渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
マイホームを購入する層は30代と40代が圧倒的に多いですが、50代で家を購入する人たちもそれなりの数がいます。
リクルートが2024年3月15日に公表した「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」では、平均購入価格が6,033万円、既婚世帯の共働き比率は過去最高の75%となっており、世帯主の平均年齢は39.2歳で2001年調査開始以降2番目に高く、世帯総収入は全体平均で1,057万円で2008年以降で最も高くなっています。
不動産価格の高騰で、貯蓄や収入に余裕がある50代8.2%、60歳以上が8.1%という数字になっており、一定の存在感を指示しています。
住宅金融支援機構が2024年4月に行った「住宅ローン利用予定者調査」でも、30歳代・40歳代が60%以上を占めていますが、50歳代も16.8%おり、この調査でも一定の需要があることがわかります。
50代で住宅ローンを組む人がそれなりの存在を示している背景には、先述したように不動産価格の高騰が大きな要因の一つになっています。
不動産流通経営協会(FRK)の2024年度調査によると、自宅を売って住み替えた世帯で売却価格が購入価格を上回った割合は59.7%と、前年度に比べ2.4ポイント増えています。
2022年度と比較すればわずかな増加ですが、実に6割の方が売却益が出ている計算になります。
逆にマイナスの売却差額が発生した世帯は32.8%で4.6ポイント減少しています。
マイホームの売却で住宅ローンの残債を完済しやすくなっており、自宅を売りやすい環境がシニア層の住み替えを後押ししている面があります。
また、50代の世帯が最初のマイホームを購入した時よりも住宅ローンの金利はかなり低水準で推移しているので、よりお得に感じているのかもしれません。
他にも50代でマイホームを購入する理由としては下記のようなものがあります。
◆長い間社宅に住んでいたが、社宅が売却になった、又は、年齢制限で社宅を出なければならなくなった
◆転勤族のために、今まで欲しくても家を購入できなかった
◆子供が大きくなり、巣立っていったので、都心部の駅に近く利便性の高いマンションを購入
◆老後に賃貸マンションに住み続けるのは難しいと思い、マイホームを購入することにした
◆これと思う物件に出会えなかった
◆再婚して新たな家が欲しくなった
◆コロナ禍を経て、安住の地が必要だと考えた
◆ZEHなどの高性能住宅が欲しくなった
◆建物の老朽化
など、理由は様々です。

住宅ローンは早めに借りた方がいい
50代で夫婦共働きの場合は、かなりの収入があるため、その収入に見合ったハイクラスのマイホームが購入できると思いがちですが、年齢を重ねた分、住宅ローンを組むことが出来る年数が短くなってしまうため、単純に収入から予想される価格帯の物件を購入が出来ないケースも多くあります。
住宅ローンは借入時の年齢上限が65〜70歳程度、完済時年齢の上限は満80歳未満とする金融機関が多く、これだけを見れば50代以上でも利用は十分可能です。
しかし、若い世代より返済が難しくなった際の対応策は限られるため、資金計画はより慎重に考えていく必要があります。
また、年齢を重ねる程、生活習慣病やガンにかかるケースも増加するので、通常の団信は入れずにワイド団信など金利が高くなる団信しか入れない場合や、ガンを発症したり、狭心症になった場合は基本住宅ローンは組めなくなってしまいます。
数年前に、マンションを購入して頂いたご夫婦の場合は、本命の内見当日にご主人の体調が優れないとのことで、キャンセルになり、そのまま病院に行かれて狭心症との診断を受け、ペアローンでの購入が出来なくなってしまいました。
幸い、十分な貯蓄と奥様も大企業に勤めており、高所得であったため、奥様単独での住宅ローンで事なきを得ましたが、人生100年時代と言われていますが、実際に40代後半、50代になると疾病などにより、住宅ローン自体がが組めなくなる可能性が高くなります。
