渋谷区で主として中古マンションの売買を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
京都市が1月14日に宿泊者に対して1泊当たり200円~1千円を課している宿泊税の最高額を1万円に引き上げると発表しました。
現行の宿泊税は1人当たり1泊2万円未満は200円、2万円以上5万円未満は500円、5万円以上は1千円の3段階としていますが、2026年3月1日からは、1泊6千円未満は200円、6千円以上2万円未満は400円、2万円以上5万円未満は1千円、5万円以上10万円未満は4千円、10万円以上は1万円とする方針です。
2024年の訪日外国人数は約36,869,900人、消費額は円安効果もあり8兆1,395億円となっており、いずれも過去最高となっています。
1月15日に観光庁から公表された2024年のインバウンド消費動向調査によると、訪日外国人の1人当たりの旅行支出は22.7万円と推計され、国籍別に旅行支出額が多い国は、英国が38.3万円、オーストラリアが38.2万円、スペインが37万円となっています。
特に欧米豪系の富裕層はJNTO(日本政府観光局)が2022年に公表した「JNTOが進める高付加価値旅行市場の取組」と題した資料の「欧米豪におけるラグジュアリー旅行の市場規模」によると、1人当たりの旅行支出額は、オーストラリアが296万円、フランスが183万円、英国が175万円、米国が123万円、ドイツが117万円となっており、5か国平均では136万円となっています。
市場規模は米国が2.5兆円、207万人で最も大きく、次いで、英国1兆円、55万人、ドイツ7,000億円、62万人、フランス2,000億円、11万人、オーストラリア2,000億円、8万人となっています。
これら富裕層の多くは、環境に対する意識や歴史に関する造詣も深いので、1泊1人1万円の宿泊税が歴史的文化的な価値のあるものの保存や修繕などに使われるのであれば喜んで支払ってくれるかもしれません。
京都市の2023年度の宿泊税収は52億円ですが、税額を引き上げた場合は2.4倍の約128億円になる見込みとなっています。
京都市は宿泊税を観光地のゴミの回収や慢性的な交通渋滞の改善、無電柱化や京町屋の保全などの景観美化などに充てているものの、日帰り客も含め年間5,028万人にものぼる観光客への対策に頭を悩ませており、これらの改善にさらに取り組むとしている一方で、オーバーツーリズムのために日々の生活に支障をきたしている市民に対して、宿泊税の使途を観光振興に限らず、道路や橋といったインフラ整備や災害対策など京都市民にも便益の大きい事業に拡げ、観光客を受け入れることで日々の市民生活が良くなっているということを実感してもらいたいとしています。
オーバーツーリズムで最も大きな問題はゴミ問題であり、これは絶対に避けては通れません。
私は原宿のゴールドジムにオープン当時から22年間、ほぼ毎日通ってトレーニングをしているのですが、2年程前から原宿駅近くのコンビ周辺にビールの空き缶が捨てられるようになり、綺麗であったはずの街に汚れが目に付くようになりました。
今朝も5時30分過ぎでしたが、外国人数人が酔った状態で騒いでおり、一人は歩道で寝ていて、周囲にはファミキチらしきものを食べた紙くずと空き缶が散乱していました。
かつてのローマ帝国時代の暮らしがわかる世界遺産ポンペイの発掘現場では床に魚や貝の絵が描かれていますが、これは食べた残飯を床に投げ捨てても目立たないようにするために描かれていたとされており、現在のスペインのバルでも食事した残飯は床に捨てるのが一種のルールになっており、文化が全く違うので恐らく、ゴミは持ち帰るか、ごみ箱に捨てるという習慣は世界では通用しないのかもしれません。
また一説によると、ゴミを捨てないで、自分たちで片づけてしまうことは、ゴミを掃除する清掃員やメイドさんの仕事を奪ってしまうことなるという考えがあり、日本人的感覚としては受け入れがたい考えです。
当然「郷に入っては郷に従え」という格言があり、これを外国人観光客が守れないのであれば、観光客にその代償を払わせても良いと感じています。
勿論マナーを守ってくれる外国人も多くいらっしゃいますが、マナーの有無は見分けがつかないので、全体責任とするのは合理的かと感じますし、清掃員の仕事を奪ってしまうという考え方であれば、なおさら、その清掃の対価として、宿泊税等観光に対しての税金を徴収することは理にかなっていると思いますが皆さんはどのようにお考えになるのでしょうか。

