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タワマンの大規模修繕工事は費用が高い

渋谷区で主として中古マンションの売買仲介を行っている株式会社リアルプロ・ホールディングスの遠藤です。

 

2000年以降タワマンの建設が増え始め2003年以降は急速にその数を増やし、次々と新しいタワマンが誕生しています。

 

建築技術の進化に伴い、高層化と大型化が進んでおり、高さ60m以上、20階以上がタワマンの定義となっていますが、その倍の40階以上のタワマンが現在は至るところにあるくらい、超高層のタワマンはメジャー化しています。

 

特に、都心部の湾岸沿いは通常のマンションよりもタワマンの方が多くなっており、三井不動産レジデンシャルが現在販売している TOYOMI TOWER MARINE&SKYは、53階建て、総戸数2,046戸のツインタワーで2027年8月末引渡し予定となっています。

 

また、タワマンが集中している武蔵小杉でも設計者を隈研吾都とした三菱地所レジデンスのザ・パークハウス武蔵小杉タワーズ(地上50階、総戸数1,438戸)が2028年2月引渡し予定となっており、都心部又は主要ターミナル駅の高級マンション=超高層大型タワマンという雰囲気さえあります。

 

しかしながらタワマンも建物である以上、適切な管理をしていたとしても、築年数が経過すれば劣化し、修繕が必要になります。

 

40階越の超高層タワマンの修繕実績はまだそれほど多い訳では無く、これらの超高層建物の修繕技術を持つ建設会社も非常に限られています。

 

このような状況下で、超高層タワマンの大規模修繕工事が適切に行われなかった場合、特に建物が高層の分、外壁などが劣化し剥離して落下した場合は、重大な事故になりかねません。

 

タワマンの定義となっている高さ60m程度(20階程度)までであれば、強度が増した足場材(鋼製足場)での仮設工事でも対応が可能ですが、流石に地上40階以上は通常の足場を使った仮設工事は出来ません。 

タワマンの大規模修繕 

タワマンの大規模修繕工事で最もカギになるのが仮設工事です。

 

仮設工事とは主に足場を指します。

 

足場は主として外壁などの建物を修繕するために、鉄板や鋼管を利用して、建物の上部に上れるようにするための仮設構造物です。

 

外側には、職人や材料等の落下防止や塗料の飛散防止などを目的にネット(メッシュシート)を張ります。

 

落下事故防止には「朝顔(あさがお)」と呼ばれる、足場側面に傾斜させて、取り付ける防護柵もあり、これも仮設工事の一種です。

 

工事の最初に組み立て、工事の最後に取り外すので仮設工事と言われています。

 

外から見て、ネットが張ってあるマンションは、現在、大規模修繕工事中ということになります。

 

マンションの1回目の大規模修繕では、一般的に「仮設足場の組立」「調査・下地補修工事」「シーリング工事」「洗浄工事」「外壁塗装工事」「鉄部等塗装工事」「防水工事」「タイルの落下防止工事(ピンニング工法や貼り替え工事等)」などの項目が挙げられますが、1回目の工事でタイルの張替工事は、ほとんどなくピンニング工法が主となると思います。

 

あくまでも、職人が作業をするために必要な仮説の構造物ですが、大規模修繕の総費用に占める割合が非常に高いのが足場の設置、すなわち仮設工事となります。

 

タワマンの大規模修繕工事が通常の中高層マンションの大規模修繕工事と大きく異なる理由は次の3つとなります。

 

◆特殊な足場を利用する

 

◆高層なため強風などの外的影響を受けやすく工期が長くなる

 

◆複数の足場計画が必要

  

の3つとなります。

 

高層タワマンの仮設工事で使用される仮設工法は「鋼製足場」「ゴンドラ」「移動昇降式足場」の3つがあります。

 

高層タワマンの場合は、20階以下の階数で鋼製足場による仮設工事を採用し、それ以上の高さのでは、ゴンドラ式を採用する工法が多いようです。

 

ゴンドラは、屋上からワイヤーロープで人が乗るスペースのあるかごを吊り下げるものが一般的ですが、小型クレーンをいくつも設置しして、平行移動が容易にできるように、施工する階全体を覆う方式の移動式足場が、施工むらも防げ、安全性も高く、メジャーになりつつあります。

 

剛製足場は通常の足場と組み立て方法は変わらないため、多くの足場材を使用するので、これらの材料を上層まで運んで組み立てるので、材料の落下による第三者の通行人の死亡事故や作業員の転落による死亡事故も実際に発生しており安全面上、建物が高くなればなる程、そのリスクは上昇します。

 

高層まで足場を設置すればする程、1階部分の足場にはかなりの重量がかかるため、剛製足場であっても30階以上まで足場を組み上げることは、今の技術では物理的に不可能です。

 

移動式足場でも、地面から屋上までレールを設置して、人が乗った箱型の足場が上下して移動するものを移動昇降式足場といいます。

 

但し、移動昇降式足場は、地面から足場を上下させるレールを設置するので、建物と地面が切り離された形状である免震装置があるタワーマンションでは、導入できません。

 

高さ100mを超えるタワマンは戸数規模も大きく、耐震に関する工法なども免震ゴムを採用した免震工法や建物の揺れを軽減させる制震装置をいれる制振工法と言った最先端の建築技術が採用されることも多く、それに対応した修繕技術を習得していく必要があり、一般的な中高層マンションよりも、コストが高くなる傾向にあるとされています。

 

タワマンの大規模修繕工事では、外壁や共用廊下など、かなり大掛かりな調査をした後に、修繕内容を決定します。

 

高層タワマンが建設された当初は外廊下方式が多かったのですが、2008年前後からは、共用廊下が内廊下である物件が多くなっています。

 

