渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
積水ハウスグループの2024年度第2四半期経営計画説明書によると2024年度の第2四半期の1棟当たりの平均請負金額が5,184万円となり初の5,000万円超えになりました。
建築面積が136.3㎡なので㎡単価は約38万円、坪単価は約125万7千円となります。
10年前あれば、鉄筋コンクリート造の高級分譲マンションの建築コストと同じくらいなので、信じられないくらいの価格上昇となっています。
積水ハウスは注文住宅業界では断トツの高い建築費で有名ですが、次のハイクラスである大和ハウス工業で4,900万円、住友林業、一条工務店などでも1棟当たりの建築費が4,000万円を超える価格帯になっているようです。
弊社はミサワホームとお付き合いがあり、先週たまたま、担当者とお会いする機会があり、建築費を確認したところ、1年前は世田谷区で土地を購入して注文住宅を建てた場合、建築費が4,000万円を超える価格帯なので1億円以上の予算が無いと厳しいとの話でしたが、今は5,000万円超えも普通になっており、もはや、日本を代表する企業に勤めるパワーカップルか経営者、親からのある程度の資産を相続した人達でない限り、注文住宅は難しいとの話をしていました。
ただ、先細り感はあるものの、実需がそれなりにあり、しっかりと受注できているとのことでした。
日本国内には金融資産を1億円以上持つ富裕層が約149万世帯いると言われているので、この富裕層をどう取り込んでいくのかが、今後のハウスメーカーの生き残りをかけた戦略のカギになるものと思われます。
積水ハウスの戦略
積水ハウスの公表した資料をみると、概ね建物の延床面積は136㎡、約41坪程度で毎年推移しているので、この部分はあまり変化が見られないと思われます。
大きな戦略は価格帯を3つのレンジに分けて、より建築単価が高い層を狙っていくというものです。
下記のグラフを見る限り、いずれ価格帯が一番安い3,000万円未満のファーストレンジを特別枠としては残すものの、事実上廃止し、フォースレンジを新たに加え、例えば、7,000万円や8,000万円以上、場合によっては1億円以上の富裕層を狙ってくるかもしれません。
積水ハウスは3,000人近い1級建築士が在籍しており、上位1割程度をチーフアーキテクトとして認定しています。
これらの人材が、要求の高い富裕層を満足させるべく、よりお客様の要望に沿った自由度の高い設計を提案するため、必然的に開放性の高い天井などコストがかかる建物になり、サッシなどの建築材料も特注になるため建築費が上昇するという事になります。
また、積水ハウスはハウスメーカーの最大手であり、国が推奨するZEHにも力を入れており、ZEH比率が、91%となっています。
富裕層は温室効果ガス削減など地球環境に対する意識も高く、ZEHへの対応は標準装備といえるかもしれません。
ZEHとは、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味です。
要は、家庭で使うエネルギーと、太陽光発電などで発電するエネルギー相殺して、年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家を指します。
これを実現するためには、使用するエネルギーの量を大幅に減らすことが必要となりまが、暑さや寒さを耐え凌ぐというわけではありません。
ZEHは、家全体の断熱性や設備の効率化を高めることで、夏は涼しく冬は暖かいという快適な室内環境を維持しながら省エネルギー化をめざすというものです。
これら断熱性の高い建築資材なども建築コスト増の要因となります。
少し話がそれますが、ZEHが注目される背景には、住宅のエネルギー消費量の大きさという問題があります。
エネルギー消費といえば企業や工場などと思われがちですが、実は、日本国内の全エネルギー消費量の13.8%を住宅が占めています。
日本では東日本大震災以降、多くの原子力発電所が未だに停止中で、世界の温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP)による温室効果ガスの削減目標に対して日本は大幅な遅れが生じています。
住宅での省エネをより具体的に進めることができれば、全体のエネルギー消費量にも大きなインパクトがあります。
ハウスメーカーの戦略の多極化
積水ハウスが高級路線に傾斜する一方で、大和ハウス工業は設計の共通化による建売住宅事業にも力を入れる方針のようです。
高額物件だけでは棟数の確保が困難になる恐れがあり、協力業者や工業がある以上、ある一定規模を維持する責任があるとしています。
また、積水ハウスや大和ハウス工業は人口減少による市場縮小が避けられない日本市場のみでは企業の成長に限界が見えるため、今後も人口増が見込まれる米国などで大型M&Aを行い、次のステップも見据えつつ、国内にも注力していくという戦略をとっています。
住友林業は、3,500万円以下のカテゴリーでもセミオーダー式の注文住宅や平屋の販売を強化しており、郊外に住む若者に家事の移動を最小限に抑えることが可能な平屋が好調とのことです。
私もここ半年ほどの間に郊外の平屋建の中古物件の案内をいくつかしており、一人暮らしの年配の高齢者や30代の女性にも人気があると実感していますが、建物の状態が良い平屋建ての物件が非常に少ないとうのが現状です。
一方で10棟以上ある開発物件では試験的に1棟だけ平屋建ての新築があるという所もあり、各社徐々に平屋建てに注目している感があります。
特にご高齢で膝などに痛みを抱えている方は平屋建てが必須とのことで、実際に中古の平屋をご購入して頂きました。
一方で、飯田産業グループやオープンハウスは建売を中心に超ローコスト建築で市場の一翼を担っています。
各社は人口減少に伴い市場が急速にシュリンクしていく中で、生き残りをかけて奮闘しています。
最近の大きな流れとしては、セキュリティ対策や築年数が経過していてもか価格が落ちずらいマンションの方が人気が高いですが、価格が高くなり過ぎたため、新築戸建てを検討する方が実際に増えていると実感していますが、闇バイトによる急速な治安の悪化により、戸建てはセキュリティ上無理とする方も、同時に増えており、このセキュリティ対策をいかに施していくかが、今後の戸建の販売にも大きな影響を及ぼしていくのではないか?と思っています。
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