渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
お客様と内覧にいった際に、よく質問を受けるのがこの部屋の大きさは何㎡ですか?というご質問です。
私はそもそもゼネコンに新入社員として入社し、建設現場や経理、営業など幅広い職種を経験してきており、民間建築営業の際には部屋の面積等は全て㎡表示で、ヘッドハンティングでファンドの専務になった際にはホテルや旅館の再生や新築物件を開発していたので、その時も部屋の面積は㎡表示でした。
そのため、独立して中古マンションや戸建ての仲介を初めて行った際に、部屋の面積表示のほとんどが何畳又は何帖という表示のみで㎡数の記載が無かったことに違和感を感じたことを今でも鮮明に覚えています。
近年の住宅(特にマンション)の間取りは和室自体が無いものも多く、またお客様も和室を敬遠される方も多い中で、なぜ洋室の広さも何帖という表示だけにするのか当時は疑問に思っていました。
確かに、2008年前後までのマンションはリビングの脇に和室があり、リビングと和室を襖で仕切ったタイプの物件が数多くあったので、マイホームをご購入される30代40代の大多数の方は和室がある家で育っていると考えれば納得できます。
和室の畳は一般的なサイズの畳ではない場合も多く、何畳表示が本当に正しいのか?と疑問に思うことも多々あります。
ただ、日本人にとって畳は文化そのもののため、畳で表示した方が合理的なのかもしれません。
また、慣れ親しんだ畳1枚分の広さ(縦180cm、横90cm)で部屋の大きさの目安とするのが最もわかりやすいのだととも感じています。
実は、不動産会社の販売図面に記載している畳(帖)表示には、しっかりとした基準が存在します。
その基準は不動産の公正な取引を定める「不動産公正取引協議会連合会」という組織で、1畳は1.62㎡以上と定められています。
以下 不動産取引協議会連合会の「不動産の表示に関する公正競争規約」参照
公正競争規約の第6章表示基準 第1節 物件の内容・取引条件等に係る表示基準 第15条(6)面積 14頁の(16)に
住宅の居室面積等の広さを畳数で表示する場合においては、畳1枚当たりの広さは1.62平方メートル(各室の壁芯面積を畳数で除した数値)以上の広さがあるという意味で用いること。
と記載されてます。
畳の大きさにはいつくもの種類があります
先述したように、不動産業界の取り決めでは1畳は1.62㎡以上と定められていますが、畳のサイズには実は、いろいろな種類があり、地域によって用いられるサイズが異なっています。
この不動産表示規約の取り決めでは、1畳=約1.62㎡以上で換算されます。
京間(本間・関西間)
畳のサイズで最も大きいのが京間(きょうま)で、本間(ほんま)や関西間(かんさいま)と呼ばれることもあります。
主に関西地方では京間が一般的で、一畳あたりの大きさは191cm x 95.5cm=1.82㎡になります。
六一間(広島間・安芸間)
六一間(ろくいちま)は畳の長辺が6尺1寸であることから名づけられたサイズで、一畳の大きさは185cm x 92.5cm=1.71㎡となっており、規格としてはマイナーで、中国地方の中でも瀬戸内海沿岸で使われので、広島間(ひろしまま)や安芸間(あきま)と呼ばれることもあります。
中京間(三六間)
中京間(ちゅうきょうま)とは、愛知県や岐阜県などの中京地域で使用されるサイズで182cm x 91cm=1.65㎡の畳です。
尺貫法では長辺が6尺、短辺が3尺であることから、三六間(さぶろくま)とも呼ばれ、福島県や岩手県などの東北地方の一部や北陸地方の一部、沖縄でも中京間が使用されます。
江戸間(五八間・関東間・田舎間)
江戸間(えどま)は畳のサイズとしては最も一般的な規格で、関東一帯、東北地方の一部、北海道で使用されるサイズで176cm x 87.8cm=1.54㎡。
長辺が5尺8寸であることから、五八間(ごはちま)と呼ばれたり、関東間(かんとうま)や田舎間(いなかま)とも呼ばれることもあります。
団地間(五六間・公団間)
団地間(だんちま)は名前の通り団地などの集合住宅で使用されます。
