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マンションの大規模修繕で固定資産税が減額になる

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

みなさん、管理計画認定制度等で認定を受けたマンションが長寿命化工事(大規模修繕工事)を行った場合、翌年度の区分所有者が支払う建物部分の固定資産税が軽減される制度をご存じでしょうか?

 

期間は2023年4月1日から2025年3月31日までとなっており、実際に今からの申請では全くこの制度を利用することは不可能なのですが、国土交通省が今国会に2年間の制度の期限延長を要望を出しており、延長される可能性もあるため、この制度の現時点での概要をご説明したいと思います。

 

この制度を利用できるマンションの要件は下記に示すようにかなり厳しい内容となっています。

築20年以上経過している総戸数が10戸以上のマンション

 

②過去に長寿命化工事を行っているマンション

 

③管理計画認定マンション※1又は助言指導に係る管理者等の管理組合に係るマンション※2

 ※1「管理計画認定マンション」の場合は、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を管理計画の認定基準未満から認定  

   基準以上に引き上げることが必要。

 ※2「助言又は指導に係る管理者等の管理組合に係るマンション」の場合は、長期修繕計画の作成又は見直しを行い、長

   期修繕計画が一定の基準に適合することが必要。

 

さらに、長寿命化工事の要件として外壁塗装等工事や外壁タイルの修繕工事、床防水工事や屋根の防水工事をすべて行うこととされています。

 

長寿命化工事とは一般的に12年~15年程度に1回行われる大規模修繕工事と考えれば良いでしょう。

 

また、固定資産税の減額措置を実際に受けるには、長寿命化工事の完了3か月以内に、各区分所有者(納税義務者)が自ら申告しないといけないルールとなっています。

マンション長寿命化促進税制の問題点 

先述させて頂いたように、この税制優遇を受けるには、かなり高いハードルがあり、2023年税制改正の要望の際には、2024年度中に3.9万戸の適用を見込んでいたようですが、実際の申請件数は伸び悩んでいるようです。

 

この税制優遇が利用されない主な理由は

 

◆管理計画認定等を受けたマンション自体がそもそも少ないこと

 

◆長寿命化工事(大規模修繕)の計画から合意形成、実際の工事に着手するには相当の期間を要すること

 

◆工事費の価格上昇と職人不足により、建設会社が受ける工事を選ぶ時代になっていることによる予算オーバー

 

◆固定資産税の税優遇が工事翌年度の建物部分のみでわずか1年分であること

 

◆建物の固定資産税の減額割合が1/6~1/2で参考水準として1/3程度と限定的であること

 

◆申請が区分所有者自らが行う必要があることと申請期間が短いこと

 

などが挙げられます。

 

ただでさえ合意形成が難しい修繕積立金の値上げや、大規模修繕工事の段取り、煩雑な申請は、現役世代では時間的な余力が無く、しかも、その労力の割に、減税額はマンションの各個人が支払っている固定資産税の額により異なりますが、大方の方は2万円~5万円程度、しかも永続的に減額になる訳ではなく、たった1年なので、コスパもタイパも魅力的ではありません。

 

そもそも管理計画認定を受けること自体がハードルが高く、該当する既存マンションで、管理計画認定制度で定める修繕積立金の要件を満たしている管理組合は、私が日々取り扱っている中古マンションの販売図面に記載されている修繕積立金の額を見る限りでは、非常に限られた数しかないと思います。

 

ここ数年で修繕積立金を増額する管理組合は増えており、少しづつですが確実に改善はされてきていますが、2024年6月に改訂されたマンション修繕積立金に関するガイドラインに準じた修繕積立金を徴収しているマンションは全体の2割にも満たないと思います。

 

一説によると、マンション長寿命化促進税制の要件に合致するマンションは全国で1%程度とも言われており、例え、来年以降2年間の期限延長が実現したとしても、制度をもっと使いやすいものにしない限り、利用者は限定的になると思われます。

 

来年度予算が仮に通過した場合、上記の内容の内、いくつかでも改善されていることを望みます。