渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
コロナ禍後に加速する路線バスの運転手不足と赤字路線の大幅増加に加え、路線バス2024年問題がクローズアップされています。
働き方改革関連法により、長時間労働が心身共にあたえる健康の阻害や過労死に至るといった長時間労働問題を見直し、ワーク・ライフ・バランスを改善することなどを目的として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定され、上場企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から、既に適用が始まっています。
ただし、自動車運転の業務については、その労働環境の特殊性を考慮して、2024年4月から施行が開始されました。
自動車運転の業務には、バス・タクシー・トラックの職業ドライバーの業務が含まれており、路線バスだけでなく、トラック業界でも、大きな問題として、様々な対応が迫られ、トラックのより大型化やトレーラー化による運送効率の改善、または、鉄道による輸送、競合他社との共同輸送など実際に、様々な対応が進んでいます。
本来であればこの改正は、人手不足に悩む交通事業者及び労働者にとっては望ましい改正であり、運輸業界が魅力ある職場として再生し、より働きやすくなることを狙ったもののはずでした。
ところが、人手不足で限られた運転者を、路線バスのように決められたダイヤに配置するためには、現状ではどうしても1人の運転者に長時間勤務を強いざるを得ないという現状があります。
今回の改正により、年間3,380時間だった運転手の労働時間の上限が、2024年4月から3,300時間に引き下げられ、さらに退勤から次の出勤までの休息時間(勤務間インターバルの確保)は8時間以上とされていたのが、11時間を基本に最低9時間以上となっています。
特に路線バスにおいては、朝のピーク時に多くの需要が集中するため、早朝から多くの運転者を出勤させ、通勤・通学の需要にあわせる必要がある一方で、夕方にもピークが存在するので、必然的に運転者の拘束時間は長くなってしまいます。
このような状況で、路線バスを維持させるには、始発終バスの繰り下げと繰り上げ、減便、利用者が少ない路線や系統については廃止路線にするなどを行わないと今後は立ち行かないと思われます。
日本は、23区内の路線バスの乗車賃全区間一律料金や通販サイトなどで配達料無料に慣れてしまい、輸送に対して、適正な対価を払う認識に欠けており、燃料の高騰も追い打ちをかけている今、この意識を変えないと、路線バスが消滅してしまう可能性は、もはや現実的になりつつあります。
実際に今年の春には、横浜市営バスが367便を減便、23区内の足立区でも一部の路線が廃止になっています。
また、全国にある路線バス事業者の約7割は赤字を抱えており、国土交通省は代替のきかないバス路線や、離島行きの船や飛行機を確保するため、毎年発生する経費と収益の差額(赤字)の2分の1を補助している状況です。
ちなみにバスは複数市町村にまたがり、1日3回以上運行して15~150人の利用者を見込む路線が対象となっています。
赤字の根本的な原因は利用者の減少
国では、赤字路線のバスに対して、補助金などをだして、支援していますが、そもそも収益が悪化した根本的な要因は利用者が少ない(ニーズがない)ということです。
お住まい探しのお手伝いをしていると、「静かで、物件価格が安いので場合によってはバス利用でも構わない」という方や、「仕事は車通勤なので、駅距離はあまり気にしていません」という方がおられます。
もちろん、ご自身がお住まいになる場所なので、精神的に安らぐ場所であるといことはとても重要な要素なので、このような考え方を否定するつもりは全くないのですが、資産価値という観点で考えると、決して賢いマイホームの選び方とは言えません。
家の価値は、「購入した価格」ではなく、「自分売却した価格-自分が購入した価格」の差額です。
この差額がプラスであれば資産価値が高く、マイナスになるほど資産価値は低くなります。
もちろん、家は不動産とは言え、老朽化しますし、内装は傷むし、設備はやがて交換が必要になるので、自分が売却する際の価格は自分が購入した価格よりも安くなるので、この計算式は基本マイナスになりますが、資産価値が高い家はこのマイナスがわずか又は同等、場合によってはプラスになる場合もあります。
さらに、厳密に言えば、家を購入しない場合は親と同居しない限り家賃が発生するので、そのエリアの家賃相当分と売却までに居住した年数と毎年支払う固都税を自分売却した価格に上乗せした場合、最低でも同じ金額以上プラスにならないと、資産価値は実質的にマイナスとなり、極論、家を購入して赤字(損)を出したことになります。
家の取引価格は需要と供給で決まりますから、自分がマイホームを購入した後、唯一の公共交通手段であるバスが廃止路線になってしまえば、家の価値は当然ながら下がってしまいます。
鉄道路線が廃止路線になるにはかなりハードルが高いですが、路線バスは先述したように、減便や廃止路線になる確率は非常に高くなっています。
価格を下げて売れるならまだ良いのですが、いくら下げても買い手がつかないということも十分ありえることです。
このような物件を購入してしまい、売却先が決まらない場合でも毎年固都税の支払が発生しますし、放置して物件が老朽化した場合には最悪、行政から解体の命令を受け、家が無くなった後の土地の固都税が6倍に跳ね上がり、まさに、負の不動産(負動産)となってしまいます。
マイホームをこれから買おうとしている人は、できればこのような買い方は避けた方がいいです。
節約のつもりで物件価格が安いものを買ったのに、結果的には高い買い物になってしまいます。
バス便でも例えば、吉祥寺駅から北にのびる吉祥寺通の青梅街道までの間の路線バスは朝の時間帯などは数分に1本の割合でバスが来るので全く問題は無いですが、既に、減便されていたり1時間に2本から3本程度しかバスが来ないようなバス便の家を持っている人は、人口が激減する前に、駅近くのコンパクトなマンションを買う等、資産の付け替えを考えた方が良いと思います。
実際の例としては、八王子駅南口からペデストリアンデッキで直結しているサザンスカイタワーの9階以上は総戸数390戸41階建ての分譲マンションで2010年に完成、八王子市役所の出張所、スーパーアルプスなど複数の商業店舗が入っており、この建物の中だけで生活することが可能で、出かける際も駅直結なので交通利便性がとても良く、八王子市やその近郊の自治体に住むバス便立地の地主や戸建ての所有者の中には、所有する不動産を売却して、このタワマンに住替えた人が相当総いると言われています。
ちなみに、サザンスカイタワーレジデンスの高層階の現在の成約価格は60㎡で約6,500万円程度、坪単価は約357万円程度となっています。
この価格帯は、京王線の千歳烏山駅(世田谷区)徒歩10分以内の同年代又は同年代よりも後に建設されたマンションとあまり変わらないくらいの価格帯となっています。
また、今日現在では売りに出されている物件はなく、売り物件が出ると早々と売れてしまう人気のマンションとなっています。
サザンスカイタワーレジデンスを購入し資産の付け替えをされた方はかなり先見性の目が合った人たちと言えるかもしれません。
最近では、レンタルの電動キックボードや自転車が市民権を得て、東京都心部では、移動手段の一部として定着しており、今後もますます需要が伸びてくると思いますが、利用者は40代くらいまでの比較的若い世代が中心となっています。
郊外のバス便利用地域に住む方の大半は高齢者となっており、この新しい次世代の交通手段を利用することはあまり想定できないので、現時点では、やはりバス便立地の家を購入するのは避けた方が良いでしょう。
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