費支援などで高い評価を得たことが飛躍の大きな要因となっています。

 

一方ランクを落としているのが、福岡市と札幌市です。

 

福岡市がランキングを下げた要因は「環境」と「生活・居住」で、地価高騰によるマンション価格の上昇や物価高の影響が大きいものと思われます。

 

それ以外の経済・ビジネスでは「ビジネス環境」の特区制度認定数が昨年に続き1位、また、対事業所サービス従業者割合も5位と高評価を得ており、文化・交流の「交流実績」における国際会議・展示会開催件数でも大きく順位を伸ばしています。

 

研究・開発では、「研究開発成果」の論文投稿数で評価を上げており、大学が中核となっています。

 

札幌市は「文化・交流」や「研究・開発」では上位に食い込んでいますが、新千歳空港までのアクセスにある程度時間を要する点や、地価高騰によるマンション価格の高騰や物価高が足を引っ張っています。 

歴史あるエリアが上位に! 

高評価の地方都市のポイントは訪日外国人の増加の影響がかなり大きいと個人的には感じています。

その理由は

・新幹線の駅があること。

・歴史的に重みがあること。

という上記のいずれかに該当する場所であることが挙げられます。

 

京都市は訪日外国人にとって歴史的価値を感じる不動のエリアですが、2024年はコロナ禍が収束して1年が経過し、訪日外国人が戻った中で、金沢市、奈良市、鎌倉市、そして原爆の被爆地である広島市が順位を上げています。

 

金沢市は加賀100万石の前田家のお膝元で培った歴史的文化が凝縮されたエリアであり、鎌倉市は鎌倉時代の中心地で多くの名刹と海があり自然的な立地にも恵まれています。また、美味しい飲食店も数多くあり、小町通りや江ノ電は高い人気があります。

 

奈良市は奈良時代の中心地であり、やはり多くの名刹があるエリアで近年は特に観光を軸にした、「文化・交流」の発信に力を入れています。

 

神戸市は古くから中国や朝鮮との交流があった港町で鎖国政策をしていた徳川幕府が江戸時代末期に外国向けに開港した港町のひとつです。

 

仙台市は周りの市町村の人々が次々に移り住む東北一の大都市であり、2028年まで人口が増加すると予想されており、東北唯一の勝ち組的なエリアで、市営地下鉄もあり交通網が充実しています。

 

唯一、歴史的背景とは関係なく、8位にランキングしているつくば市は、「研究・開発」の強みに加えて、「経済・ビジネス」や「生活・居住」においても順位を伸ばしています。

 

筑波研究学園都市は、国の試験研究機関などを計画的に移転することにより東京の過密緩和を図るとともに、高水準の研究と教育を行うための拠点を形成することを目的に国家プロジェクトとして始動し、1980年に基礎が完成しました。

 

その後も開発が進み、現在では筑波大学やJAXAなど29の国等の研究・教育機関をはじめ、民間を合わせておよそ150の研究機関が立地し、1万人以上の研究者を有する、日本最大の研究開発拠点となっています。

 

そのためコロナ禍でもいち早くテレワークなどが普及、「ビジネス環境」を構成する3指標でスコアを伸ばし、フレキシブルワークスタイル実施率では5位と高評価となっています。

 

また、「生活・居住」では、「育児・教育」を構成する指標のうち、子どもの医療費支援や合計特殊出生率で大きくスコアを伸ばし、合計スコアを高める要因となっています。

 

それと最後になりますが、都市特性評価の2024年版で私が注目したのは「移動手段」に自転車による移動の評価が加わったことです。

 

近年日本でも急速に広まった、シェア自転車や電動キックボードによる移動手段の革命をいち早く取り入れている点が時代をしっかりとみていると感じました。

 

コロナ禍前にフィンランドを訪れた際に、いたるところで電動キックボードを利用している多くの人を見かけ、衝撃を受けましたが、日本でも現段階ではまだ都心中心部だけですが「街じゅうを駅前化するインフラをつくる」を合言葉に急速に電動キックボードの普及を推し進めている株式会社Luupなどのベンチャー企業も台頭してきており、今後ますます目が離せない分野と言えます。

 

※本内容は日本の都市特性ランキングに基づいて記載していますが、私の現地視察も加えた個人的な意見も多数含まれていますので予めご承知おきください。