渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
中古マンションを売買する際の目安になるリセールバリュー(再販価値)の上昇が、東京都心で際立っています。
その理由は、円安で金利が安いうえに治安も良く、都市基盤が安定しており、高品質の不動産が都心部に数多くあり資産価値が長期にわたり維持・拡大されるとして、国内の富裕層の実需よりも、海外の不動産投資家や富裕層のマネーが日本に注目することによりここまで上昇してきたと言われています。
また上位の顔ぶれは、ここ約10年で様変わりし、再開発が一巡したエリアや郊外は姿を消しました。
これは私の持論ですが不動産の価値を決める究極は、「時間をお金で買える立地の不動産はその価値が高く評価される」と言うことです。
千代田区、中央区、港区の都心3区は、日本の政財界の中心部である霞が関や大手町へのアクセスに優れ、また世界の主要都市へ向かう羽田空港や成田空港へのアクセスにも優れています。
特に森ビルが開発した麻布台ヒルズの大規模開発により虎ノ門から麻布台のエリアは日本トップクラスのオフィスビル、レジデンンス、商業施設が集う街となり、日本トップクラス不動の千代田区番町エリアのマンションをも凌駕する勢いとなっています。
勿論、国内の主要都市である、名古屋や大阪へは新幹線、福岡、札幌、沖縄へは羽田空港からのアクセスが容易です。
世界でもニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、北京、上海、香港、クアラルンプールなどは、いずれも世界の主要都市へのアクセスに優れるため、これらの都市の中で空港へのアクセスが容易なエリアは価格が突出して高くなっています。
これが世界を代表する資産価値が高いエリアの共通です。
これに、例えば、徒歩圏に大きな公園などがあれば文句なしの超一等地となります。
不動産の資産価値を決める一般的な要因
では、一般的に、そもそも不動産の資産価値は、どのような要因で決まるのかを見ていきたいと思います。
不動産の資産価値を決める要素は一つではなく、様々な要因によって決まります。
一般的な要因は以下のようなものです。
①地理的要因は不動産にとって非常に重要です。交通の利便性、学校や商業施設などの近さ、景観などが価値に影響を与え
ます。通勤や通学のための主に鉄道利用のためのアクセスの良さは不変である一方で、最近は特に郊外の物件において
は、駅近よりも大規模商業施設へのアクセスの良さが重要視されるようになってきています。
②物件の種類(住宅、商業、産業など)と、その状態(築年数や修繕の状態)は、価値に大きな影響を与えます。新築か築
年数が経過しているか、改装されているかどうか、設備や建物の構造などは価格に影響を与えます。
③市場の需要と供給のバランスは価値に大きな影響を与えます。需要が高く供給が限られている地域では、価格が上昇しま
す。都心部や鉄道のターミナル駅、急行や特急が停車する駅がその典型的な例となります。
④将来性のある地域や大きく発展する可能性があるエリア、インフラ整備などの状況も価値に影響を与えます。
⑤不動産市場における金利、税制、規制などの環境ばかりでなく為替も価値に大きな影響を与えます。日本は相対的に欧米
諸国や中国などよりも金利が低く、多額の融資を必要とする不動産投資にとっては魅力的な環境下にあり、価格を上昇さ
せる一因となっています。
不動産の価値はこれらの要因が複合的に絡み合い、価格が形成されていきます。また、メディア等による専門家の発言や市場動向などの公表により価格に影響が出る場合もあります。
特に昔から、借入金利と投資利回りの差(スプレッド)が日本は諸外国と比較して大きいと言われてきましたが、これに近年の円安が海外投資家による日本の不動産への投資に拍車をかける大きな要因となっています。
東京23区内のリセールバリューが高い区
購入した商品を中古市場で売却する際に得られる利益をリセールバリュー(再販価値)と呼びます。中古流通が活発な自動車や不動産でよく用いる概念で、商品の資産価値を映し指標として出てきます。
スポーツカーのフェラーリの創設者であるエンツォ・フェラーリは「フェラーリを欲しい顧客が10人いたら、9台しか車を作るな。これが市場価値を高める」といったそうですが、まさにその通りで、需要と供給のバランスを的確に理解している名言と言えます。
不動産調査会社の東京カンテイ(東京都品川区)が、2014年以降の中古マンションの再販価値を地域ごとにまとめ、築10年程度の中古マンションの平均希望売り出し価格を2023年の新築時の販売価格と比べて算出しています。
1位 東京都港区 188.4% ※新築時のおよそ1.9倍の価格で売りに出されていることを示しています。
2位 東京都千代田区 187.1%
3位 東京都渋谷区 180.5%
4位 東京都中央区 162.7%
5位 京都市中京区 160.8%
6位 大阪市北区 160.1%
7位 東京都文京区 159.6%
8位 東京都品川区 158.7%
9位 沖縄県那覇市 158.3%
10位 東京都新宿区 156.3%
となっており、上位10エリア中7エリアを東京23区が占めた結果となっています。
都心部の中古マンション相場を押し上げるのは、海外の不動産投資家や富裕層となり、人口流入が続き中長期で安定かつ高い資産性が見込まれるとして買い意欲が旺盛となっています。
2024年1月の都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)の平均希望売り出し価格は、70平方メートル当たり1億1,138万円となっています。
不動産投資家はマンション購入の意思決定が早く、都心部で優良物件を見つけると、すぐさまキャッシュで一括購入し、数カ月後に価格を上乗せして売却するようなケースもあるようです。
私も先日、中央線沿線で1億円台前半の中古マンションを銀行の事前審査が通過した弊社お客様から満額で購入申込を頂いたにもかかわらず、全額キャッシュの法人に買い負けてしまっています。
都心23区以外のエリアのリセールバリューの高いエリア
ここ約10年の間で再販価値上位の顔ぶれは大きく変わりました!