共用廊下が内廊下の場合は、風雨の影響を受けにくいので、劣化スピードも遅いので1回目の大規模修繕では行われないこともありますが、逆に、廊下内に空調機器を設置していたり、通路部分が汚れやすく、匂いも付着しやすいので、日頃のメンテナンスがかかるなど別の部分で費用がかかります。

  

タワーマンは、高層ゆえ、天候の影響を受けやすくなり、工事が実施できない日が出てきます。

 

また高層建物特有のビル風の発生などもあり、一般的な中高層マンションと比較して、必然的に工事可能な日数が限られてしまいます。

  

更に、ゴンドラや移動昇降式足場では、足場を上下や左右に移動させるのに時間がかかり、ゴンドラには数人しか乗れないため、一度に一つの工程しかできないのも、工期が長くなる要因です。

 

そのため最近では先述したように、施工する階の建物部分を固定足場のようにぐるっと取り囲む移動式足場が採用されるケースが増えています。

  

また、マンション間の隔て板を外して、作業員が移動しやすいように施工する場合もあります。

割高な超高層タワマンの修繕費用をどう抑えるか 

超高層タワマンは、一般の中高層マンションと比べると、作業員や資材の昇降に時間がかり、非常用エレべータの設置など特殊な設備などが必要になる事情や、住戸数に対する駐車場の付置義務規制などにより、特に都心部の超高層タワマンの場合は、駐車場もタワーパーキングという物件も増えています。

 

また、天井高が非常に高い豪華絢爛なエントランスやパーティルームなどの共用施設も多いため、修繕費用だけでなく、日常の管理費も通常のマンションと比較して割高になります。

 

「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省)」(2021年9月改訂)でも、超高層マンション(一般に地上20階以上)は、外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となるほか、共用部分の占める割合が高くなる等のため、修繕工事費が増大する傾向にあるとしています。

 

そして、大規模修繕工事費用の目安として、【地上20階以上】の平均値は、戸当たり月 338 円/㎡。【20階未満で建築延床面積2万㎡以上】の戸当たり月 255 円/㎡としており、タワマンの方が㎡あたり83円も高くなっています。

 

超高層タワマンであれば工事費用は更に割高になります。

 

また、このマンションの修繕積立金に関するガイドラインには機械式駐車場の修繕費用は含まれていないので、この分を追加で考えおく必要があります。

 

他のマンションと同様に超高層タワマンでも長期修繕計画を元にして、大規模修繕工事の2~3年前から検討を進めていきますが、その場合は新たに修繕委員会を設置して計画を密にしていきます。

 

大規模である程、区分所有者の中にはゼネコンの社員や建設会社の社長、1級建築士なども多く、これらの方の活躍が期待されますが、大規模修繕にあたっては専門のコンサルタントを選定して、ともに協力して工事に向かって取り組んでいくのが一般的です。

 

但し、コンサルタントの中には、建設会社と談合するケースも散見しており、国土交通省でも注意を促しています。

 

以前の長期修繕計画は12年周期が一般的でしたが、特にタワマンでは近年、修繕周期を12年から15年に伸ばしているケースが増えています。

 

近年は建物を維持する事が重要という認識の高まりや技術革新により、設備や材料の耐久性も伸びており、12年周期で4回大規模修繕工事行うのと15年周期で3回大規模修繕工事を行うのとでは、工事費用にかなりの差額が生まれるためです。

 

中には仮設工事が伴う大規模修繕工事をそれ以上の20年に伸ばそうという動きもみられます。

 

超高層タワマンに限らず、マンションは、日の当たり方や排気ガス等汚染物質による化学反応、雨、建物の形状などによりゴミが付着する場所が異なるなど、同じ建物でも、劣化スピードは場所によって異なります。

 

そのため、劣化スピードが高い場所や材料はより高い耐久性を有した材料を使うなどして、足場を設置する工事をなるべく遅くするなどの対応方法はかなり有効な手段となる場合があります。

 

足場はあくまでも仮設なので、建物の寿命に影響を与えるような材料では無いにもかかわらず、前述しているように仮設費用は大規模修繕工事費用の中でかなりの部分を占める重要な項目です。

 

この費用を抑えることが大規模修繕工事の費用を抑えるには非常に有効な手段となります。

  

また近年は工事費が高騰しており、3年前の計画での工事費用が予算額を大幅に上回るケースや、工事費用が合わずに、工事を請け負ってくれる施工会社がいないという事態も発生しています。

 

また、工事日程に支障が生じ、追加費用を施工会社から請求されないように、居住者への事前通知や大規模修繕工事に対して理解を得ることも非常に大切です。

 

特に問題となるのが、ベランダに置かれた荷物や敷き詰められたタイルを事前に撤去してもらうことなどです。

 

これらが設置されたままですと、作業員が勝手に移動させることが出来ないので、その日に予定していた修繕ができなくなり、これが多発すると、工程に狂いが生じてしまいます。

 

特に、超高層タワマンの場合には、賃貸で借りている人も相当数おり、これらの方と区分所有者との間では、修繕に対する意識が全く違います。

 

湾岸から見る眺望が気にいって借りた人にとって、大規模修繕工事により、眺望が長期間遮られることは、非常に苦痛を伴うものであり、クレームになる可能性もあります。

 

ここで法的トラブルに巻き込まれないように、数年前から大規模修繕工事の検討が始まった時点で区分所有者や居住者への事前通知をしっかりと行い、大規模修繕工事により数ヶ月にわたり、眺望が遮られる可能性がある旨を周知しておくことなどが余計なトラブルを未然に防ぐ有効な手段となります。

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