渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
東京都以外の神奈川県、埼玉県、千葉県の東京都の周辺の県や地方都市の中古マンション相場の勢いに陰りが見えてきています。
不動産調査会社の東京カンテイの公表によると、神奈川県、埼玉県、千葉県の中古マンションの平均希望売出価格は、季節変動要因を抑えた前年同月比で見た場合、2023年11月から2024年8月までマイナスが続いています。
専有面積70㎡換算で、2024年8月は
神奈川県が前年同月比 0.4%安の3,646万円
埼玉県が前年同月比 3.2%安の2,916万円
千葉県がが前年同月比 3.4%安の2,679万円
となっています。
各県の主要駅周辺の物件は需要があるものの、離れると状況が悪くなっているようです。
埼玉県で言えば「大宮駅」周辺の物件が2024年9月末で見ると前年比17.5%高となっていますが、隣の駅の「さいたま新都心駅」は3.3%安となっています。
神奈川県で言えば「横浜駅」周辺は前年比12.2%高となっていますが、「桜木町駅」は2.9%安、「関内駅」は2.4%安となっています。
東京都心部のマンションの高騰が続く中で、それに追随する形で周辺エリアも強気の価格で売り出しており、実際に値段が上昇してきましたが、2023年に入ってからは、神奈川県で3,500万円超え、埼玉県や千葉県では3,000万円近辺になると、価格の上昇が鈍り始め、2023年11月には3県揃って前年比でマイナスに転じています。
好立地以外は、買い手を探すのが厳しい状況になりつつあります。
さいたま新都心駅は駅前に大規模商業施設があり、さいたまスーパーアリーナもある一大エリアにも拘らず値段が下がりだしたというのは少し驚きです。
同様に、桜木町駅や関内駅についても山側は治安風紀等に問題があるものの、ベイサイドエリアは商業施設に限らず、歴史的な風情のある建物とその街並みも人気であり、タワマンは軒並み1億円を超える物件も多数あるのでこちらも値段が下落傾向にあるのは驚きです。
いずれもよくご案内に行くエリアで、肌感覚のイメ-ジで言うと、さいた新都市エリアで2000年以降の物件が7,000万円前後、馬車道のタワマンの中高層階が軒並み1億円前後以上という価格帯は、さすがに高すぎると思っていたので、ある意味売り出し価格が下がったことは納得がいきます。
ただし、両エリアとも、ポテンシャルが高いエリアなので、ずっど下落する訳ではなく、適正な価格調整が入れば、それ以上の下落は無いのではないか?と感じています。
地方都市の中古マンションも下落傾向
全国の地方都市でも、市況に変化が表れているようです。
先述した不動産調査会社の東京カンテイによると、昨年中古マンションが下落した地域は5県しかなかったのに対し、今年は福島県や愛知県、山形県など昨年の3倍にあたる全国15県でやや下落、又は、下落に転じています。
周辺地域の人口を吸収し続け、東北では一人勝ちしていると言われている仙台市内でもエリアによっては変調が起きているようです。
仙台駅東口に海に向かって広がる仙台市宮城野区エリアの中古の高層マンションの例では、2024年の夏場は3,000万円台前半だったファミリー向けの物件が数か月ほどで、1割ほど引き下げられており、角部屋の優良物件でも買い手がつきにくい状況のようです。
同区では2024年9月の平均売出価格が専有面積70㎡換算で2,260万円となっており、前年比で4%下落しています。
2024年9月は47都道府県のうち23都道府県が、やや上昇傾向、又は、上昇傾向でしたが、前年同月比と比較すと6も減少しています。
一方でやや下落傾向、又は、やや下落傾向は、宮城県や埼玉県など7県となり2増加しています。
横ばいで足踏みだったのは9となっています。
これまで東京に引っ張られる形で、地方も売り出し価格が上昇し、成約価格も上昇してきましたが、多くのエリアで息切れ気味になっています。
下落の主な要因
東京周辺の神奈川県、埼玉県、千葉県や地方のファミリー向け中古マンションの下落の主な要因は以下の3つです。
一つ目は、東京都心以外のエリアは、所得水準がそれ程高い訳ではなく、相場が高くなり過ぎた結果、実際に購入する実需の方が手をだせなくなってしまったことです。
それに加え、中古マンションの価格がそれだけ上昇すると、新築マンションや建売住宅とも競合することになり、本来新築よりも価格がリーズナブルな点が魅力であった中古マンションの魅力がそもそも薄れることになります。
二つ目が、今後の金利の動向です。
2024年3月に日銀がマイナス金利を解除したことにより住宅ローンの変動金利がわずかですが上昇に転じています。
これは消費者にとってはかなり大きなインパクトであり、今後もさらに上昇していく可能性もあり、超低金利に慣れてしまった人々のマイホーム購入のマインドに水を差す形となっています。
三つ目は、物価高です。
大企業に勤める人達の給料は、政府や経団連などの取り組みもあり、確実に上昇していますが、日本で働く勤労世帯は中小企業に勤める人達が多く、賃上げがインフレを上回っていないのが実情です。
食料品や生活消費財などの生活必需品の価格の上昇が1年以上続いていますが、一向に収まる気配がなく、資金的な余裕がなくなっている人が増えていることが要因です。
最近は物価高や円安の恩恵を受けた外国人旅行客の増加により、ホテルや旅館、外食費が高く、旅行なども手控える人が多くなり、海外旅行並び国内旅行も日本人の利用者は頭打ちになっています。
このような状況下では、高くなった中古マンションなど、とても買える状況ではないと考えている人も増加しています。
2023年の日本の出生者数は約72.7万人、死亡者数は約157.6万人で、約84.8万人人口が減少しています。
婚姻件数は年約47.4万組で年々減少しており、子供が減り、婚姻件数も減れば、住宅を購入する人は必然的に減り続け、亡くなる人が多くなればなるほど、売りに出される家は増加していきます。
今後は、東京都心部、ターミナル駅、政令指定都市や地方の新幹線停車駅や政府主導で開発がすすめられた筑波研究学園都市、世界トップクラスの研究施設が整備されている東京大学柏地区キャンパスのある柏の葉キャンパス駅周辺、新交通システム芳賀・宇都宮TRL(LIGHT RAIL TRANSIT)が新たに開業した宇都宮市など何から特徴のある街など一部の好立地エリアの駅近マンションを除いては徐々に中古マンションの価格は下落に転じていくものと思われます。
バブル期と同様に、最後に価格が上昇したエリアが、最初に下落をはじめ、徐々にその周辺が下がっていくと思われます。
2024年5月時点で日本人の人口は約1.2億人ですが、このままの状態が続くと15年程度で日本人の人口が1割減る計算となります。
こうなると中古マンションの上位20%が上昇、又は、緩やかに上昇、50%近くが現状、又は、緩やかな下落、残りの20%は値段がつかない、というような時代に突入するかもしれません。
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