渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
マンションを購入する際、多くの方が立地や価格、間取りなどに注目しますが、実はそれだけではない、重要なチェックポイントがあります。
それは「長期修繕計画書と修繕履歴書」をチェックすることです。
修繕計画書を通じて、マンションの将来の姿や、住まいとしての質を見極めることができ、また修繕履歴は、実際に行なった修繕工事の記録であり、長期修繕計画書通りに、修繕工事が行われているかをチェックしたり、その後の修繕計画の見直しのためにも、とても重要な書類となります。
では、なぜ長期修繕計画書と修繕履歴書が重要なのか、そしてどのようにして、その質を判断すれば良いのかを見ていきたいと思います。
修繕積立金とは、マンションの共有部分の長期的な修繕やメンテナンスに充てるために住民(組合員)が毎月支払う費用です。
新築時の修繕積立基金は非常に安く設定されているケースがほとんどです。
その変わり、購入時に修繕積立基金という名目で、まとまったお金(数十万円)を支払い、1回目の大規模修繕工事ためにプールしておくお金です。
修繕積立金の徴収方法は、長期修繕計画書に基づき、修繕工事に必要と予想される修繕金額を均等に割って、新築分譲時から一定額を徴収する「均等積立方式」と、新築当初は修繕積立金の金額を少なくしておき、段階的に増額していく「段階増額積立方式」の二通があります。
先述したように、多くの新築分譲マンションでは、購入者の当初の負担が軽く見える「段階増額積立方式」を採用しています。
物件の価格が数千万円又は1億円以上する中で、諸経費もまとめて借り入れる場合は、諸経費の項目は注意が散漫になりがちな一方で、物件購入後に始まる住宅ローンの返済は毎月発生する事項なので、見方がシビアになります。
金利が上昇することや修繕積立金が将来上昇することは頭の片隅では理解しいるものの、実際にそのような事が起こるのは先のことなので、今見えるものに、どうしても集中してしまいます。
新築マンションの購入時に、ローンを含めた毎月かかる修繕積立金や管理費の総額は安い方が、売り出し価格が高額であっても、毎月の住居に支払う総額費用が安ければ、その時点で非常に魅力的に映るので、販売する側にとっては非常にアピ-ルしやすと言えます。
中古マンションを購入する際にも、当然ながら長期修繕計画書は非常に重要な資料となります。
先述したように、多くのマンションが「段階増額積立方式」を採用しているのですが、築15年や築30年といった大規模修繕工事が終わった翌年や数年後に金額が大幅に上昇するような計画書を作成していることが多いです。
中古マンションは大規模修繕工事が終わった頃が、マンションの外観やエントランス等の共用部分の見栄えも良く、また、修繕積立金が値上げになる前なので売り出しが比較的多くなる傾向にあります。
この際に、重要事項等調査報告書や長期修繕計画書に記載されている修繕積立金の値上げの時期や有無、過去に行われた修繕履歴と長期修繕計画書に記載された計画と実際に工事が行われた部分の整合性のチェックなどをしておかないと、数年後に毎月の住居の総支払額が大幅にアップして生活が苦しくなってしまうといった恐れが生じる可能性があります。
修繕積立金上昇の主な要因
修繕積立金は、マンションの価値を長年にわたって維持し、快適な居住環境を保ち続けるために不可欠な費用です。
近年、修繕積立金が値上がりする例が格段に増加しており、金額も毎月1万円以上あがるケースも散見されます。
修繕積立金が上昇する理由はいくつかありますが、最大の原因は、建築コストの急上昇にあります。
コロナ以降、団塊世代の職人の多くがリタイアし、更に、働き方改革による一人当たりの労働時間の減少による深刻な人手不足と物価高による建築資材や輸送費の高騰です。
このようなコストの上昇は、直接的に修繕積立金の増額を引き起こしています。
また、建物の経年劣化は避けられず、修繕の必要性は時間とともに増大していきます。
建物が古くなるにつれて、より頻繁に、より高額な修繕が必要になります。
例えば、築30年を超えるマンションでは、当初の計画では想定されなかった大規模な修繕や法令改正や機能劣化による設備の新たな設置などが必要となることがあります。
地震や台風などの自然災害による被害は、地球温暖化とともに確実にその危険性は高まっています。
想定外の建物の損傷が発生した場合、その修繕費用を賄うために積立金を増額しなければならないケースもあります。
更に、新しい建築技術や材料の採用により、よりコストが当初の想定よりもかかる場合があります。