観光が盛んな自治体は宿泊税を既に導入済
宿泊税は、ホテルや旅館などに宿泊する宿泊者に課税される税金で、法定外税とも言われています。
法定外税とは地方団体は地方税法に定める税目(法定税)以外に、条例により税目を新設することができ、これを「法定外税」といいます。
現在宿泊税を2025年1月時点で実施している自治体は全国11あります。
都道府県では、東京都、大阪府、福岡県、市区町村では京都府京都市、石川県金沢市、北海道俱知安町、福岡県福岡市、福岡県北九州市、長崎県長崎市、北海道ニセコ町、愛知県常滑市となっています。
また、令和7年4月からは、北海道赤井川村、静岡県熱海市で宿泊税が導入される予定となっていますし、北海道でも宿泊税の導入を検討しており、全国各地で宿泊税に関する議論が活発化しています。
そのような中で、東京ディズニーリゾートのある千葉県浦安市でも、17万人の人口に対し、休日には市内に滞在する人が20万人を超えており、観光客にも対応できる救急医療体制の確立やJR舞浜駅周辺の歩道の老朽化に伴う再整備の必要性から宿泊税を導入するとしています。
宿泊税の多くは一律で1泊200円程度が多いですが、観光色の強い自治体では京都市のように宿泊料金により、差をつけている自治体もあります。
ニセコ町では1人1泊あたり10万円以上は2,000円を徴収しています。
東京都は1万円未満は課税なしで、1万円以上1.5万円未満が100円、1.5万円以上が200円となっています。
宿泊税に食事代は含まれるのか?パック料金の場合は??
宿泊税における宿泊料金とは、食事料金などえお含まない、素泊まりの料金となります。
素泊まり料金にかかるサービス料も宿泊料金に含まれる一方で、消費税等の額に相当する金額や、宿泊以外のサービス(食事、冷蔵庫の飲料、結婚式、宴会、エステ、プール、サウナ、ビデオ、クリーニング、電話、駐車料金等)は宿泊料金には含まれません。
またデイユース利用の場合も宿泊では無いので宿泊税はかかりません。
パック旅行で旅行会社にお金を支払った場合などは、個別のホテルや旅館の宿泊料金は宿泊者に明示されていませんが、この部分については、旅行会社とホテルや旅館との食事等の付帯サービス料金分を除いた契約宿泊料金に基づいて判断するようになっています。
鉄道や飛行機代などすべてがパック料金となっている場合も同様で、ホテルや旅館と旅行会社が実施的に取り決めた素泊まり相当分の金額により宿泊税が決まります。
簡単に言えば、パック旅行の場合は、最終消費者である観光客は、この部分に触れる必要はなく、旅行会社、ホテルや旅館などが宿泊税を勝手に算出してくれるようになっています。
政府主導で観光立国を目指す今、人口減少等に苦しむ地方自治体にとって、宿泊税の導入は非常に魅力的なものとなっています。
今は円安なので、訪日する多くの外国人にとって、宿泊税は微々たるものかもしれませんが、日本人にとっては、税金ばかり増えて複雑な気持ちかもしれません。
また、税金に限らず、日本国内のホテル代金は異常なほど価格が高騰し、飲食代かなり上昇しており、少し上品なお店に行くと1人1万円超えが当たり前のようになり、気軽に外食に行けない雰囲気になっています。
世界の国々の中には観光客と住民との間に価格差(簡単に言えば二重価格)を付けている国は多くあり、渋谷の飲食店でも、外国人と日本人との間で値段設定を変えている飲食店もちらほら表れています。
白鷺城として日本人にも外国人にも人気の高い姫路城ですが、姫路市は18歳以上1,000円の入場料金を2026年春を目途に姫路市民以外の入場者から2,000円~3,000円程度を徴収する方針としています。
インバウンド需要による大量の観光客により姫路城自体が傷んでおり、その修理費用や観光整備に充てるとしています。
オーバーツーリズムによる生活環境の悪化対策や観光整備はわかるのですが、あまりにも、インバウンドによる観光特需で日本人の感覚を無視した値段設定や新たな税金などを創設した場合、日本人の旅行需要が減退する可能性も否定できないかと思います。
観光は少子高齢化に苦しむ日本が成長していく数少ない分野なので、付加価値を付けたうえで価格が上昇していくのであれば致し方ありませんが、度を過ぎた宿泊料金の設定や飲食代がまかり通るとなると、長期的な成長は限られてしまうかもしれません。

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