渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。
住宅ローン控除の適用要件が消費税対策の話から大きく様変わりして省エネ基準を満たす物件に対して適用する方向に大きく舵を切って1年が経過しました。
特に2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で住宅ローン減税の適用を受けるには省エネ基準に適合することが必須条件になっています。
これは今年の年4月から、原則、全ての新築建築物が省エネ基準を満たす必要があることへの布石でした。
省エネ基準をクリアするには、建築費用がどうしても高くなってしまい、売れ行きに大きな影響が出ると考えた戸建て業者の中には、省エネ基準に適合しない新築を建て、住宅ローン減税が縮小傾向にあるので、あまりメリットが無いとして、中には、住宅ローン控除分以上に大幅な値引きをして、とにかく在庫を売り切ろうとして必死になっています。
これは、1981年6月以降に建築確認を受ける物件は新耐震基準になるため、建築費が高くなるとのことで、その前に駆け込み需要があった45年前とある意味全く同じ現象と言えます。
ゆくゆくは、省エネ住宅が主流となり、新耐震基準物件でないと資産価値が下がったのと同様に、省エネ基準を満たしていない物件は将来的に価値が下がるものと思われますが、売れる値段ありき、買える値段ありきで、背に腹は代えられないというのが、実情なのかもしれません。
では、新築で無い物件を不動産会社が購入してリノベーションして売り出す再販買取物件(リノベーション物件)は住宅ローン減税の適用をうけることができるのでしょうか。

中古住宅とリノベ済物件の違い
そもそも中古住宅と再販買取(リノベーション済)物件はどういった違いがあるのでしょうか?
両方とも同じ中古物件であることに変わりはないのですが、中古住宅は一般の売主様が、不動産仲介会社をとおして、売却しますが、再販買取物件は、様々な事情で所有する不動産を売却する個人の方から不動会社が物件を購入し、リノベーションして売り出す物件をいいます。
中古住宅でも、売主様が使い古した物件のままでは売却できないと考え、リフォームを行って売り出す例もありますが、これは基本的に「リフォーム済」と表示されて、売り出され、保証期間は基本無く、契約不適合免責というケースもあります。
一方で再販買取物件は、不動産会社が売主となるため、多くの物件で保証期間を設けて販売しています。
中古物件を買い取り、リノベーションして、利益をのせて販売するので、リノベ済物件は割高だと考える方が非常に多いですが、一概にそうとも言い切れません。
一般の個人の方がリフォームする工事代金と再販買取業者が大量に工務店に工事を発注する際の請負金額は全く違います。
また再販買取業者は金融機関や大手仲介会社と連携し、水面下で安い価格で物件を取得します。
少しばかり不動産をかじったことがある方は、この水面下の物件(未公開物件)を欲しがりますが、再販買取業者に流れる物件を一般の方が購入するのはかなり難しいです。
なぜなら、大手仲介会社はこの水面下の取引で1つの物件で両手仲介を多いときは2度もできます。
エンドの方に売却するよりも最大で4倍も仲介手数料が入るチャンスをエンドの方に購入してもらう行為は利益をドブに捨てるようなものなので、余程の事が無い限り、絶対にしません。
このようにエンドの方とは全く異なる金額での取引なので、「リノベ済物件=高い」とは言い切れません。
また自身でリノベする際には、工務店の契約や、ローンが複雑になる、購入してからでないとリノベできないなど様々な制約と打ち合わせの時間もたくさん必要になるので、これらを総合的に判断した場合には、リノベ済物件の方に軍配があがるということになります。
またリノベ済物件の大半はマンションになります。
理由はマンションは共有の建物なので、共用部分はマンション管理組合が中心となり管理や修繕をしてくれるので、専有部分だけのリノベーションで事足りますが、戸建ての場合は、外壁や基礎や構造上の問題など、リノベーション工事だけでなく、その他の費用が発生してしまい、採算が取れなくなる可能性が高いからです。
リノベ済物件は要件を満たせば住宅ローン減税制度が利用可能
国税庁では、再販買取物件の定義を宅地建物取引業者が特定増改築等(リノベーション工事)をした既存住宅を、その宅地建物取引業者の取得の日から2年以内に取得した場合の既存住宅(その取得の時点において、その既存住宅が新築された日から起算して10年を経過したものに限ります。)としています。
そして住宅ローン減税の特例を受けるには下記の要件をすべて満たす必要があるとしています。
1.購入する再販買取物件が取得する時点で新築から10年を経過している物件であること。
2.リノベーション費用が、税込売買価額の20パーセントに相当する金額(その金額が300万円を超える場合には300万
円)以上であること。3,300万円で売り出しているのであれば660万円以上の工事費用がかかっていること。
3.販売した再販買取物件が次のいずれかに該当する特定増改築等に係る工事が行われていること。
(1)下記「特定増改築等の工事内容」の1から6に掲げる工事に要した費用の額の合計額が100万円を超えること。
(2)下記「特定増改築等の工事内容」の4から7のいずれかに掲げる工事に要した費用の額がそれぞれ50万円を超えるこ
と。
4.宅地建物取引業者が既存住宅を取得し、上記2および3の要件を満たす特定増改築等に係る工事を行った後の既存住宅
について、宅地建物取引業者の取得の日から2年以内に取得していること。
5.建築後使用されたことのある家屋で次のいずれかに該当すること。
(1)昭和57年1月1日以後に建築されたものであること。
(2)取得の日前2年以内に耐震基準を満たすことを証明できる物件であること。
◆特定増改築等に係る工事
1.増築、改築、建築基準法上の大規模の修繕または大規模の模様替えの工事
2.マンションの場合で、床または階段、間仕切り壁、主要構造部である壁のいずれかのものの過半について行う修繕また
は模様替えの工事
3.家屋のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕ま
たは模様替えの工事
4.地震に対する一定の安全基準に適合させるための修繕または模様替えの工事(耐震改修工事)
5.一定のバリアフリー改修工事
6.一定の省エネ改修工事
7.給水管、排水管または雨水の浸入を防止する部分に係る修繕または模様替えの工事(既存住宅売買瑕疵担保責任保険契
約が締結されているものに限る。)
詳しくは、タックスアンサーNo.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)をご覧ください。