これはある意味、表裏一体なのですが、新しい建築技術や新素材の採用は、長期的にはコスト削減や耐久性の向上につながります。
上記の理由から長期修繕計画書は、少なくも1回目の大規模工事が終わった後に計画を見直すことが重要で、社会情勢にあわせた計画変更を行わないと「絵に描いた餅」になってしまう可能性があります。
マンションを販売する側の事情
マンション購入時に見落としがちなのが、長期的な居住の快適さに大きく影響を与える修繕積立金です。
経済情勢が変わらないのであれば、毎月同じ額の積み立てで問題無いのですが、実際にはそう簡単にはいかない背景があります。
その理由の一つが、マンションディベロッパー側の販売戦略にあります。
先述したように、多くの場合、新築マンションの販売価格を魅力的に見せるため、初期の修繕積立金を意図的に低く設定します。
これは、購入者の毎月のローンを含めた居住費用の負担を軽減し、販売価格を高く保つための営業戦略です。
マンションディベロッパーは、新築マンションを売る際に、「修繕積立金の額は組合設立当初の管理組合の総会で住民(組合員)が決定する」と説明しますが、実際は、組合は設立されたばかりなので、予めマンションデベロッパー側で用意された長期修繕計画書に基づいた修繕積立金でほぼ100%決まることになります。
このように、マンションデベロッパー側が設定した初期の低価格の修繕積立金が将来的に、組合員に予想外の負担をもたらす可能性があるというのは、あまり知られていないマンション購入時の真実の一部です。
唯一、例外をあげるのであれば、コーポラティブハウスです。
コーポラティブハウスは、有志が集まって(管理準備組合)土地の取得からマンションの設計から工事の発注まで、マンションコーディネーターのサポートや筋書きはあるものの、管理準備組合員の中には設計士やゼネコン、管理会社の社員などの専門家も多く、自分たちで決めていきます。
次に中古マンション選びの際のポイントをお話しします。
中古マンションを選ぶ際には、そのマンションの管理組合がどのように修繕積立金を管理しているかを確認することが重要です。
実際に、マンションを購入する際には、売り手側の仲介業者から、重要事項等調査報告書や長期修繕計画書を取得してその内容を確認することしか出来ない場合が多いのですが、中には、修繕計画書を見直したことをわかるようにしている管理組合もあります。
築15年以下のマンションでは、まず長期修繕計画の見直しを行っている例は非常に少ないですが、築20年以上を経過しているマンションで長期修繕計画書の見直しを行っていればある意味合格点が付くと思います。
実際の例ですが元住吉にある元住吉マンションは1975年築49年のマンションで、管理形態は全部委託ではなく、一部委託をしている管理組合です。
弊社のお客様は非常に物件自体は気に入っていたのですが、築年数が45年(当時の時点)という点が気になり、購入を躊躇されていたのですが、耐震性の問題や修繕計画を見直した際の経緯や長期を見据えたマンションの将来性を理事長自らがわざわざお時間を作ってくださり、マンションの長所だけでなく、問題点や改善すべき事項まで丁寧に説明して頂いたのです。
その結果、弊社のお客様は安心して物件購入の決断をし、リノベ後には、仲介が終わっているにもかかわらず、リノベ後の完成したお部屋を見せて頂き、とても良いお取り引きをさせて頂いたことを今でも鮮明に覚えています。
これはある意味特殊な事例かもしれませんがな、このような管理機能がしっかりしている管理組合は、将来的な大きな負担を避けるために、適時に積立金の見直しを行っています。
再度のお話となってしまいますが、中古マンションのご購入時には、長期修繕計画を確認し、将来的な修繕積立金の増額が計画されているかどうかをチェックすることが重要であり、また実際に予定通り修繕が行われているのかを確認することが重要です。
これにより、修繕積立金が数年後に予定通りアップしたとしても、日々の生活に支障が出ないか?等について事前にチェックすることが可能となります。
長期的な視点でマンションの価値と居住の快適性を求めるのであれば、これらの点をしっかり理解し、購入前に長期修繕計画書や重要事項等調査報告書を確認することが非常に重要になります。
また、場合によっては現地の管理人さんが、管理組合や理事長の人柄等を教えてくれることもあります。
修繕積立金の適切な管理は、マンションの価値を長期にわたって保つ上で極めて重要です。
購入前に長期修繕計画書や重要事項等調査報告書等をしっかりと確認し、将来にわたって快適なマンションライフを送るための準備を忘れないようにしておきましょう。
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