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クレヨンしんちゃんの聖地イト-ヨ-カドー春日部店の閉店理由を探る

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

漫画「クレヨンしんちゃん」に登場した「サトーココノカードー」のモデルとなったことで有名になったイトーヨーカドー春日部店が2024年11月24日に閉店になり、1972年に開業、52年の歴史に幕を閉じました。

 

地元住民を含め、クレヨンしんちゃんのファンも集まり、閉店時間に多くの人が別れを惜しんだというニュースを見ました。

 

私の実家は東武野田線(現:東武アーバンパークライン)の七里という駅が最寄り駅で、春日部は大宮には劣るものの、東武野田線の中では大宮駅、春日部駅、岩槻駅が大きな駅でした。

 

春日部は父と娘のお家騒動で有名になった大塚家具が1969年に創業したした地でもあり、代表的なベットタウンです。

 

しかしながら、既に通りの向かいにあった大塚家具は一足先の2018年に閉店し創業の地を売却、株主争奪戦に敗れた大塚家具創業者の大塚勝久が2016年に閉店した西武春日部店跡地に巧大塚春日部本店をオープンしていますが、総合百貨店は既に10年以上前から苦境に立たされてたことになります。

 

現在は、イトーヨーカドー春日部店のお客を奪った、春日部駅西口のララガーデン春日部、イオンモール春日部、MEGAドン・キホーテ春日部などの店舗が、春日部市民とその周辺の住民が生活を支えています。

 

私が学生の頃、あまり触れたくないですが35年程度前に、丸井系列の中野輸送という運送会社でバイトをしていて、よく大塚家具の家具を配達しており、春日部は人で賑わっている街だというイメージがありました。

 

イトーヨーカドー春日部店の閉店理由は業績不振にあえぐイトーヨーカ堂の構造改革の一環での閉店ですが、大きな理由は専門店が集うショッピングモールなどに顧客を奪われ、そのなんでも揃える営業スタイルが時代に合わなくなったと言われていますが、果たして本当にそれだけでしょうか?

春日部市は人口20万人超えの中堅都市

日本にはおよそ800の市がありますが、その中で20万人以上の人口を有する春日部市は100位前後に位置し、それなりの規模を持つ市であり、商売をするうえでは十分採算のあう規模の自治体と言えます。

 

春日部駅の1日平均乗降者数はコロナ前は7万人超え、コロナ後は復調してはいますが、現在は約6.3万人程度に留まっていますが、それでも6万人超えの乗客が利用する東武線を代表する駅のひとつです。

 

それなのに、不採算店舗として閉店する大きな理由は、間違いなく、時代に合わなくなった営業スタイルであることに間違いはありません。

 

プラス、建物の老朽化による耐震性の問題や維持費用の増加が想定されます。

 

売り上げがじり貧していく中で、建て替え費用を会社が出す力もなく、閉店の決断をしたのだと思います。

 

但し、それ以外にもこのイトーヨーカドー春日部店が閉店した理由に、日本の多くの自治体で抱える深刻な問題が根底にあることを忘れてはいけません。

日本の地方自治体が悩む高齢化と人口減少の現実 

春日部市の人口と世帯数の推移(各年11月1日現在)でみると2006年から一貫して人口は右肩下がりで、逆に世帯数は右肩上がりで増加しています。

 

これは生涯独身の方が増えたことや離婚の増加などに加え、高齢のご夫婦のうちどちらかが先に亡くなられて一人暮らしになられた方も多く含まれています。

 

都心部は大学生や入社数年目の若い世代の独身も多いですが、郊外や地方では、駅から離れる程一人暮らしの高齢者が増える傾向にあります。

 

下記のグラフを見てもわかるように、春日部市は65歳以上の高齢者が実に人口全体の31%を占めています。

 

一方で令和5年5月1日現在の小中学高校の児童及び生徒数は小学生が4.24%、中学生が2.32%しかいません。

 

皆さんご存じの通り、中学生は3年で小学生は6年なので、児童の人数がどんどん減っていることがわかります。

 

これは少子化もさることながら働き世代の方の減少も含まれています。

高齢者が増えており、働き世代の人口が増加していないことは下記のデータから見てもわかります。

 

過去のデータが春日部市のネットから取得できないため、数年分のデータしかありませんが、乗用車の登録台数が減って、軽自動車の登録が増加している一因は、高齢者が免許を返納、又は乗用車から取り回しの楽な軽自動車への買い替え、もちろん近年軽自動車は若い世代にも一定数の人気はありますが、働き世代のファミリーリ世帯にはSUVが圧倒的な人気となっていますので、高齢者が増加し、一方で働き世代が減少していることが想定できるデータとなっています。

 

このデータから見ても、更なる高齢化と働き世代が逆に減少傾向にあるものと思われます。

 

この大きな理由は、今の働き世代は職住近接を好むことが一つの大きな要因となっています。

 

タイパという言葉が当たり前に使われるようになり、仕事にしろ遊びにしろ、いかに効率よく行うかを重視する時代となっており、長時間の通勤は最も好まれない環境のひとつとなっています。

 

すなわち、タイパ世代が求めるのは、住まいから都心部のオフィス街や歓楽街がある主要駅までのアクセスの時間と乗り換え回数です。

 

春日部駅から新宿駅までは東武アーバンパークラインを利用し大宮駅経由で1時間10分程度、渋谷駅までは1時間15分程度、大手町駅までは東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)を利用し半蔵門線経由で乗り換えなしの直通でも1時間弱程度かかります。

 

朝夕の通勤時間での快速や急行利用ですと混雑や遅延もあり、電車の利用だけで、1時間超え、距離で40km超え、更に終電を逃した際のタクシー利用等の出費は高過ぎというイメージなので、既に首都圏の中で過疎化が静かに進行するエリアとなっているのです。

 

都心部での地下鉄などへの乗り換えはOKであっても郊外にマイホームを考える場合は、それ以外での電車やバスの乗り換えが必要な路線は不人気です。

 

埼玉県内であればJRの京浜東北線、埼京線、東北線、高崎線がメインとなり、私鉄路線であれば西武池袋線、西武新宿線、東武東上線がメインとなります。

 

東武スカイツリーラインは北千住駅から千代田線への乗り換えや半蔵門線への直通運転などで利便性はかなり向上していますが、都心へのアクセスが東京都の東側エリアという事もマイナスイメージにつながっています。

 

また春日部駅徒歩10分以内にはBERISTAタワー春日部(総戸数152戸)など一部大型マンションはあるものの、多くが中小型マンションであり、主力は戸建住宅が中心のため、人気のあるマンションニーズを満たすことができていません

 

これらから総合的に判断すると、地方での人口減少が大きくクローズアップされていますが、首都圏エリアであっても、都心へのアクセスが1時間以上かかるエリアでは、知らず知らずの内に人口減少により、街が衰退していく兆候が表れ始めています。

 

人口減少は決して地方都市の問題だけではなく、既に都心への通勤圏でも始まっているのです。