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平均給与から逆算したマンションの適正価格

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

今朝の日経新聞のインサイドアウト面で「遠のくアメリカンドリーム」という見出しで、アメリカンドリームの象徴だった持ち家が中間層の手に届かない高値の花になりつつあり、住宅価格が10年で2倍に跳ね上がり、慢性的な住宅不足とローン金利の高止まりが主な原因という内容の記事が掲載されていました。

 

日本も東京都心部だけを見れば同じ状況です。

 

10年でマンションの価格は2倍になり、まだまだ低いとは言え、変動金利の上昇に加え、建設業界では、団塊の世代が75歳を超えたことによる職人不足、内容は「労働者の技能不足」「新人が入社してもすぐにやめる」といった状態で日本もアメリカも共通の課題となっています。

 

アメリカは人口が増加しているのでなおさら、住宅不足と住宅の高騰は深刻のようです。

 

上記内容は日本のハウスメーカーが日本市場の縮小を見据えて、アメリカの戸建住宅市場に参入していることへの裏付けにもなります。

 

また、金利が足元では6%程度と高く、物件を買い替えた場合にローンを新しく組みなおす必要があり、新たに借り入れしたらとても払える金額ではなくなってしまうので、多くの人が売り渋りとなり、中古住宅の売買の流通量が激減し、在庫が枯渇しているのも、高騰の要因のひとつのようです。

 

都心部でも、現在、駅徒歩7分以内の質の良い中古マンションは枯渇しており、販売されるとすぐに売れていまう状況が続いています。

 

実際、弊社のお客様から買い付けを満額で頂きましたが、3物件続けて、いずれも現金の方に買われて負けてしまっています。

 

話を記事の内容に戻しますが、この記事の中で、持ち家手頃さ指数(Affordability Index)という指数の話が出てきました。

 

持ち家手頃さ指数とは住宅ローンの支払いや税金、保険料の支払いなどの住宅にかかる諸費用の総額が一般的な世帯収入に対して手頃であるかどうかを定量的に示す指数で、住宅価格と世帯年収のそれぞれの中央値を使って、アトランタ連邦準備銀行が毎月集計している指数です。

 

同指数が100以上であれば、住宅関連の総費用が年収の3割以下に収まり、住宅価格がお手頃であることを示します。

持ち家手頃さ指数の日本版 

このアメリカの持ち家手頃さ指数(Affordability Index)を使って、日本の住宅を購入する場合のお手頃な価格はどれくらいなのかを調べることは、果たして可能なのでしょうか?

 

 

上記グラフは国税庁が毎年公表している「民間給与実態統計調査」における過去10年間の日本における民間会社で働く人の平均給与の推移です。

 

2021年以降平均給与は3年連続で上昇していますが、物価高に追いついていない状況が続いています。

 

給与などの平均値は、高所得者が、給与水準を引き上げてしまうため、実際に一番多くの人がもらっている価格帯であれば中央値を使うのがベストなのですが、民間給与実態統計調査では中央値の記載が無いため、平均値を利用します。

 

また、単に全国平均の値を利用しても、東京圏と他の経済圏ではそもそも給与も不動産の価格も大きく異なります。

 

そこで、下記の表のように、国税局別に分けた平均給与の額(2024年9月25日公表の令和5年分民間給与実態統計調査)を利用して、7つの区域で、平均的な世帯年収を「夫婦共働き」、「男女の平均値」、「男性」、「女性」の4つのカテゴリーに分け、税込年収の3割を計算します。

 

日本では、これに似た計算方式でよく使われるのが年収負担率です。

 

年収負担率は税込み年収の25%から30%程度までがローンを組む際の適正な数値と言われています。

 

年収700万円の世帯であれば年175万円~210万円程度、毎月14.6万円~17.5万円となります。

 

これに加え、毎月の管理費、修繕積立金、固都税を考慮してその割合が15%程度として、差し引けば、日本版「持ち家手頃さ指数(Affordability Index)」に似たお手頃価格と思われる不動産の価格が導き出されます。

 

先述したように、給与は中央値ではなく平均値を利用していること、火災保険や地震保険料を考慮していないことを踏まえれば、この上限価格とそこから90%程度を乗じた価格帯が本来のお手頃価格なのかもしれません。

 

一方、お手頃価格とは裏腹に、アメリカと同様に、東京都心部でのファミリータイプの中古マンションでも価格が1億円を超えていますので、平均的なサラリーマンの収入で、例え、パワーッカプルでペアローンを組んだとしても、都心エリアでのマンション購入は手に届かない高値の花になりつつあります。

 

東京都心部は日本人だけでなく外国人富裕層や投資家もいるため、高値で購入しても、売却先はありますが、東京都心以外の都市については、東京ブランドの強さが無いため、この試算した価格よりも高い物件を購入した場合に、万一売却しようとしても思った値段で売れないというリスクが生じる可能性があります。

下記は男性単独と女性単独で購入した場合の試算です。

 

男女平等とはいえ、家庭の大黒柱が男性の比率は依然として多いので、男性単身でローンを組む場合は、ファミリーの場合も多く含まれるかと思います。

 

但し、2020年の国勢調査での生涯未婚率は男性28.3%で3.5人に一人の男性が、女性17.8%となっており、5.6人に一人の女性が単身であり、弊社でも中古マンションのご購入をお求めになる30代の女性のお客様が占める割合が高くなっています。

 

このような中で、東京及び関東でのお手頃な価格帯の目安は、下記の通りとなります。

 

東京都の場合※10万円単位切り捨て

夫婦(ペアローン) 7,600万円~8,500万円

男性単独      4,900万円~5,400万円

女性単独      2,700万円~3,000万円

男女平均      4,000万円~4,400万円

 

関東信越

夫婦(ペアローン) 6,000万円~6,600万円

男性単独      3,800万円~4,400万円

女性単独      2,200万円~2,000万円

男女平均      3,000万円~3,400万円

 

中古マンションをご購入するイメージとしてはペアローンであれば、世田谷区、大田区、品川区、江東区のマンション、男性単独でファミリー向けであれば、調布市や国分寺市、多摩市等のマンション、女性単独であれば30㎡~40㎡程度で板橋区や北区、練馬区のマンションというイメージです。

 

関東甲信越であれば、ペアローンであれば、川崎市、横浜市、さいたま市の主要駅、男性単独でファミリー向けであれば川口市、戸田市、横浜市郊外といイメージかもしれません。

 

あまり郊外にいくと単身向けのマンションはほぼなくなり、あるのは横浜駅や川崎駅などのターミナル駅となるため、販売価格が高くなり、お手頃価格を大きく上回ってしまいます。

 

また上記お手頃価格帯では築年数の浅い物件は中古マンションと言えども、先述したエリア内の徒歩10分以内のマンションを購入するのは厳しい状況と言えます。