50代でローンを組む場合の注意点
当たり前のお話になってしまいますが、返済期間が短くなると毎月の返済額はその分増加します。
30歳の方が4,000万円のローンを金利1.7%の固定金利で35年借りた場合の毎月のローン支払額は126,430円ですが50歳の方が同じ金利で65歳の定年を想定して15年で住宅ローンを借り入れた場合、毎月の支払額は251,915円となり、30歳の方が35年で借り入れした際のローンの支払額の約倍の金額を支払う必要があります。
もし完済年齢の上限の80歳まで借りれた場合は30年の借入期間になるので毎月141,919円の支払いとなります。
35年ローンの場合は総支払利息が約1,310万円、ローン支払総額は5,310万円、15年ローンの場合は総支払利息は約534万円、ローン支払総額は4,534万円となります。
80歳までであれば借入期間は30年になるので、総支払利息は約1,109万円、ローン支払い総額は約5,109万円となります。
但し男性の平均余命が81.09歳なので、80歳ローン完済は現実的では無い気もします。
借入期間が短くなれば総支払額は当然少なくなりますが、その分、毎月のローン支払額は増加します。
このように返済期間をどう設定するかは借りる人の収入や貯蓄やライフスタイルなどによっても異なります。
ファイナンシャルプランナーは50代以上の返済計画を立てる際、長く借りて毎月の返済額を抑えることを優先する提案をすることが多いかと思います。
理由は定年時に完済することを目指すと月々の返済負担が重くなり、老後資金の準備が手薄になりかねないためです。
収入がある間は一定の条件が整えば住宅ローン減税が利用できるほか、契約者の死亡など、万が一の際は民間の住宅ローンなら原則加入する団体信用生命保険でローン残高は無くなります。
返済期間は繰り上げ返済によって返済途中でも短縮できるので、なるべく長く借りる設定をしておき、順次繰り上げ返済を行っていき、毎月の返済額を低くするのが王道です。
50代であれば毎月の返済額を減らすのでは無く、返済期間を短くするのも一案ですが、住宅ローンの延長は難しく、金融機関の再審査が必要になるので、総支払利息は増加しますが、なるべく借入期間は長いままにしておいた方が良いです。
その最大の理由は万一契約者が死亡した場合には、ローン残高が団信により無くなるからです。
人は高齢になる程、死亡リスクが高くなるからです。
但し、死亡でローン残高が免除になるという考えは、道徳に反していると考えるのであれば、返済期間をどんどん短くし、ローン支払いの呪縛から早く逃れるというのもまた、正しい考え方だと思います。
また、返済期間と月返済額を設定する際は50代以降の収入見通しを踏まえることが欠かせません。
会社員の年収が高い時期は一般的に50代で、55歳前後の役職定年以降は収入が減りやすいと言われます。
昨今は人手不足や技術の継承で60歳の定年以降でも年収を維持できる方も増えてきていますが、現段階では収入が半減するケースも多く、収入が減っても年間の返済額が収入の25%以内に収まるような計画をたてるべきだと感じます。
そして、同時に心がけたいのは毎月の返済を続けながら、リタイアするまでに貯蓄を急ぐことです。
住宅ローン残高と同額以上の貯蓄を準備し、いつでも完済できる選択肢を確保することも大切です。
そのため購入時の自己資金(頭金)は物件価格の5割程度がひとつの目安になると言われてます。
上場企業の退職金はモデルケースであれば2,000万円程度と言われていますが、モデルケースほど退職金をもらえる人はごく一部の人に限られます。
また、近年は退職金の支払いは無く、毎年の給与で最大限支払うとする企業も増えているので、自分の退職金がどれくらいになるのかを人事部などに確認しておいた方が良いかと思います。
また、先述した通り、50代以降は病気のリスクも高まります。
思わぬ出費や収入減に備えて、老後資金とは別に、300万〜500万円程度の余裕資金を用意することを考えてください。

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