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都市計画道路有りの物件は購入しても良いのか

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

販売図面には様々な情報が記載されていますが、備考欄に「都市計画道路有あり」という記載されているものがあります。

 

なかな探しても良い物件が見つからず、良いと思う物件は予算オーバーしか見つからない、そんな中で希望の条件に合致し、値段も予算内に収まる物件でしたが、この物件の販売図面には「都市計画道路有り」と記載されています。

 

この物件を本当に買って良いのものなのでしょうか?

 

都市計画道路とは、都市計画法に基づき、位置や構造などを決定している道路で、都市計画施設の一つで、道路整備の他に、公園や緑地、上下水道施設など公共性の高い施設を建設して、人々の利便性の向上や豊かな空間をつくるための公共性の高い施設です。

 

都市計画道路には2種類の状態があり、道路を通すことが決まった「計画決定」の状態と、実際に計画に予算がついて事業が動き出した「事業決定」の状態です。

 

まず、「事業決定」の状態は、該当エリアの土地の収用(国や地方自治体による買取)や、立ち退き作業が既に始まっている段階なので、新しい建物を建築することができません。

 

よく緑のフェンスで囲まれた空き地が道路の脇に、数か所、又は、数十か所にわたってあれば、そのエリアはほぼ間違いなく事業決定され、そのエリアが立ち退き作業が始まっています。

 

空き地には都市計画道路である旨の看板も設置されているのですぐにわかると思います。

 

このようなところに建つ戸建てを購入したとしても、立ち退きの話が出てきますので、長期的な住まいには向きません。

 

一方で、「計画決定」の場合は少し勝手が違います。

 

都市計画道路が「計画決定」段階の場合、役所の許可を得る必要がありますが、近いの無い2階建てまでで、木造・鉄骨造、コンクリ-トブロック造など非堅個な建物(緩和措置で3階建て高さ10m以下まで)で取り壊しが比較容易な建物であれば建築することができます。

 

すぐに事業決定にならないのであれば、そのまま住み続けることも可能です。

 

では、「計画決定」から「事業決定」になるまでに、どれくらい時間がかかるのでしょうか?

 

これは、一概には判断できませんが、多くの計画道路は、昭和30年から昭和40年くらいにかけて計画されたまま、事業開始に至っていない状態のものも多く、役所に計画決定から事業決定になるのはいつでしょうか?

 

と確認しても「未定なのでわかりません。」という返答しか無いのが実情です。

 

そのため、不動産売買の際の重要事項説明の際には「敷地の一部が都市計画道路で計画決定されていますが、実際に事業決定され道路工事が始まるのはいつかわかりません。周囲をみてもわかるように当分の間は現状のままだと思います。」というような説明がなされます。

 

更に、雑談では、「実際、いつになるかわからないし、廃止になるかもしれません。」というような話になるので、あまり気にすることはないと考えるに至ります。

 

でも本当にそれでいいのでしょうか?

 

例えば、一部報道で「マッカーサー道路」とも呼ばれた環状第2号線なども、計画から約70年を経て、やっと開通に至りましたが結局は紆余曲折(この道路は当初の計画では道路幅が100mでしたが、1950年に計画変更が行われ実際には40mに縮小されています。)しながらも道路は完成しています。 

優先整備道路 

各市区町村では、同じ都市計画道路の中でも「優先整備道路」という指定をしているものがあります。

 

「優先整備道路」になっている場合には、まだ計画決定の段階であっても、いずれは事業決定の段階へ進む可能性が高い都市計画道路と言えます。

 

事業決定され、実際に立ち退きをしなければならない場合は、地方自治体や国による買い取りや代替地の用意などがされます。

 

購入を検討する物件が「都市計画道路」にかかっている場合には、敷地のどの程度が都市計画道路にかかっているのか、近隣の状況を見て、実際に計画がスタートするまでにどれくらい時間がかかりそうか(どれくらい住み続けられるのか)等を検討する必要があります。

 

先述したように、実際には、時期がいつになるかわからない都市計画道路が多いのが実情ですが、自分が購入を考えているエリアだけでなく、その該当する計画道路が通る他のエリアの状況も確認すれば、少しはyろい具体的な状況がわかるかもしれません。

 

事業決定がされた場合の地方自治体や国による買取額は「時価」とされています。

 

事業決定された時点で、不動産価格が購入した時よりも、値下がりしてしまっていては、大きな損となってしまいます。

 

購入を検討している物件に都市計画道路がある場合は、しっかりと資産価値を調査したうえで、近隣の状況など複合的な状況を踏まえ判断することが大切です。

 

都市計画道路は既存道路の幅員を拡張させる計画の場合が多いですが、片道2車線になる大きな道路となる計画の場合ですと、例え敷地の一部がかかっている場合でも、実際に道路が出来れば、車両の通行が大幅に増えて、騒音や振動、排気ガスによる空気汚染など生活に支障が出る可能性もあります。

 

購入を考えている敷地が都市計画道路の一部ではなく、直ぐそばの場合も同様です。

 

比較的閑静な住宅街だったのに、都市計画道路が開通したおかげで、「早朝深夜の大型トラックの通行量が増え、騒音に悩まされ、車の出し入れも難しくなり住みづらくなったのに、それにもかかわらず大きな道路に接道したために、土地の評価額が上がり、固都税が高くなり、更に売却しようにもなかなか売却できない。」といった嘘のような本当の話は実際に至るところで実例があります。

 

但し、人口が減少していき、地方自治体や国の財政もより厳しくなる中で、都市計画道路は廃止になる可能性も否定できません。

 

しかしながら、知らず知らずのうちに、着実に計画道路が事業決定され、しばらく通っていなかった道路がいつの間にか大きな道路になっていてびっくりしたと言ったことは、誰でも一度や二度は経験されたことがあると思います。

 

その点、地方自治体や国の実行力は侮れないと思います。

 

このようなことから都市計画道路が一部かかる土地や隣接地に都市計画道路がある場合は、基本、ご購入はあまりお薦め致しません。

 

但し、その計画道路の大きさや、購入を考えているのが戸建てかマンションかによっても対応は変わってきます。

 

閑静な環境を求める方で戸建てをご希望の場合であれば購入は避けるべきですが、マンションの場合は一概にはそうとは言切れません。

 

新しくできる都市計画道路は歩道と自転車の通行スペース別に設け、場合によっては植樹をするケースもあるので、それであれば敷地の一部を取られても、車が通行する部分とは一定の距離が確保され、今までとあまり住環境は変わらないという可能性もあります。

 

但し、敷地を一部計画道路で収用された場合は、マンションは既存不適格物件となり、将来建て替えした場合には、今の規模よりも建物が小さくなる可能性が高くなります。

 

既存不適格物件とは、建設当時は合法により建築された建物ですが、現在の法規制には適合していないという建物をいいます。

 

土地を収用された時点で地方自治体や国が買い取るのでお金は入ってくるのですが、その分マンションの評価は下がる可能性があります。

 

また、都市計画道路だけでなく、建物を建設する際の道路への接道条件や公道か私道かによっても、かなり状況は異なりますので、いずれにせよ、道路の調査は不動産をご購入するうえで、非常に大切なポイントです。