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東京都におけるマンション管理状況届出制度

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

東京都は、分譲マンションの管理不全を予防し、適正な管理を促進するため、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」を平成31(2019)年3月に制定し、この条例に基づき、築年数の経過したマンションの管理組合からの管理状況に関する事項の届出、届け出た管理状況に応じた助言や専門家の派遣などの支援からなる「管理状況届出制度」を令和2年(2020年)4月から開始しています。

 

この条例を制定した背景は東京都において分譲マンションは、主要な居住形態として広く普及しており、都市や地域社会を構成する重要な要素となっている一方で、建物の老朽化と居住者の高齢化といった「二つの老い」が同時に進行しており、マンションの維持・管理や修繕が適切に行われず、外壁が落下するなど周辺にも悪影響を与える状態になった場合に周辺環境の悪化や人的被害など深刻な影響を及ぼす恐れがあり、このような状況を踏まえ、

 

①都や管理組合、事業者等の責務の明確化

 

②管理組合による管理状況の届出

 

③管理状況に応じた助言・支援等の実施

 

について規定しました。

 

またこの条例の目的については、「マンションに関わる方々の協力の下にマンションの管理の主体である管理組合に対して、行政が積極的に関わり、マンションの管理不全を予防し、適正な管理を促進して、マンションの居住者と周辺の住民との防災、防犯等における連携による地域社会の形成、マンションの環境性能の向上等の社会的な貢献を果たすことにより、良質なマンションストック及び良好な居住環境の形成並びにマンションの周辺における防災・防犯の確保及び衛生・環境への悪影響の防止を図り、都民生活の安定向上及び市街地環境の向上に寄与することを目的とする」としています。

 

届け出が必要なマンションは、昭和58(1983)年12月31日以前に新築されたマンションのうち、居住の用に供する独立部分が6戸以上のものとしているので、いわゆる旧耐震物件といわれるマンションになります。

 

該当するマンションの管理組合は、5年ごとに届出が必要となり、届出が不要のマンションであっても、都が、管理不全の兆候があると判断した場合には、その管理組合は、管理状況を届け出なければならないことになっています。

 

また届出の対象になっていないマンションであっても、任意に届出を行うことができると定められており、実質的には、ほぼ100%の旧耐震のマンションが該当することになります。

 

届出事項は

 

◆管理組合の運営体制の整備

◆管理規約の設定

◆総会の開催

◆管理費及び修繕積立金の額の設定

◆修繕の計画的な実施などの管理状況に関する事項

◆マンションの概要(所在地・マンション名)及び連絡先

 

となっており、昭和56(1981)年5月31日以前に建築確認を受けたマンション(旧耐震物件)のみ、耐震化の状況に回答する必要があります。

 

とは言っても実際は旧耐震物件がほとんどなので、耐震化の状況に回答する必要があります。

 

この内容には耐震改修工事だけではなく、耐震診断実施の有無についてもチェックする項目があります。

 

それぞれの事項について、有無のチェックのほか、管理規約の最新改正年など簡単な数字の記入を行う形式となっており、添付資料等は必要ありません。

 

また届出方法は、インターネットからの管理状況届出システムへ路銀して入力するか、マンション所在地の区市町村の担当窓口へ郵送又は直接持参する方式となっています。

 

なおメールによる届出書の提出は受付していないので注意が必要です。

管理状況届出書の対象範囲の拡大を検討 

東京都では老朽するマンションが今後大幅に増加し、それに伴い管理不全のマンションも急増することを懸念して、管理状況届出書の届出対象を 築40年以上とすることを検討しています。

 

また、従来は任意項目だった長期修繕計画書の有無の明記を必須項目とし、新たな案では5年ごとに管理状況を届け出る必要があり、修繕積立金の額の根拠や見直し時期、積立方式などの届出の義務かも検討しています。

 

長期修繕計画書は管理会社が全部委託で管理を行っている総戸数30戸以上の新耐震基準以降のマンションであれば、ほぼほぼあるかと思いますが、中には作成していないマンション管理組合もあります。

 

特に総戸数が少なく、自主管理をしている管理組合にその兆候が見られます。

 

長期修繕計画書をベースに、区分所有者から毎月修繕積立金を徴収するので、長期修繕計画が無いと、必要な資金の目途をたてることができません。

 

長期修繕計画書の重要性については、かねてから言われており、フラット35を利用するには現在有効な20年以上の長期修繕計画書があることが融資条件の一つとなっています。

 

2023年3月時点での現行制度での管理状況届出書の届出対象のマンションは11,459棟あり、9割を超える10,440棟から届出が出されています。

 

2022年12月時点で東京都内の分譲マンションの総戸数は約197万戸あり、東京都の推計では2023年時点で新たな届け出の対象となる築40年以上のマンションは約42.8万戸あり、20年後には約3倍にあたる約117.7万戸まで増える見込みとなっています。

 

条例に関する問い合わせは 東京都住宅政策本部民間住宅部マンション課 TEL03-5320-4913

管理状況届出制度に関する問い合わせは 分譲マンション総合相談窓口  TEL03-6427-4900

分譲マンション総合相談窓口 (公財)東京都・防災まちづくりセンター TRL03-6427-4900