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住宅ローンの差別化が加速(その2)

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今日は一部の金融機関で取り扱いが始まっているペアローン連生団信についてお話ししたいと思います。

 

共働きの世帯数の増加や都心部の特にマンション価格の高騰により、夫婦2人で住宅ローンを組むペアローンが急増しています。

 

ペアローンでは夫婦それぞれが借り入れをすることができるため、多額の借り入れができ、また、ローン契約が2本に分かれるため、返済期間や金利タイプなどの返済プランを別々に設定でき、また、住宅ローン控除を別々に受けられるといった多くのメリットがあります。

 

その一方で、返済リスクも増大するという負の側面もあります。

 

例えば極端な例を挙げれば、二人が同じ年収500万円だった場合、おひとりだと3,500万円の物件しかローンを組めないため、諦めていた倍の金額の7,000万円のタワマンを購入することができるようになります。

 

実際にペアローンを組む率が高いのは世帯総年収が1,000万円以上の世帯で、所得が高い程都心部の高額物件へのこだわりが強く、ペアローンの利用率が高くなる傾向になっています。

 

このように、ここまで極端なローンの組み方をされる方は、万一の際の貯金が潤沢にあったり、高年収の方しかいませんが、いずれにしろ、奥様の産休や病気、不慮の事故等で一方が働けなくなるリスクは存在します。

 

おひとりでローンを組まれた際も、債務の返済が滞るリスクは同じですが、借入額が大きくなればなるほど、リスクは増大します。

 

また、元来のペアローン契約では「配偶者が死亡しても、もう片方の住宅ローン返済が残ってしまう」というリスク(仕組み)となっており、お子様がいた場合など、片親になって一人で仕事と子育てなどの両立に直面し、万一収入が減少する場合には支払いが難しくなるケースも考えられます。

 

この点に着目して、ペアローンのリスクを解消する「ペアローン連生団信」の取り扱いをPayPay銀行が2024年6月から始めました。

 

これ以降、みずほ銀行やりそな銀行が相次いで導入し、auじぶん銀行も2025年1月に導入を予定しています。

 

ちなみに団信とは団体信用生命保険の略称です。

 

団信は、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態となった場合に、生命保険会社がローン契約者に代わってローン残高相当分の保険金を金融機関に支払う保険制度です。

 

金融機関を保険契約者および保険金受取人、住宅ローン契約者を被保険者とする契約形態で、一般団信の保険料は住宅ローンの金利に含まれており、契約者が別途負担する必要はありません。

 

ちなみに、一般団信で保証されるのは死亡か又はかなり重症な後遺症で意識が戻らない場合や四肢を損失した場合など極めて重症な場合でないと適用されないので注意が必要です。

ペアローン連生団信の仕組みと上乗せ金利 

先述したように、ペアローンは一つの物件を購入するのに夫婦一人づつがローン契約を行います。

 

そのため、ご夫婦のどちらかに万一のことがあった際に、債務を免除されるのは契約者本人の債務のみとなります。

 

一方、ペアローン連生団信はペアローンでお借入れ後、お二人の内、どちらかに万一のことがあった場合にどちらも住宅ローン残高が0円になる団信です。

 

これまでのペアローンにおける団信と違い、ペアローン連生団信では保険事故が発生していない、もう一方の配偶者の住宅ローン返済分も含めて100%の保障があります。

 

そのため、「例えば、夫が亡くなっても遺された妻の返済分が残る」ことはありません。

 

また、ペアローン連生団信の契約内容によっては、余命宣告や重度のがんで回復の見込みがないと判断されたときに、たとえ生存中であっても100%の住宅ローン保障を受けられるという保障内容もあります。

 

このように余命半年や治療の見込みがないなど、重大な宣告を受けた場合でもペアローン連生団信によって、住宅ローンが免除され、マイホームを手放すことを回避できるのは、配偶者の不幸に直面し、悲しみに打ちひしがれている時にこのような救済措置を受けられることは、当事者にとってはとてもありがたいことです。

 

なお、住宅ローンの保障を受けた後に奇跡的に回復した場合、団信の保険金を返還する必要はありません。

 

更に、死亡・高度障害時の保障があるペアローン連生団信のほかに、がんと診断確定されたときや失業状態となったときの保障もカバーするプランもあります。

 

ペアローンでは、配偶者が病気や失業などで返済不能状態になると、もう一方の配偶者は連帯保証によって債務を抱えることになるので、がん以外の病気や失業といった「死亡以外のリスク」にも備えたい場合は、リスクに適応したペアローン連生団信プランを選ぶことも可能です。

 

特にがんのリスクが高まる60歳以降も住宅ローン返済が続く場合は、がん保障付きペアローン連生団信で備えるのもリスクヘッジの一つの手段となります。

 

ただし、特約を加えた契約の場合、住宅ローンの借入金利が上乗せされ、毎月のローン返済額が上がります。

 

そのため、返済額の負担と保障の必要性を照らし合わせ、夫婦のライフプランに適した団信プランを選ぶようにした方が良いと思います。

 

また、その際にあわせて自分たちが入っている生命保険等の見直しも検討した方が良いかもしれません。

 

また、制度上、使いにくい点もいくつかあります。

 

ペアローンを申し込んでペアローン連生団信を選択した場合、夫婦で同じペアローン連生団信に加入することになるため、別々の団信プランに申し込むことはできません。

 

また、過去にご夫婦のいずれか1人でもガンと確定診断を受けたことがある場合はペアローン連生団信を申込むことは出来ません。

 

ただし、甲状腺ガンや前立腺ガンなど、一部のガンでは申し込める場合があります。

 

詳しくは団体信用生命保険のWeb申込画面等でご確認してみてください。

 

ペアローン連生団信にワイド団信はありません。

 

ペアローン連生団信の保険期間は、ペアローンを契約している住宅ローンの返済期間と同じ期間になるため、住宅ローンを完済すると団信の契約は終了します。

 

そのため、どちらか一方のローンが完済した場合、ローンが残っている被保険者の団信契約は残ります。

 

更に、ペアローン連生団信の大きなリスク要因として、ペアのいずれかの方が保険金の支払事由に該当し、保険金が支払われた場合、相手の方のローン返済に充当された金額が一時所得とみなされて、所得税の課税対象となる場合が想定されます。

 

まだ多くの残債が残っている場合に、万一の事態が生じた場合には、確定申告を行い、数百万円単位の納税が必要になるケースも考えられます。

 

税金を滞納すると延滞税がとても高いので、いずれにしろ、もしもの時の貯蓄は必ずしておくべきだと思います。

 

但し、この商品が出たばかりなので、今後税務の取扱い等が変わる場合等があるので、そのような事態に直面又はそのような事態が起きる可能性が生じた場合には、税務署や税理士等へ確認する必要があります。