渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
東京西部地域の多摩ニュータウンの南側を東西に貫く、南多摩尾根幹線道路は通称「尾根幹線」と呼ばれ、距離にして約17kmあり、調布市と町田市を結ぶ道路となっています。
東側は鶴川街道と接続して多摩南北道路を通じて埼玉方面への連絡道路となっており、西はリニア中央新幹線の橋本新駅方面につながるように、東京都町田市と神奈川県相模原市中央区との都県境にある町田街道に接続しています。
恐らく町田市にあるコストコ多摩境店に調布方面からお車で行ったことがある方であれば通ったことのある道路だと思います。
現在、相模原市方面から向かって唐木田駅近くの商業施設「ぐりーんうおーく多摩」のある交差点までが4車線道路になっており、その先の約9.5kmの区間は2車線道路が続いており、鶴川街道と接続する手前の稲城市では一部4車線となっています。
尾根幹線は多摩ニュータウンの開発にあわせて構想され、1969年に都市計画が決定され、既に半世紀以上がが経過していますが、大気汚染などの環境悪化を懸念する住民の激しい反対運動や、4車線が2km以上続くため、東京都環境影響評価条例に基づく計画段階環境影響評価の対象であったり、「東京における自然保護の回復に関する条例」に基づき指定された「連光寺・若葉台里山保全地域」があり、希少な貝類等の生息する湿地が確認されるなどして、計画が滞り、大半の区間が側道のみの2車線の区間が大半となり、道路の真ん中に広大な中央分離帯が残る状態となっています。
このような状態のため交通渋滞が頻繁に発生しており、そのため、渋滞の緩和や巨大地震等の災害時の緊急輸送路の確保の必要性から4車線化を求める声が活発化し、2015年に東京都が整備方針を定めました。
これに追随して多摩市では「多摩NT尾根幹線沿道まちづくりプラットホーム」を創設しています。
多摩NT尾根幹線沿道まちづくりプラットホームの役割
多摩NT尾根幹線沿道まちづくりプラットホームの会員には、カインズ、コストコホールセールジャパン、イオンモール、ニトリホールディングス、竹中工務店、大和ハウス工業、東京ガスなどが名を連ねています。
会員になっている商業施設を展開している企業の多くが尾根幹線沿線又は近くで店舗展開をしています。
また、個別のヒアリングでは、商業関係が27社、内、物流が15社、スポーツが14社、その他の施設としてキャンプ場・グランピング施設、情報通信産業、大学・教育関連の7社~9社から施設立地のポテンシャルがあると評価しています。
2024年度も多摩NT尾根幹線沿道まちづくりプラットホームで聞き取りを続け、年度末に多摩市の都市計画マスタープランに反映し、その後の2025年度以降に都市計画法上の用途地域を変更して、沿道への商業施設建設を可能とする予定です。
今後は商業施設などの誘致に向けて、沿道の団地や学校の移転が進むものと思われます。
多摩ニュータウンでは少子化の進展による小中学校の統廃合や老朽化した団地の移転が進んでおり、主な敷地としては、旧南永山小学校約2.6ヘクタール、UR永山団地志約3.9ヘクタール、都営諏訪団地約2.8ヘクタールがあり、あわせて約9.3ヘクタールの開発可能な土地が生まれます。
多摩ニュータウンは高度経済成長期に、人口の流入が激しかったですが、近年は、駅周辺は分譲マンションの建設などにより住人の流入が起きている一方で、駅からバス便になるエリアについては、住人の高齢化や若い働き盛りの世帯がより利便性の高い都心部へ移住するなどにより、子育て世帯が減少し、街の活気が失われつつありました。
コロナ禍で郊外に位置する緑豊かな住環境は再評価を受けましたが、コロナが収束し現在、大きな流れとしては、住民の高齢化と少子化は再び加速しており、この流れを尾根幹線の4車線化を起爆剤として、街を再度活性化させたいという多摩市の強い想いがあるようです。
尾根幹線の4車線化に伴い商業施設や物流施設が新たに建設された場合は、さらなる交通渋滞や騒音、住宅地への車の侵入が増加するという懸念がありますが、近年の働く世帯の大きな行動パターンとして、住むのは駅近のマンションや戸建てで、「週末は郊外の大型ショピングセンターで買いだめ」という流れが定着してきており、京王線の駅を中心に形成された街が再び活性化するには、尾根幹線が京王線と並ぶ新たな交通の軸となり、住人だけでなく、そこに雇用が生まれ、昼間の人口が相対的に増えれば、運行が減っている路線バスの再構築などにより再び駅から離れたエリアまで街が活性化する可能性が残されています。
コメントをお書きください