渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
管理計画認定制度は、「マンションの管理適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)が2020年6月に改正されたことを受け、2022年4月1日から始まった制度で、地方公共団体が、管轄内のマンションの管理者等から申請があったマンションの管理や修繕が国の基準を満たしているかを認定する制度です。
マンション管理適正化推進計画は市や区が作成し、町村部は都道府県が作成します。
有効期間は5年となっており、毎回更新が必要となっています。
また、認定にかかる費用は自治体によって異なります。
管理組合の管理者等が申請し、地方公共団体がマンションの管理規約・経理・長期修繕計画などを審査して、一定の基準を満たしていれば、地方公共団体から適切な管理計画を行っているマンションとして認定を受けることが出来ます。
マンションの管理に問題があれば、助言や指導、勧告もあります。
管理計画認定制度が施行された背景には、マンションの管理不全の深刻化しているためです。
国土交通省の公表によると、2023年末時点で築40年以上のマンションは、約136.9万戸あり、2033年末には約2.0倍の274.3万戸、2043年末には約3.4倍の463.8万戸に増加する見込みとなっており、既存ストックマンションの老朽化が急ピッチで進んでいます。
マンションの老朽化には物理的不全と人的不全の2つがあり、人的不全とはマンション居住者の高齢化です。
国土交通省の公表によると、2023年時点で世帯主の年齢構成比は、60歳代が最多の27.8%、次に70歳以上の25.9%、50歳代の23.7%となっています。
マンション居住者の高齢化が進むと、管理組合役員の担い手が不足し、マンションの管理が適切に行われなくなるという問題が生じます。
これら「マンションの物理的老朽化」と「居住者の高齢化」といった問題に対処していくために、管理計画認定制度が制定されました。
但し、管理計画認定制度は、マンション管理適正化推進計画の作成が行われている地方公共団体でしか申請できません。
既に2023年度末時点で9割超えのマンションが認定制度の対象となる見込みですが、地方自治体の中には、計画書の作成を予定してはいるものの、対応時期は数年後という自治体もあり、制度に現状が追い付いていない感があります。
また、このように9割超えのマンションが認定制度の対象となっているものの、2024年4月30日時点で国土交通省が把握している認定実績は729件に留まります。
管理計画認定制度と都道府県等のマンション管理適正化推進計画との関係
先述したように今後、マンションの老朽化や管理組合の担い手不足が顕著にみられる高経年化したマンションが急増する見込みである状況を踏まえて、マンションの老朽化を抑制し、外壁の剥落などにより通行人等にケガをさせてしまうなど周辺に危害等を与えることを防止するための維持管理の適正化や、老朽化が進み、維持修繕等が困難なマンションの再生に向けたしっかりとした取組の強化が課題となっています。
そのため、国はマンション管理適正化法に基づき、マンション管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(基本方針)を作成し、マンションの管理の適正化に関する基本的な指針(マンション管理適正化指針)に関する事項を定めています。
マンション管理適正化法で規定する都道府県等は、国の基本方針に基づき、マンション管理適正化推進計画(推進計画)を作成することができ、推進計画では、都道府県等の区域内における管理組合によるマンションの管理の適正化に関する指針(都道府県等マンション管理適正化指針)を定めることとされています。
なお、この指針において、都道府県等は、国のマンション管理適正化指針に加えて、都道府県等の地域性を踏まえた独自の指針を定めることもできます。
これにより、都道府県等が推進計画を作成することにより、地域のマンションの立地状況や政策の方向性に合わせて、独自の助言・指導又は勧告や、管理計画の認定に係る基準を設けることができるような制度となっています。
留意点としては、都道府県等が管理計画の認定を行うためには、推進計画を作成していることが必要であり、都道府県等が独自の指針を定めた場合、助言・指導及び勧告や管理計画の認定に当たっては、この指針に合わせた検討や審査が必要になります。
主な認定基準と管理計画認定制度のメリット
マンションの管理計画認定基準は下記の通りとなっています。
◆管理組合の運営
・管理者等及び監事が定められていること
・総会を定期的に開催していること
◆管理規約
・管理規約があること
・管理規約にて、緊急時等における専有部分の立入り、修繕等の履歴情報の保管、管理組合の財務・管理に関する情報の提
供についての定めがあること
◆管理組合の経理
・管理費と修繕積立金の区分経理が行われていること
・修繕積立金会計から他の会計への充当がなされていないこと
・修繕積立金の滞納に対して適切に対処していること
◆長期修繕計画の作成及び見直し等
・長期修繕計画(標準様式準拠)の内容とこれに基づき算定された修繕積立金が総会で決議されていること
・長期修繕計画が7年以内に作成又は見直しをしていること
・長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている内容になっていること
・長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していないこと
・長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと。※
※基準としては修繕積立金ガイドラインで示す水準以上であること
・計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっていること
◆その他
・組合員名簿、居住者名簿が適切に備えられていること
・都道府県等のマンション管理適正化指針の基準に適合していること
上記が主な認定基準となっています。
なお、認定を受けたマンションには下記のようなメリットがあります。
メリット1
・管理計画認定制度を通じ、管理組合による管理の適正化に向けた自主的な取り組みが推進される
メリット2
・認定を受けたマンションが市場で高く評価されることが期待できる
メリット3
・住宅金融支援機構の【フラット35】及びマンション共用分リフォーム融資の金利引下げの実施
・住宅金融支援機構が発行する「マンションすまい・る債」の利率上乗せの実施
メリット4
・認定を受けたマンションが一定の要件を満たす長寿命化工事(大規模修繕工事)を行った場合に工事の翌年度の建物の固
定資産税額が減額となる
などがありますが、認定を受けるにあたり、下記の項目をクリアする必要があり、
・長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していないこと
・長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと。※
※基準としては修繕積立金ガイドラインで示す水準以上であること
・計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっていること
そもそもメリット3のマンション共有部分リフォーム融資を受ける必要がないマンションが認定を受けることが出来るマンションのはずなので少々実情と合致していないのでは?と感じてしまう部分もあります。
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