戦後の人口増加にあわせて、集合住宅の建築が急ピッチで進められた際に、よりコンパクトなサイズとして使用されました。
サイズは170cm x 85cm=1.44㎡の畳です。長いほうが5尺6寸であることから、五六間(ごろくま)とも呼ばれます。
先述したように公団住宅で使用されるため、公団間(こうだんま)といった呼び方をすることもあり、全国共通の大きさとなっています。
また、開発業者によっては、上記のエリアを問わず、自社の基準を全国統一で採用しているケースもあります。
住宅の面積表記は、坪数と平米数で表記されることが多いですが、坪数は尺モジュールを用いているため、一辺の長さは一間である1.82mで、畳2畳分が1坪の面積になります。
メーターモジュールの1グリットは「1m×1m=1㎡」、尺モジュールの1グリッドは「0.91m×0.91m=0.81㎡」(半畳)となり、尺モジュールの4グリット分が1坪となります。
尺モジュールとは、建物を設計するときの基本的な寸法で、 1尺=約30cmでとられた単位で、住宅の建設はには「尺モジュール」を採用されることが多かったのですが、最近では、1mでとられた単位の「メーターモジュール」を採用するケースが増えています。
また琉球畳がお洒落な畳として利用されることが多いですが、元来は、琉球畳は強度が強く、畳縁(たたみふち)がなくても加工可能な七島藺(しちとおい)と言われる植物を使った畳を指します。
現在はこの七島藺は高価でごく一部の地域でわずかしか生産されておらず、他の材料で製造した畳でも琉球畳という名称が一般的に使われています。
琉球畳の一般的なサイズは87.8cm×87.8cm=0.77㎡が多いですが、デザイン的な要素で使用されることが多いので、オーダーメイドで製造されます。
Coffee break
七島藺は、イ草とは違い、カヤツリグサ科の畳の材料です。約360年ほど前に、南西諸島のトカラ列島から持ち込まれたもので、現在日本で栽培する農家は大分県国東市の6件の農家のみとなっています。
畳表の主材料であるイ草は断面が丸いですが、七島藺の断面は三角形で表皮が厚く、1本の茎を2つに割いて使います。
曲げや摩耗、火にも強いのが特徴で1964年の東京オリンピックでは柔道の畳にも使用されました。
七島藺の畳の品質管理は厳しく、収穫した半分は名g差や太さがあわず、畳にならないと言われています。
国東市には七島藺産業の再生のために「くにさき七島藺振興会」という組織が活動しています。
2014年に公開された映画「蜩(ひぐらし)ノ記」では、七島藺で畳表や工芸品を作るシーンが七島藺を認知度を広めました。
「七島藺工房ななつむぎ」の工芸家である岩切千佳さんは、メディアなどで紹介され、豪華列車「ななつ星in九州」の車内で工芸体験の講師を務めたり、穂ぢのリゾートに照明器具を納入するなどして七島藺の普及に努めています。
単純に畳の枚数で部屋の広さを決めつけるのは危険!?
先ほどからお話ししている通り、不動産表示の規制では1畳は縦180cm×横90cm=1.62㎡以上と定められているので、不動産会社は基本、部屋を広く見せたいので1畳は1.62㎡として計算していると言って良いと思います。
気を付けないと行けないのはこの不動産表示の規定の広さに満たない江戸間や団地間です。
例えば、公団の物件で畳が6畳敷いてあった場合、団地間であれば1畳は170cm x 85cmなので畳が6枚の部屋であれば8.67㎡となり、不動産表示の規制で換算すると8.67㎡÷1.62㎡=5.3畳にしかなりません。
畳が6畳敷いてあるからと言って、このお部屋は㎡換算すると9.72㎡になります。と言ってしまいがちですが、実際には8.67㎡しかないという事になるので注意が必要です。
また物件の販売図面には畳と帖と両方の言葉が利用されていますが、同じ意味です。
畳という漢字はどうしても和室というイメージが日本人には潜在的にあるので、和室でも洋室でも利用しやすい帖という言葉が使われ、認知度が広まったとも言われています。
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