住宅ローン減税を受けるための基本項目も忘れずに
なお、上記以外にも、住宅ローン減税を受ける際の基本的な条件も満たす必要があります。
◆登記簿面積50㎡以上
◆年収が2,000万円以下
◆購入してから半年以内に住む(住民票の移動も必要)
◆10年以上のローン返済期間
◆直近3年間の間に譲渡所得の課税の特例を受けていないこと
◆贈与による住宅の取得でないこと
などの要件を満たす必要があります。
また、新聞などの見出やニュースでは、細かい要件を省いているので、新聞やニュース、ネットで概要を見ただけでは重要な点を見逃している場合があります。
例えば、登記簿面積は40㎡以上、控除期間13年、借入限度額は3,000万円最大で4,500万円というのは全て省エネ基準を見たした新築物件に限られます。
再販買取物件は当初13年間の控除期間でしたが、2024年以降の入居の場合には控除期間は10年に変更になっています。
更に、再販買取物件で今のところ、住宅ローン控除の適用を受けることができる物件は、省エネ基準を満たさない、「その他の住宅」に分類されるので借入限度額は2,000万円となります。
そのため最大限の住宅ローン控除を受けた場合の計算は「2000万円×0.7%×10年」となるので、住宅ローン控除の総額給付は140万円となります。
マンションの場合の面積としては、販売図面に専有面積52㎡と記載してあった場合は住宅ローン控除の適用は受けられません。
販売図面に記載されている面積がだいたい54㎡程度ないと、登記簿面積が50㎡以上にはならないので注意が必要です。
住宅ローン減税はここ数年で大きく内容が変わっており、この内容を理解していない不動産営業マンも相当数おりますので、住宅ローン控除を必須としている方はこれらの要件が満たされているかしっかり確認する必要があります。

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