2014年の1位は京都市中京区で、再販価値は132.5%でした。2位が京都市下京区で123.0%、
都心部は上位10エリア中4エリアと、当時の顔ぶれは現在より多彩だったといえまが、およそ10年がたち、マネーが集まる都心部に押し出されるかたちで地方や郊外の多くが上位から姿を消しました。
1位 京都市中京区 132.5%
2位 京都市下京区 123.0%
3位 東京都港区 110.8%
4位 東京都中央区 110.8%
5位 東京都千代田区110.5%
6位 京都市左京区 110.2%
7位 東京都品川区 108.5%
8位 川崎市中原区 108.0%
9位 千葉県浦安市 107.9%
10位 東京都武蔵野市107.3%
京都市の再販価値が高いのは、建物規制の影響が強く、京都市は景観、歴史的建造物や住環境の保全などを目的に建築物の高さを他の都市と比較して厳しく規制してきました。
そのため、京都市内のマンションの供給には限りがあるため、既存物件の価値は相対的に高くなります。
少し、余談となってしまいますが、京都市は2023年4月から一部で建物規制を緩和したため、タワーマンションの開発が進むかに注目が集まっています。
マンション供給が増えれば、既存物件の価値に下押し圧力がかかるかもしれません。
また、一方で東京都国立市で法的規制をクリアして建設し引き渡し直前に、建物周辺への影響(富士山が見えなくなる)を理由に解体が決まった「グランドメゾン国立富士見通り」の悪影響が懸念されます。
真意はわかりませんが事業者の積水ハウスが企業としての評判を優先して、解体を決めたのかもしれませんが、自治体が一旦許可を出した物件で、このような失態をしでかすと、これが前例となり、特に京都のように歴史的建造物などが数多く立ち並ぶエリアでは、行政がOKしたからといって、簡単にタワマンが京都市内に建つかは疑問です。
京都でのマンションの市場動向が、今後どのように進んでいくかは予断を許さない状況と言えます。
沖縄県那覇市では温暖な気候と美しい自然、宮古島の2019年3月の下地島空港の開業による国際線の就航などにより、外国人旅行客のための宿泊施設やリタイア組の移住による需要の急拡大により、マンションの価格が高騰しています。
リーセルバリューの上位にはランキングしていませんが、ニセコも同様で、良質なパウダースノーを求めて、オーストラリア人を筆頭として、欧米の方の旺盛な需要により不動産の価格が高騰して、これが波及して富良野、本州では白馬エリアも不動産価格が高騰していますが、これらの地域では一般的な分譲マンションはそもそも供給がなく、コンドミニアムが主流となっています。
但し、需要と供給のバランスの観点から見れば、需要がひっ迫しており、供給が非常に限られているエリアもリセールバリューが高い典型的な例と言えます。
話を元に戻します。
川崎市や浦安市は街の再開発が一巡した結果、以前ほどの人気はなくなっており、再開発前に比べて、今後の街の成長性はあまり期待できないため、海外勢や富裕層のほか、実需層からも選ばれにくくなっているようです。
浦安地区を例に挙げると、東京駅から新浦安駅までは京葉線快速の直通でわずか20分程度の立地で、駅前にはイオンやピーコック、また、駅から距離を置いた場所にはイトーヨーカドーやOKストア、教育施設としては明海大学、隣の舞浜駅にはディズニーリゾートがあり、非常に成熟した街となっています。
海辺沿いの明海(あけみ)、日の出、高洲(たかす)地区のマンションは、とても開放的で、日本ではなく、まるでサンサンと太陽光が降り注ぐロサンゼルスのような雰囲気を持つマンションも多いのですが、駅までは10分超えのマンションも多く、バス便が主流となるため、交通利便性にやや問題があります。
更に新たな開発を行う余地が限られているため、街の成長性が見込めない点がリセールバリューが上がらない要因と言えるかもしれません。
中古マンションとして売却する際に強気の価格設定ができる要素は
◆立地の優位性
◆交通の利便性
◆生活の利便性
◆将来性
の4点が重要視されます。
そのため、交通の利便性、将来性が欠ける浦安市や川崎市などは、再販価値が低下傾向になっていると想定されます。
いずれにせよ、予算との兼ね合いが大きなネックになると思いますが、リセールバリューを重視される方が、これからマンションを購入するのであれば、何より「立地」にこだわり、都心部でのご購入を検討してください。
本ブログでは何度も別の機会でお話していますが、不動産業界では不動産の価値を決める要因は 、日本では「1に立地で2に立地、3、4が無くて5に立地」、米国では「Location Location Location!」です。
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